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激闘! 退魔師試験!㉕


「さて……まずは九尾の狐を探さないとね。アイツ、どこにいるのかな?」


 即席で作っていた家を片付け、俺はどうしたものかとつぶやいた。

 この島は広い。島全体を探索するだけでも丸一日かかるだろう。


「ジャングルとなればなおさら難しいね。たった4人じゃ、人海戦術もとれない」


「九尾の狐はこの島で発生した妖怪だ。島に溶け込んでいて、気配を探すのも難しそうだね」


 晴嵐も難しい表情で唸った。

 日本の怪異――妖怪というのは、そもそも気配が希薄なものらしい。

 彼らの多くは山や川などの自然から生まれているため、精霊のように自然環境の中に溶け込んでしまう。

 相手が異界から現れた悪魔や怪物ならば、『不自然』から気配がすぐにわかるのだが。


「せめて、奴が力を使ってくれたらわかるんだけどな。昨日みたいに大爆発でも起これば……」


 などとつぶやいた次の瞬間、『ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!』と間延びした爆音が轟いた。

 俺と晴嵐、紫蘭とカスミがそれぞれ顔を見合わせる。


「どうやら……狐が巣穴から出てきたようだ」


「どちらかというと、虎や竜に近いと思いますが……」


 紫蘭が緊張した様子で音がした方向を睨む。

 爆発が起こったのはここから1キロほど離れた場所。空に上がった爆炎によって位置がはっきりとわかる。


「い、行こっか! もう足手まといにならないんだからねっ!」


 カスミの震える声を合図に、俺達は九尾の狐がいると思われる場所へと走り出す。

 晴嵐が白龍にまたがって、俺が2人の少女を抱えて移動する。

 目的の場所に到着すると……そこは一面が焼け野原となっており、地獄のようなありさまとなっていた。

 もしもここが都会の街中であったのなら、何百、何千という被害が出ていたかもしれない。


『クオオオオオオオオオオオオオオンッ!』


 焼け野原の真ん中では、体長2メートルほどの狐が雄たけびを上げている。まるで月に向かって吠える狼である。

 俺達は辛うじて爆炎から免れていた木の陰に隠れながら、九尾の狐の様子を窺った。


「いたよ……どうやら、誰かと戦っていたみたいだな」


 命知らずにも九尾の狐に挑戦した者がいたのか。

 それとも……運悪くこの怪物に見つかってしまい、爆炎で吹き飛ばされてしまったのだろうか?

 どちらにせよ、九尾の狐と戦っていた人間はもうこの島にいないだろう。

 跡形もなく消し飛ばされ、島の外に飛ばされているはず。


「さてさて、予定よりも早く標的を見つけたのはいいけど……これから、どうするつもりかな?」


「もちろん、戦うとも。ただし、まっすぐ突っ込むなんて愚策だね。できれば先制攻撃で怯ませて、そのまま一気に削り切りたい」


 同じく九尾の狐の様子を探りながら、晴嵐が口を開く。


「特にあの爆炎の攻撃を撃たせてはいけない。上手い具合に拘束して、そのまま一気に攻撃を叩きこもう」


「でしたら、まずは私にやらせてはいただけませんか? 考えがありますから」


 紫蘭も横から意見を述べてくる。

 いつまでも話し合っている時間はない。晴嵐もすぐに頷いた。


「任せるよ。一番槍は譲ってあげよう」


「気をつけてね、紫蘭ちゃん」


「わかりました。それでは……()きます!」


 紫蘭が手鏡を取り出し、中に収納していた人形を召喚する。

 俺が彼女に与えた人形――『鐵丸』を前に出して、木の陰から飛び出した。


「突撃です――鐵丸!」


『ウウウウウウウウウウウウウウウウッ!』


 唸り声のような声を上げながら、紫蘭に操られた鐵丸が九尾の狐に向けて突進する。

 正面からの突撃。もちろん、すぐに九尾の狐に気がつかれてしまう。


『クオオオオオオオオオオオオオオンッ!』


 九尾の狐が鐵丸に向けて顎を開く。

 鋭い牙が生えそろった口に大量の霊力が集中していく。また爆炎を放とうとしている。


「あれほどの攻撃を連発できるのか!」


「撃つために溜めが必要なようだけど……間に合わない!?」


 俺と晴嵐が叫ぶ。カスミは半分、腰を抜かしている。

 九尾の狐がこちらに向けて攻撃を撃とうとしており、鐵丸の攻撃は間に合わない。

 万事休す。全滅の危機である。


「『蜘蛛御前』!」


 しかし、もちろん紫蘭も無策ではなかった。

 注意を消し、九尾の狐の背後に回っていた別の人形――『蜘蛛御前』が攻撃を仕掛ける。


『オモテナシヲ、イタシンスー』


『クオッ!?』


 蜘蛛御前の身体から糸が射出され、九尾の狐の全身に巻きついた。

 爆炎を放とうとしていた口にも巻きつき、上下の顎を縛って開かなくする。


「蜘蛛御前の糸はとある妖刀を溶かして作った特別製。いかに神格を有した怪異といえど、容易に千切ることはできません! やりなさい、鐵丸!」


『ウゴオッ!』


『ギャンッ!?』


 鐵丸が大太刀を九尾の狐に叩きつけた。

 一撃では終わらない。そのまま一気に連続攻撃を畳みかける。


『ウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!』


 強力な斬撃が何度も何度も、九尾の狐に浴びせられる。

 戦闘用呪い人形――『鐵丸』は特殊能力などは一切ない。蜘蛛御前のように手が6本あるわけではなく、糸もはけない。

 鐵丸の性能はシンプル。とにかく強い、ただそれだけ。

 とにかく丈夫で、とにかく力持ち。純粋な近接パワー型のバトルドールだった。


「こういう『攻め』の状況になると強いよな。我ながら良い出来の作品だ」


「よし、僕達もいこう!」


「はい! 紫蘭ちゃんを援護するよ!」


 九尾の狐が拘束されたのを見て、晴嵐とカスミも木陰から飛び出した。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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