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婚約破棄された可憐令嬢は、帝国の公爵騎士様に溺愛される  作者: 蒼井美紗
第4章 大陸騒動編

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99、束の間の休息

 大陸会議が無事に終了した後の歓談の場だからだろうか、昼食会場である中庭は会議前の茶会室よりも美しくて豪華だった。


 たくさんの花々が咲き乱れ、テーブルの上に並べられた食事は綺麗だけれど、食欲をそそられる。


「今はこの時を楽しもう。これからしばらくは忙しくなるからな」

「はい。これからのために気力を充填しましょう」


 フェルナン様とそんな話をしながら中庭に足を踏み入れると、素敵な空間に肩の力が抜けた。他国の皆さんも同じような気持ちらしく、中庭にはゆったりとした空気が満ちる。


 社交が行われる場というよりも、美味しいご飯をいただく時間という感じだ。


「リリアーヌ様、本日はお疲れ様でした」


 茶会室で親交を深めた女性がさっそく声をかけてくれて、私はフェルナン様と別れ、ゆったりとした雑談を楽しんだ。

 もちろんこの会話も大切なものだけれど、情報収集を主な目的として話をするよりも、自然体で話ができる。


「無事に終わって良かったですね」

「ええ、本当に。リリアーヌ様は大活躍でしたわ」

「いえ、そんなことはないんです。私はいっぱいいっぱいで、フェルナン様がたくさん助けてくださって」

「フェルナン様は、とてもかっこいいお方ですよね」


 小声でそう言った女性は、唇に人差し指を当てながら、お茶目にウインクをした。


「先ほどの言葉は、うちの人には内緒にしてくださいませ」

「ふふっ、かしこまりました」


 それからも何人かでまとまって話をしたり、別のグループに挨拶をしたり、ゆっくりと会話と食事を楽しむ。


 やっと少し休息が取れている実感があるけど――明日からは、また忙しい日々だ。

 それぞれの国が行動を開始して、竜の討伐に向けて動き出す。霊峰近くの国の方たちは、明日にはここを発って国に戻るそうだ。


 私たちのような霊峰から離れた国は、早馬を送って騎士団を動かし、この場にいるほとんどの方はどこかで騎士団と合流する。

 ここに来ている方は基本的には国を離れても問題なく、軍事に優れた方なので、騎士団の指揮を取るのだ。


 そしてもちろん、それはフェルナン様も同じこと。


 フェルナン様が騎士団と共に竜討伐に向かわれることを考えると、とても心配になってしまう。怪我をしたら、戦場で動けなくなってしまったら、竜の広範囲攻撃に巻き込まれたら、誰かを助けて大怪我を負うのでは。


 キリがないほどに最悪の想像はできるけれど、私にできることは、信じて待つことだけだ。


 楽しく話をしながらも、ふと気を抜くとそんなことを考えてしまい、意図的に思考に蓋をしながらも昼食を楽しんだ。


 するとちょうど私が一人になったところで、別の場所で話をしていたフェルナン様が来てくださった。


「リリアーヌ、女性たちとの話は終わったか?」

「はい。今ちょうど終わったところです。フェルナン様も、先ほど話していた方はもうよろしいのですか?」

「ああ、話は終わったからな」


 そんな会話をして数秒間見つめ合ったところで、ふっと表情を緩めたフェルナン様が、私の手を取る。


「ではリリアーヌ、ここからは共に楽しもう。あちらにリリアーヌが好きそうなものがあったのだ」

「本当ですか。ぜひ食べてみたいです」


 フェルナン様が私の好きなものを探してくれていたことが嬉しく、つい頬が緩んでしまった。


「では行こう」


 そうしてそれからは、フェルナン様と共に美味しい食事を楽しんだ。メインの食事が終わって中庭の雰囲気はよりゆったりとしたものになり、最後にデザートが提供される。


 一口サイズのケーキやクッキー、フルーツなどがたくさん並べられる中で、中庭の中央に大きめの台が設置された。


 この台で料理人さんが、ケーキの仕上げをしてくれるらしい。大きなケーキが完成していくところをじっくりと見たことは余りなく、とても楽しみだ。


「珍しい余興ですね」

「ああ、ユルティス帝国ではほとんど見たことがないな。ただ、これは楽しそうで良いな」

「はい。帝国でもやってみたいです」


 帰ったらヴィクトワール様に相談しようかしら。そんなことを考えていたら、料理人の方がクリームを魔法のように塗り始めた。


 専用のヘラのようなものを使って、均等にスポンジを飾り付けていく。その手つきは思わず見惚れるほどに美しい。


「素敵ですね……」

「こうしてケーキが作られる過程を見るのは、初めてかもしれないな。素晴らしい手際だ」


 皆が感嘆の声を上げる中でクリームは綺麗に塗り終わったようで、次はフルーツらしい。ナイフを使って素早くフルーツを飾り切りにすると、センスよくケーキを飾り付けていく。


 そろそろケーキが完成する。皆が期待して待つそんなタイミングで、視界に一人の人物が割り込んできた。


 ――アメリーだ。

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