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激闘! 退魔師試験!㉒

 脱衣所に入ると、床には無造作に衣類が積まれていた。

 先に入浴を済ませている紫蘭とカスミが着ていた服である。


「あとでまとめて洗濯だな。それにしても無防備な……俺に見られるとか思ってないのかね?」


 まあ、元々は俺が貸したものだから別に構わないのだが……女子というのは、自分が着ていた服を男に触られるのは嫌がるものではないのか。

 紫蘭はお嬢様特有の世間知らず、カスミは……普通におっちょこちょいで忘れただけなのかもしれないけれど。

 俺は全員分の服をまとめて収納する。あとで浄化の魔法をかけて綺麗にしておくことにして、浴室に入った。


「フウ……やっぱり風呂だな。たまらん、たまらん」


 軽くかけ湯をしてから湯に浸かる。

 やはり日本人といえば風呂である。非常に心地が良い。

 こんなことなら温泉の素でも持ち歩いておけば良かったが……食料やらコスプレ衣装やら収納してある魔法の倉庫にも、入浴剤は入れていなかった。


「ま……別にいいけどさ」


 考えてもみれば……このお湯には先ほどまで、紫蘭とカスミが浸かっていたのだ。

 少し前まで他人だった女子と同じお湯に入っているというのは、結構すごいことなのかもしれない。

 もちろん、だし汁……じゃなくて、残り湯を飲むような変態チックな真似はしない。俺は紳士なのである。


「ん……?」


 そのままお湯に浸かってまったりしていると、何者かの気配が近づいてくることに気がついた。

 もしかして、カスミが脱ぎ捨てた衣類でも取りにきたのだろうか?


「…………」


 何となく息を潜めると……浴室に隣接した脱衣所に蝋燭のような小さな明かりが灯された。


「……誰もいないな?」


「…………!」


 脱衣所から聞こえてくる小さなつぶやき。

 その声の主は、まぎれもなく賀茂さん家の晴嵐くんのものだった。


「…………?」


 もしかして、俺が入浴中なのに気がついていないのだろうか?

 部屋の前に式神を置いて警戒するような奴がなんて迂闊なのだろう……と思わなくもないが、浴室も脱衣所も明かりがついていなかったので、誰もいないと思うのも無理はない。

 紫蘭とカスミが入浴する際には魔法で明かりを灯していたのだが……俺は暗闇でも問題なく視えるので、今は消灯しているのだ。


「…………」


 脱衣所から衣擦れの音が聞こえてくる。どうやら、晴嵐が服を脱いでいるらしい。

 ここで「入ってるよー」とでも声をかけてやれば俺がいることも伝わるのだろうが、ちょっとした悪戯心が芽生える。

 晴嵐は風呂入らないと言っていたはずなのに、みんなが寝静まっていると見計らって、隠れて入浴しようとしているのだ。

 さんざん、俺に対して失礼な態度をとってきたことだし……少しくらい、脅かしてやっても(ばち)は当たるまい。


「…………変身(メタモルフォーゼ)(ボソッ)」


 俺は小声でつぶやいて……魔法を発動させた。

 これは最近、編み出した魔法の1つで文字通りに身体を変化させるというもの。

 自分の身体がうねうねと形状を変えていき……数秒後には液体となってお風呂のお湯の一部となった。


『フッフッフ……さんざん無礼を働いた罰を与えてやろう。俺からのとっておきのサプライズを受けてみるがいい!』


 俺が入浴していると気がつけば、晴嵐はすぐに出て行ってしまうだろう。

 だが……世の中には裸の付き合いという言葉もある。

 姉ちゃんにセクハラしたことをお湯(・・)に流してもらうためにも、今日はここで強制的に裸の付き合いをしてもらおうではないか!


『さて……どうやってサプライズをしてやろうか。アイツが風呂に入ろうとした途端に元の姿に戻ってやろうか。それとも、シャワーを浴びているところでバーンと出てってやろうか』


 俺はお湯に姿を変えた状態でニマニマと笑う。

 人を脅かすのは嫌いではない。相手が生意気なガキともなればなおさらのこと。

 せいぜい、俺からのサプライズに肝を冷やしてもらうとしようか。


「おお、意外としっかりしている。本当にあの男は能力だけは優秀なんだな」


 やがて扉が開き、晴嵐が浴室に入ってきた。

 晴嵐のすぐそばには式神である白龍が浮かんでおり、口元に燐光を灯して晴嵐を照らしている。

 なかなかに有能な式神のようだが……そんなことは、すぐにどうでも良くなってしまう。


『は……?』


 俺はお湯の形状のまま顔(?)を引きつらせた。


「シャワーまであるのか……まったく、即席でこんなものを作るだなんて、あの男はどんな術を使ったんだ?」


 などとつぶやいている晴嵐であったが……細身の少年の胸元にあるはずのない2つの膨らみ。反対に、股間にはあるべきものがついていない。


 賀茂晴嵐。

 イケメンフェイスをふりまく涼しげな顔立ちの美少年の正体は、男装の美少女だったのである。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど。 そういうことか。 ゴキブリのように接してきたワケは!
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