美少女+ゴツい武器=何故かテンション上がる ⑨
あけましておめでとうございます。
皆様、今年も一年間よろしくお願いします。
結論から言うと、セラちゃんは人間だった。
人間だったのだが……その身体にはあちこちいじくった痕跡がある。いわゆる改造人間という奴のようである。
魔法を使ってこの娘の記憶や、過去を読み取ったから間違いない。
セラちゃんは声に出して語ることもはばかられるような人体実験を行われている。
「アンドロイドというよりもサイボーグかな? 宗教家が暴走するとタチが悪くていけないよな」
「先輩、どういうことですか?」
「この子はどこぞの宗教団体が生み出した人間兵器ということだよ」
聖の質問に答えつつ、俺はセラちゃんの身体をまさぐって調べる。うん、やわっこくて非常に良い。
これは精神魔法で記憶を探ってわかったことなのだが……彼女は『異端審問会』という謎の宗教結社が生み出した人造兵器のようだ。
「素質のある人間の娘に『聖人の骨』というアイテムを埋め込んで強制的に神格を目覚めさせ、さらに全身に兵器を仕込んでパワーアップ。いったい、どれだけ人間やめたらこんな無体なことができるのか問い詰めたい気分だよ」
『異端審問会』という組織の名前は聞いたことがあった。
吸血鬼や悪魔を狩りだしている西洋の『結社』のようなものらしいが……噂以上に手段を選ばない連中らしい。
二十に満たない女の子の身体を兵器に仕立て上げるとか、イカレているとしか言いようがなかった。
「うん……潰すか」
俺は即座に決断を下した。
聖に暗殺者を送り込んだことは……まあ、許せないこともない。このアホの後輩はたまに殺意が芽生えるくらいムカつく後輩だからな。
だが……女の子をいじりまくって兵器にするのはアウトだ。
こんなことを仕出かした連中には、キツイお灸をすえてやらねばなるまい。
「いくか、ヨーロッパ。世の中にはやっていいことと悪い事があるってのを教えてやるよ!」
俺はすぐさま決断をした。
『異端審問会』という組織は『結社』と同じく魔物を狩って人々を守ることを理念としているようだが……非常に宗教色が強く、協議に反する者の存在を許さない。
異端を狩りだすためならば、罪のない美少女の身体を斬り刻み、改造して兵器に仕上げることすら厭わない。美少女を食い物にする世界の敵だ。
そんな連中を放置するのは俺の正義感が許さない。
正義感と書いて『下心』と読む信念が許さないのだ!!!
「なるほど……つまり、先輩はこれからヨーロッパに『異端審問会』を潰しに行くと。スターダストなクルセイダースのごとく、立ちふさがる刺客と戦いながら、ひたすらに西を目指して進んでいく……エジプト編の始まりということですね?」
「エジプトにはいかないよ? 遠回りじゃないか」
人が真面目に話しているのにジョ〇ョネタをぶっこまないで欲しい。
謎の組織から刺客を送り込まれているのは、俺じゃなくてお前だろうが。
「それに……そんな大長編にするつもりはないよ。学校だってあるし。勝手に外泊したら真麻に怒られるし」
「へ……? それじゃあ、どうするつもりですか?」
聖が不思議そうに訊ねてくる。
俺は空を指差し……なんでもないことのように言ってやる。
「もちろん、日帰りだ。ちょっと悪いことしたやつをぶっ飛ばしてくるから、その子のことを頼んだぞ」
俺は聖に一方的に指示をする。
セラちゃんは気を失っており、当分は目を覚ますことはないだろう。
目を覚ましたらまた聖を殺そうとするかもしれないが、先ほど、セクハラ……じゃなくて身体を調べた際に危険そうな武装は外している。
今ならば、暴れ出したとしても聖で十分に対処できるだろう。
「何か乗り物になるものは……これでいいか」
俺は公園にある遊具の一つに目を止めた。
それはかつてブランコとして使用されていた遊具の残骸。経年劣化によって破損しており、『使用禁止 つかわないでね』と書かれた札が掛けられている。
「えい」
俺は折れた金属の柱を引き抜いて、西の空に向かって投げつける。
そして……猛スピードで走ってジャンプし、飛んでいく柱に飛び乗った。
「じゃあ、行ってくる」
「ああ! 先輩、ズルいです! 自分だけそんな面白そうなことを……!」
遠ざかる聖の声を聞きながら……俺は某・少年マンガに登場する殺し屋のようなスタイルでヨーロッパに向けて旅立ったのである。




