49.目指せ、生産職。かーらーのー……⑨
路地裏から自分の部屋に戻ってきた俺は、クエストボードを開いて『ダンジョン探索』コマンドを確認する。
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探索成功!
探索時間:01:00:00
撃破数:12
獲得数:15
特別報酬
・剣のレシピ×1(モンスターを10体以上撃破)
・銀の錬金壺×1 (鉱石を10個以上獲得)
・ミスリル鉱石×1(ボスモンスターを撃破)
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撃破数というのは倒したモンスターの数。獲得数というのは手に入れたアイテムの数だろう。
特別報酬とやらまで手に入ったことだし、初めてのダンジョン探索は大成功といってもいい結果である。
とはいえ、色々と疑問が残されたのも事実である。
そもそもあのダンジョンはどこにあったのか。そして、あの女剣士さんは何者だったのだろうか。
「ひょっとしたら……あれって異世界転移だったんじゃないか?」
自分はあのダンジョンキーによって異世界に転移してしまい、そこで現地の冒険者と共闘したのではないだろうか?
クエストボードなんて能力を手に入れて自分が知らない世界が存在することは薄々感じていたが……しかし、こうして目の当たりにしてみると妙な感動があった。
「できれば、もうちょっとゆっくり話したかったな……結構な美人さんだったし」
もっと話をすれば、あの場所のこともわかったかもしれない。こんなことなら鉱石の採掘に夢中にならずにダンジョンの探索を進めるべきだった。
「いや、済んだことはいいか。縁があればまた会うこともあるだろう」
俺は強引に自分を納得させて、とりあえず服を着替えることにした。
さんざん土を掘って鉱石を採掘して、おまけに骨のモンスターと戦って……おかげで着ていた服がボロボロになってしまっている。
路地裏から家に帰るまでも、すれ違う人から奇異の目を向けられてしまった。
こんな姿を真麻に見られでもしたら、あの思い込みの激しい妹にどんな誤解をされるかわかったものではない。
部屋着に着替えてボロボロになった服をビニール袋に詰めて、俺はベッドに座ってダンジョンで手に入れたアイテムを確認する。
ダンジョンで採掘して手に入れたのはほとんどが素材アイテムの鉱石だ。しかし、特別報酬でおかしなアイテムも入手していた。
まずは『剣のレシピ』。アイテムストレージから取り出してみると、手の平サイズのチケットが出現した。
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剣のレシピ
素材アイテム。
鉱石と混ぜ合わせることによって武器アイテム『剣』を生み出すことができる。
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「おっ、これで武器を獲得できるぞ!」
鉱石だったら山のように持っている。
問題はどの鉱石と錬金するかだが、気になるのはやはりボス討伐の報酬である『ミスリル鉱石』だろう。
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ミスリル鉱石
素材アイテム。鉱石。
ミスリル製の武器、防具の材料になる鉱石。
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ミスリルといえばファンタジーではお馴染み。銀の輝きと鋼を超える硬度を持つ魔法の金属だ。
クエストボードを操作して取り出してみると、銀色に輝く石が出現する。見た目はずっしりと硬そうなのだが、アルミのように軽い金属である。
幸いなことに、特別報酬の中には『銀の錬金壺』もある。
さっそくこれで剣を作ってみるとしよう。
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銀の錬金壺
素材を入れることでアイテムを作成することができる壺。下級~中級アイテムを作成可能。耐久値10/10
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耐久値は『銅の錬金壺』と同じだが、こちらは中級アイテムも作成できる。
アイテムの下級、中級の境界はよくわからないが、とりあえずやってみるとしよう。
俺は錬金壺を取り出して、『剣のレシピ』と『ミスリル鉱石』を入れてみる。
すると、壺の口から黄色い煙が出て来て、数秒後には竹刀と同じくらいの長さの剣が完成した。
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ミスリルソード(―)
武器アイテム。ランクC。
ミスリル鉱石によってつくられた剣。やや出来が悪く、切れ味も鈍い。
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「む……」
ミスリルの剣ができたにはできたが、どうも劣化品のようである。色は銀なのだが、どこか輝きがくすんでいるような気がする。
何か素材が足りなかったのか……あるいは、『銀の錬金壺』で作れるのは中級アイテムまでという制限が原因になっているのかもしれない。
「おっ……結構軽い」
手に持って軽く振ってみると、やはり見た目よりもずっと軽い。【身体強化】スキルがなかったとしても片手で振りまわせるくらいの重量だ。
ストレージに入れて持ち運ぶこともできるようだし、これで【剣術】スキルをより生かすことができるだろう。
せっかく武器を手に入れたことだ。またダンジョンに行ってみたいものである。
「どうにかしてダンジョンの鍵を手に入れないとな。そうすれば、ひょっとしたら彼女にも会えるかもしれない」
短い間だったが共に戦った女剣士さんの顔を思い浮かべて、しみじみと頷く。
何故だかわからないが、彼女とはそう遠くない未来に再会できるような気がする。
俺は不思議な確信を胸に、その時に備えてもっとアイテムを作っておこうと錬金壺に素材を放り込むのであった。
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