激闘! 退魔師試験!㉖
晴嵐が両手で印を組んで式神を召喚する。
背中から勢い良く白龍が飛び出し、身動きが取れなくなった九尾の狐めがけて飛んでいく。
「やれ、龍雅!」
『リュウウウウウウウウウウウウウッ!』
白龍が九尾の狐に攻撃を仕掛けた。
爪で敵の胴体を斬り裂き、さらに長い尾をムチのように叩きつける。
『ギャンッ!』
「そのまま畳みかけなさい、蜘蛛御前! 鐵丸!」
『一緒ニ舞ヲ踊リンスー』
『ウウウウウウウウウウウウウッ!』
紫蘭が使役する2体の人形も九尾の狐を攻撃する。
白龍と人形が九尾の狐を囲んで、容赦ない攻撃を浴びせかけた。
「私もいくよっ! 必殺、霊弾!」
続いて、カスミも霊力の弾丸を放つ。
某・有名マンガの主人公の必殺技にしか見えないが……まあ、魔法やら呪術やらはイメージが大切らしいので好きにすればいい。
「あ……」
しかし、そんなカスミの必殺技は九尾の狐の身体に当たるや弾かれた。完全なノーダメージである。
「つ、月城さーん! 効かないんですけどー!?」
「いや、知らんわ」
どうして、俺に泣きつくのだ。
俺は見学だけで手出しをしないという約束なのだが。
「このままだと、最初から最後まで役立たずで終わりなっちゃう! エッチな醜態をさらしただけのお色気要員じゃない!」
「わかってんじゃん。まさにそれが君の役割だよ」
ある意味、この物語はカスミの存在で成り立っている気がする。いや、自分で言っていてわけわからんけど。
「紫蘭ちゃんのお役に立てない―!? 本当に足手纏いで終わるー!?」
「わかった、わかった。こんな時のために君が着ているセーラー服には仕掛けがしてあるから、それを使うと良い」
「仕掛け?」
「ああ。俺のとっておきだ」
キョトンとした顔のカスミに肯定を返す。
カスミのセーラー服に仕掛けたのは、とんでもなく手間暇とアイデアをかけた特殊能力。その制作には長い時間と大量の素材をかけている。
「いつか紗耶香さんに着てもらいたくて作ってたんだけど……まさか、別の女性にそれを渡すことになるとは思わなかったぜい」
「そんなことよりも、どうやって使えば良いのか教えてよっ!」
「ん、ああ。そうだな……両手を頭の上に添えて、姿勢は前のめりで胸を強調。片膝を曲げて『モードチェンジ、ラビットモード!』と叫ぶのだ」
「はいいっ!?」
カスミが声を裏返らせた。
「何言ってんの!? 馬鹿なの、馬鹿だよね!?」
「いや、冗談じゃないからね。早くポーズ取って叫ぶ」
「うー……しょうがない」
カスミが言われたとおりに可愛らしくポーズを取り、発動の呪文を叫んだ。
「『モードチェンジ・ラビットモード』!」
「うっわ……本当にやったよ……恥っず」
「騙したの!? 騙された!?」
「いや、騙してないけどね」
カスミの身体が虹色の光に包まれた。さながら、魔法少女が変身するように。
「わっ、わわわわっ!?」
光に包まれたカスミが1度全裸になり、別の服装に変わっていく。
虹色の光の中から現れたのはフワフワな毛玉がついた白いバニーガール。
これから餅つきでもしようとしているのか。身長以上のサイズの大きなハンマーを持っている。
「デザインは君に合わせてセーラー服にしたけど……その魔装の名前は『十二支巡り』。十二支にちなんだコスチュームに変身することにより、それぞれの動物の特殊能力を使用することができる」
フォーメーション『卯』に付与されている能力は下肢筋力の強化による跳躍力向上。そして、手に持った巨大な木槌だった。
「はい、行っておいで」
「わかった!」
カスミも変身したコスチュームの能力に気がついたのだろう。迷うことなく跳躍し、数十メートルの距離を踏破する。
「『餅つきアタック』!」
『ギャインッ!?』
そして、落下の勢いのままに木槌を振り下ろした。
胴体を上から殴られた九尾の狐は四肢を折って地面に叩きつけられ……そのまま、巨大なクレーターを作った。
「なっ……!?」
「カスミさん、すごい!」
晴嵐と紫蘭も驚きの顔になる。
『卯』専用装備の木槌は防御貫通の衝撃効果が付与された呪具だった。
どれほど強力な鎧をまとっていようと、霊力や魔力で肉体を強化していようと、その一撃のダメージからは逃れられない。
「とはいえ……ここまでの威力はないはずなんだけどね。武器との相性が良かったのかな?」
製作者であるはずの俺も首を傾げる。
確かに傑作の一品ではあったが……それにしたって、これほどの効果を発揮するとは思わなかった。
これは後に知ることになるのだが……遠藤カスミという少女はとある特殊能力を有していた。
その能力の名称は『アンラッキースケベ』。
露出の大きな格好をしたり、エロい状態になればなるほど霊力が向上し、さらには『幸運』を招きやすくなる特異体質。
その代償として怪異からセクハラされやすくなるというデメリットもあるのだが……使いようによっては、『三強』の退魔師にも匹敵しうる尖った才能である。
「餅つきアタックううううううううううううううッ」
『ギャイイイイイイイイイイイインッ!?』
九尾の狐の絶叫がこだまする。
紫蘭と晴嵐、カスミの3人が拘束した九尾の狐に怒涛の攻めを浴びせかけ、一気に勝負をつけようとした。
俺が手助けをするまでもなく、彼らは危なげなく戦っている。決着の時は近そうだ。
「これはイケそうだな。押し切れる!」
少し離れた場所から戦いの様子を観察しながら、俺は右手を握りしめた。
最初こそ抵抗していた九尾の狐であったが、3人の連続攻撃にかなり体力を削られている。
頼みの綱であるフォックス砲(さっき命名)も溜めがなければ撃てないらしく、3人をやり過ごしながら放つのは不可能だろう。
「一気に決めろ! 全力だ、龍雅!」
『リュウッ!』
晴嵐もここが勝負どころだと判断したらしい。
式神の白龍に命じて、必殺の一撃を解き放とうとしている。
膨大な霊力が白龍に集まっていき、白銀色の鱗が金色に染めあげられていく。
「雛森さん、遠藤さん、離れてくれ!」
「わかりました!」
「りょーかいっ!」
2人が九尾の狐から距離を取る。
次の瞬間、白竜の口からレーザー砲が放出された。
『リュウウウオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
莫大な霊力がレーザーとなって射出され、九尾の狐に浴びせられた。
それはまさしく破壊光線。ドラゴン系モンスターの御家芸ともいえる、最強の必殺技である。
『クウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!?』
視界が金色に染め上げられ、焼け野原となった戦場に九尾の狐の絶叫が轟いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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