30.スキルのある学園生活①
本作にもレビューをいただきました。
素敵なお言葉に心よりお礼申し上げます。
ゴールデンウィークが終わり、新しい1日が始まった。
今日は1週間ぶりに高校に通う日だ。
「はあ……ようやく終わった……」
俺は憔悴しきった声でつぶやいて、カーテンを開け放つ。
窓から差し込んでくる爽やかな朝日。
しかし――それを浴びる俺の顔は疲れきっていて、目の下にはクマができている。
昨晩、俺はまったく手つかずのゴールデンウィークの宿題を思い出した。
俺が通う高校は進学校というわけではないのだが、それでも県内でも中の上程度には偏差値の高い高校である。
長期休暇の際には必ずといっていいほど膨大な課題が出されていた。
ゴールデンウィークは1週間。夏休みや冬休みに比べれば課題の量は少ないものの、それでも一晩で終わらせるには無理のある量だった。
「あー……精神強化を上げてなかったら、集中力がもたなかったかもしれないな……なんで休み明けに疲れ切っているんだよ。俺は」
すでに時計は7時を回っている。
宿題はなんとか片づけることができたものの、もはや寝る時間はない。
7時半には部屋を出て朝食を摂らないと学校に遅刻してしまう。
『ワールドクエストを達成。スキル【睡眠耐性Lv1】を修得!』
「……やかましいわ」
頭の中に鳴り響く声に力のないツッコミを返す。
【睡眠耐性Lv1】――たしか修得するための条件は『24時間、眠らずに過ごせ』だっただろうか?
比較的、達成しやすい条件だったため機会があったら取っておこうと考えていたのだが、意図せず修得してしまったようである。
これで耐性系統のスキルは【毒耐性】と【睡眠耐性】をそれぞれ修得したことになる。
「あー……でもちょっとだけ楽になってきたかも。これが【睡眠耐性】の効果かな?」
先ほどまでは瞼が重くて油断すればそのまま倒れ込んでしまいそうだったが、今はお腹いっぱい食べた直後くらいの眠気にまで改善されている。
これなら、洗面所で顔を洗えば昼休みまで耐えられそうである。
「さて、それじゃあ久しぶりの学校だ。スキルやクエストをばれないように気をつけないとな」
人前で魔法を使ったりしなければまずバレることはないと思うが……正体を隠して生活している異能バトルマンガの主人公は、たいてい間抜けすぎるケアレスミスによって秘密が露見してしまうものである。
俺もそうならないように気をつけなければ。
「お兄ー、起きてるー?」
そんなことを考えていたら、ノックもなしに扉が開いて真麻が顔を出した。
すでに中学の制服であるセーラー服を着た真麻は、俺の顔を見るなりまん丸に目を見開いた。
「あ、珍しい。もう起きてるんだ。ずいぶんと早いじゃない」
「ん、まあな」
正確には早いのではなく遅いのだが、わざわざそれを口に出して呆れさせることもない。
俺は立ち上がって、洋服タンスから制服を取り出した。
「ふーん……まあいいや。朝ごはんはテーブルに置いてあるから勝手に食べてねー」
「了解。そっちは今日も朝練か? がんばれよー」
「ん、お兄も遅刻しないようにねー」
真麻はパタパタと手を振って扉の向こうに消えていく。
ゴールデンウィーク中は道場に通い、学校が始まれば朝から部活。
本当に頭が下がるほど熱心だ。
「さて、と……俺もそろそろ出ようかな」
俺はブレザーを着込んでネクタイを締め、カバンを片手に部屋から出た。
ダイニングのテーブルにはトーストと目玉焼き。カリカリベーコン。
月城家のお馴染みの朝メニューが置かれている。
俺は眠気覚ましもかねてじっくりとよく噛んで朝食を食べ、いつもより少し遅い時間に玄関から出た。
「ちょっとゆっくりしすぎたかな。普通だったら遅刻の時間だ」
しかし、今日の俺は以前とは違う。
俺にはスキルがあるのだ。
「フッ!」
俺はグッと足に力を入れてアスファルトを蹴りだした。
【身体強化】と【敏捷強化】によって一気に加速して、通学路を駆け抜けた。
いつも応援ありがとうございます。
よろしければ下の☆☆☆☆☆から評価もお願いします。




