桃〇郎電鉄には温泉を覗けるスポットがある ①
本作のコミカライズ版「クエスト無双」の3話目を更新しています。
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俺が藤林春歌、桜井早苗と一緒にスキー旅行に出かけたのは、とある冬の日のことである。
話を持ちかけてきたのは早苗だった。
昼休み。いつものように春歌と早苗の2人と昼食を囲んでいると、食事を食べ終わったタイミングで早苗が話を切りだしてきた。
「ねえ、真砂君ってスキーは好きかな?」
「スキー? まあ、それなりにだけど?」
答えながら、水筒の麦茶に口をつける。
高校の中庭。芝生の上に広げられたレジャーシートで俺達3人は昼食を取っていた。
すでに食事は終わっており、目の前には空になった重箱が置かれている。
ちなみに……これらの重箱を空けたのはほぼ春歌だった。
おとなしそうな外見の委員長が隠れた大食いであることは、俺達の間では周知の秘密である。
「スキーだったら何度かやったことがあるよ。日本じゃなくてアラスカでだけど」
「え? 逆にどうしてそっちでやってるのか気になるんだけど?」
「いや、ウチの両親がそっちで働いているから。何の仕事をしているのかはよく知らないけど」
アラスカの冬は寒い。
昼間でもマイナス20度は珍しくないし、日が落ちるのも早い。
その代わり、夜にはオーロラが楽しめたりもするのだが……。
「思い出すなあ……あの遭難して逃げ込んだ山小屋で見たオーロラ。焚き火をしても寒くて、真麻と裸で温めあったっけ……」
「えっと……真麻って妹さんだよね? 裸って何やってるの?」
「おまけに山小屋にグリズリーまで乗り込んできて、あの時はもうダメかと思ったよ……」
「本当に何やってるの!? え、そんな修羅場を体験してきたの!?」
早苗が驚いて声を裏返らせた。
おっと……よけいなトラウマを掘り起こして、話の腰を折ってしまったようだ。
「それで……スキーがどうしたんだ?」
「えっと……私の親戚が長野に住んでいて、毎年、春歌と一緒に泊まりでスキー旅行してるんだ。良かったら、今年は真砂君もどうかなと思って」
「早苗、すっごくスキーが上手いんですよ? あっちの旅館には温泉だってありますし」
横から補足してきたのは我らがエベレスト委員長――藤林春歌である。
彼女の前には空になった重箱が置かれており、先ほどまでフードファイトのような戦いが繰り広げられていた。
毎度のことではあるが、いったいこの身体のどこに入っているのか謎である。
「やはり胸なのか……あそこに第2、第3の胃袋が……?」
「月城君?」
「いや、何でもない。ただの独り言だ」
独り言というか妄言である。
俺は巨大な胸元に吸い寄せられていた視線を引きはがす。
「スキー旅行か……あんまり良い思い出がないんだけどね」
遭難したり、グリズリーに襲われたり。
未確認飛行物体にさらわれそうになったり……いや、これはアラスカもスキーも関係ないか?
あれ? ひょっとしたら、俺ってばクエストボードの能力を授かる前からトンデモ人生を送ってるのか?
「いや……ちゃんとしたスキー場だから滅多に遭難はないと思うけど。熊も出ないと思う」
「そもそも、月城君だったら熊が出ても倒せるんじゃないですか?」
「あ、そっか」
早苗と春歌の言葉に「ポンッ」と手を叩く。
そういえば……今の俺だったら、グリズリーが出たって問題なかった。
相撲したって倒せるし、背中にまたがっておうまの稽古だって出来るだろう。
それに……美少女2人とのスキー旅行。おまけに温泉付きを逃す手などないではないか。
「それじゃあ……ご一緒させてもらおうかな? もちろん、2人が良ければだけど」
「大丈夫に決まってるじゃない! うわあ、真砂くんとの旅行楽しみー!」
早苗が両手をあげて喝采した。
春歌もニコニコと穏やかな笑みを浮かべて、親友の喜びようを見守っている。
こうして、俺と春歌、早苗の3人でのスキー旅行が決定した。
初めての女子との旅行(聖との夏合宿は含まれず)に俺は大いにはしゃぎ、期待に胸を膨らませた。
しかし、俺はすぐに悟ることになる。
俺の人生において、平穏かつ平和な旅行などありえないことに。
美少女2人との楽しい楽しいスキー旅行だったはずが、とある事件の勃発により思わぬ方向へ転がっていくのであった。
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