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47.目指せ、生産職。かーらーのー……⑦


 前回までのあらすじ。

 悪いことをしたら地獄に堕ちた。


 いや、まだ死んではいないのだが、落ちた穴の先は地獄と大差のない場所だった。


「ぐわっ!?」


 床に衝突して、バチリと鋭い衝撃が背中を襲う。咄嗟に受け身をとることができたのが奇跡のようである。

 宝箱のトラップに引っかかってしまった俺だったが、落ちた先は先ほどの小部屋よりもずっと大きな部屋だった。

 体育館のように広々としていてバスケットボールができそうなほど天井も高い。

 そして、足元には大量の人骨がカーペットのように広がっている。


「うおわあああっ! なんじゃこりゃ!?」


 さすがの事態に思わず悲鳴を上げる俺。

 ひょっとしたら自分は墜落死していて、地獄に堕ちてしまったのではないかと錯覚してしまうようなおぞましい光景である。

 尻や背中に固い骨が当たって地味に痛い。いったい、この部屋で何十人、何百人の人間が息絶えて白骨になったというのだろうか。


「なっ……君は人間なのか!?」


 人骨の上に座り込んでテンパっている俺へと、軽やかな女性の声がかかった。

 声の方向へと顔を向けると、金色の髪を(なび)かせた女性が立っている。女性は両手で剣を持ち、おまけに革製と思われる鎧に身を包んでいた。


「えーと……どういう状況?」


 そして、そんな女性の周囲には立って歩く骸骨が大量にいたのだ。ご丁寧に剣と盾で武装までしている。

 おまけに無数の骸骨の向こうには、天井に届かんばかりのサイズの巨大骸骨までいるのだからシャレにならない。


「ええっと……ひょっとしてボス戦の最中でしたか? これはどうも、お邪魔してしまったみたいで……」


「早く逃げるんだ! 君まで殺されるぞ!」


 俺の謝罪を無視して、女性が鋭く叫ぶ。

 しかし、そんな声も虚しく巨大骸骨が俺に顔を向けてくる。暗い眼窩の奥に眼球のごとく存在している赤い光が不気味に揺れる。


「ガタガタガタガタガタガタガタガタッ!」


「わあっ!」


「くっ……いいから早く逃げるんだ!」


 巨大骸骨がけたたましい音を立てて上下の歯を打ち鳴らす。途端、俺の足元に広がっていた骸骨が起き上がって襲ってきた。

 どうやら足元の骸骨は先ほど倒したのと同じくモンスターだったようである。スケルトンが俺の身体にしがみついて、床に引きずり倒そうとしてくる。


「ちょっ……何だコイツらは!」


「ここはジェネラル・スケルトンの巣だ! 捕まったら君も同じ姿にされてしまうぞ!」


 悲鳴を上げる俺に女性が叫んだ。

 謎の女剣士さんは俺を助けようとしているのか、周囲のスケルトンを剣で斬り払ってこちらに駆け寄ろうとしている。

 しかし、多勢に無勢。スケルトンの数が多すぎて、一向にこちらに近づくことはできない。

 そうこうしているうちに、俺は5体のスケルトンに身体をつかまれてしまった。


「このっ……舐めるな!」


 俺は思い切り両手を振りまわしてスケルトンを跳ね飛ばす。

 デイリークエストを重ねて【身体強化】をレベル10まで上げた結果、俺の身体能力は常人の3倍を超えている。こんな筋も皮もないスケルトンを相手に、力比べで負けてたまるか。

 武器として持ってきていた鉈は穴に落ちた際にどこかに落としてしまった。

 俺は床に落ちていた人骨の一部。人間の太腿部分の骨を拾ってスケルトンを殴りつけた。


「うおりゃああああああああっ!」


 バカバカと殴りつけて、片っ端からスケルトンの頭部を破壊していく。

 大腿骨は人体で最大の骨だ。成人男性のものであれば40センチ以上はあり、倫理や道徳を無視すれば鈍器としてうってつけである。

 壊れてしまったら新しいものを床から拾い、拾っては殴り。拾っては殴りを繰り返す。

 人間として大切なものを色々と無視した戦いぶりであったが、生き残るためになりふり構ってはいられなかった。


「うおおおおおおおっ! 成仏しろおおオオオオオッ!」


「す、すごい……」


「こっちは大丈夫だから気にしなくていい! そっちはそっちの戦いに専念してくれ!」


「あ、ああ! わかった!」


 スケルトンを撲殺していく俺の姿に安心したのか、女剣士さんは俺を助けようとするのをやめて自分の周りのスケルトンに専念する。

 鮮やかな手つきで剣を振ってスケルトンを斬り倒す女剣士さん。骨を振りまわして頭をかち割っている俺。

 比べると落ち込んでしまうようなギャップであった。


「とはいえ……これじゃあジリ貧だな」


 いくらスケルトンを倒しても、次々と足元の骨が起き上がって数を増やしている。

 これではキリがない。戦いをはじめたばかりの俺はまだ体力に余裕があったが、女剣士さんのほうは肩で息をしている。


「こういう時のお約束はボスを倒すことだ……!」


 俺は無数のスケルトンに囲まれた巨大骸骨を睨みつける。

 おそらく、このスケルトン達は奴が生み出したものだろう。ボスが戦闘中に雑魚を呼び出すのはお約束である。

 俺は流れを変えるべく、アイテムストレージから聖水を取り出して周囲に振りまいた。


いつも応援ありがとうございます。

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コミカライズ版 連載開始いたしました!
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レイドール聖剣戦記 コミカライズ連載中!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ、強制帰還の1時間後までほとんど時間残ってなかったと思うんだけど、階層落ちしたら強制帰還自体がなくなる? [一言] それだと帰還方法なくなるから、戦闘時間数分でボスまで倒してボス倒…
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