激闘! 退魔師試験!㉓
「~~~~♪」
『…………』
白龍が口から吐いた明かりの下、賀茂晴嵐が自分の身体を洗っている。
ジャングルでのサバイバル生活で汗をかき、身体も汚れていたのだろう。シャワーを浴びながら、ご機嫌に鼻歌を歌っている。
変身して湯船に潜んだ俺が見守る先……ショートカットの頭を洗い流した湯が首を通り、細い肢体へと流れていく。
男性にしては細身で小柄な体型の晴嵐であったが……どうやら、俺の評価は間違っていたらしい。
晴嵐の正体は美少年ではない。まぎれもない美少女だったのだから。
『……ヤバい。これはヤバい。ものすごくヤバい』
俺はガクガクブルブルと震え、大量の汗をかいている。
うん、嘘だ。だって俺は風呂の湯に変身しているのだから、そんな機能はない。
だが……ヤバいというのは噓ではない。俺はまさに大ピンチな状況となっていた。
『覗きがバレたら怒られる。超怒られる……!』
正確にいえば覗きではない。
俺が入浴しているところに、勝手に晴嵐が入ってきたのだ。
だが……古今東西、こういった状況での男の言い訳に説得力はない。
もしも俺が隠れ潜んでいることに晴嵐が気がつけば、間違いなく俺の方が犯罪者になってしまう。
『ヤバい……ヤヴァイ……あれえ? 俺の目的って何だったっけ?』
そもそも、今回のメインエピソードは退魔師試験を受けて、怪異と戦ったりするバトルパートだった気がするのだが……何故だか、いつの間にか青年誌のエロマンガみたいな展開ばっかり起きている。
予想外に物語が長くなってしまい、さぞや作者も混乱しているに違いない。だって、本来は10話くらいで終わる予定だったんだもん。
これだからノリとテンションで執筆するタイプの作家は困る。急に何ヵ月も更新停止したりするんだもんな! マジで!
『いや、メインエピソードってなんだ!? 作者って誰だ!? 落ち着け、俺! いくらなんでも混乱しすぎだろうが!』
どうやら、テンパってわけのわからない思考になっているらしい。異次元から謎の電波を受信していたようだ。
この状況を切り抜けるためにも……1度、冷静にならなくてはいけない。
『まずは状況確認。俺は『お湯』。賀茂さんは『裸』……よし、詰みだ! 友よ、来世で会おう!』
……じゃなくて、どうにかして浴室から脱出しなくてはいけない。
真っ先に思いついたのは魔法で転移すること。あるいは、時間を止めて脱出してもいいだろう。
しかし、問題になるのは今が変身状態であるということ。
『いくら俺が神格を獲得した最強無敵の魔法使いであるとはいえ……変身を解かなくては、別の魔法が使えないぞ』
そうなのだ。
転移するにせよ、時を止めるにせよ……魔法を使うためには変身を解く必要があった。
そして、変身を解くことは晴嵐の目に姿をさらしてしまうことを意味する。
アイテムボックスも同じく、変身状態を解かないと使えない。
『これが意味することはすなわち……詰んだあああああああああああああああっ!?』
『リュイッ』
「ん? どうしかしたのか、龍雅?」
『…………!』
しまった。
興奮のあまり水面にさざ波が生じてしまい、晴嵐が使役している白龍に見られてしまった。
白龍の鳴き声に、シャワーを浴びていた晴嵐がこちらに目を向けてくる。
「……何もないぞ、龍雅」
『リュイー?』
晴嵐と白龍がそろって首を傾げている。
よかった。浴室内が薄暗いこともあって、バレなかったようだ。
『セーフ……危なかった。落ち着け、落ち着け』
変身によって姿は見えず、気配も消えている。それでも……感情を昂らせてしまったら湯に異常が生じてしまう。
俺は努めて冷静さを保ちながら、どうにかこの場を切り抜ける手段を考える。
しかし……結局、方法は見つからず、その時はやってきた。
「さて……湯船に浸かろうか。おいで、龍雅」
『リュイッ』
シャワーで髪を洗い終えた晴嵐が白龍を連れて、湯船の縁までやってきた。
温度を確かめようとしているのだろうか。右手をお湯に入れてくる。
『うひっ!』
その瞬間、何とも言えない感触が俺を襲う。
自分の身体の中に手を入れられ、かき混ぜられている。
不思議と不快感はない。異物が入り込んだような感覚はあるのだが……どちらかというと、気持ちが良いような?
「うん、いいお湯だ」
『い、いかんっ! このまま身体まで入ってきたら変な性癖に目覚めてしまう!』
焦る俺であったが、無情にも晴嵐は止まらない。
晴嵐は細身の体格をしており、胸とお尻はわりと小さめだった。
それでも筋肉質でスポーツ女子のような肢体は十分に美しく、女性的とはいえないまでも十分な魅力を感じさせてくる。
そんな女子の身体が……俺の体内に侵入しようとしている。何も知らず、俺の中に入ってきた。
「よっと」
『そ、そこは……いやあああああああああああああああああああっ!?』
俺は心の中で生娘のような悲鳴を上げて、体内に晴嵐の身体を受け入れたのであった。
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