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激闘! 退魔師試験!⑮


 1時間ほど経過すると、紫蘭が放った人形が戻ってきた。

 帰ってきたのは10体のうち7体ほど。それぞれが小さな手にメダルを握りしめている。


「ありがとう、皆さん。良くやってくれましたね」


 紫蘭が人形の手からメダルを受け取った。

 新しく手に入ったメダルは10枚。紫蘭の手持ちの得点が一気に2倍になる。


「1時間に10枚か。このペースなら明日までにメダルが集まりそうだな?」


「上手くいけば……その通りですね」


 紫蘭が困ったような表情をする。

 そう……そんなに上手くはいかないだろう。

 メダルを狙っているのは紫蘭だけではない。他の受験生だって、怪異を倒してメダルを集めているはずなのだ。

 時間が経つほど弱い怪異はどんどん減っていき、やがてメダルを取れなくなってしまう。

 残る手段は九尾の狐のような高得点の強者を倒すこと。そして、メダルを有した受験生同士で潰し合うことである。


「できれば、退魔師との同士討ちは避けたいのですが……」


「本当に甘いね、襲ってくるのを返り討ちにするのは仕方がないと思うけど」


「正当防衛であれば躊躇いません。ですが、自分から他者を襲って奪うような真似はしたくないものです」


「紫蘭ちゃんは優しいよね。私のことだって助けてくれたし……アレ?」


 カスミが何かを見つけたらしく瞳を見開いた。


「紫蘭ちゃん! 戻ってきたよ、あの人形!」


「あれは……」


 まだ戻ってきていなかった3体の人形……そのうちの1体が帰ってきた。

 戻ってきた日本人形は片手が取れており、白粉を塗った顔が割れてしまっている。


「何かあったのかな? 壊れているみたいだけど……」


「そのようですね……おいで、こちらですよ」


『カタカタカタ……』


 人形が弱々しい動きで紫蘭の腕の中に戻ってくる。

 紫蘭は人形を抱きかかえると、自分の額を人形の顔に寄せるようにした。


「へえ……面白いね。記憶を共有できるのか」


 俺は紫蘭がやっていることを悟る。

 紫蘭は人形に触れることで記憶を読み取っているのだ。

 さすがは人形使いの一族である。器用なことをするものだ。


「なるほど……どうやら、この子以外の2人は強力な怪異にやられてしまったようですね」


「大物がいるってことか? 例の九尾の狐か?」


「いえ、別の妖怪です。3メートルほどの大きさがある巨大な河童の怪物です」


「か、河童……!」


 カスミが顔を引きつらせた。

 どうやら、筆記試験の時に河童にセクハラされたことを思い出したらしい。


「九尾の狐とは比べるまでもありませんが、銅のメダルを持った怪異よりはかなり強いようです」


「俺が戦った大猿と同じく、銀のメダルを持っているかもしれないな? 一気に得点をゲットするチャンスかもしれないぞ?」


「そうですね……行ってみましょう。その妖怪……仮に『大河童』と名付けますが、眷属の小河童もいるようですし、ここは勝負所。一気にメダルを稼いでしまいましょう」


 紫蘭が強気な発言をした。

 やはり大人しそうに見えても肝が据わっている。

 優しく甘い性格ではあっても、決して気が小さいわけではないようだ。


「いいね。とはいえ……俺は危なくなるまで助けないけど、それで構わないかな?」


「もちろんです、月城さんの手を借りずに勝利して御覧に入れます」


「わ、私は手伝うからね! ダメだって言っても、絶対に手伝うよ!」


 カスミが両手で拳を握るが、脚がプルプルと震えていた。

 うん、無理はしないでもらいたい。どうせまたセクハラされて終わるんだから。


「カスミさんは無理をしないでください。また嫌らしいことをされても知りませんよ?」


 紫蘭も同じことを考えていたらしい。

 うん、さんざんエロハプニングを起こしているんだから当然だよな。

 どうしてハ〇ターハ〇ターとか呪術〇戦的な試験の真っ最中に、お前だけT〇ラブるやってんだよとツッコミたくなる。


「私だって相手の気を引くぐらいはできるんだからねっ! 紫蘭ちゃんに助けてもらった恩を返すから!」


「……くれぐれも無理はしないようにしてください。本当に」


「うん! 頑張る!」


 紫蘭は呆れた様子だが……カスミはやる気満々に「むんっ!」と気合を入れていた。


「……まあ、本気でヤバくなったら助けるから。適当に頑張ってきなよ」


 俺はしばらくは傍観を決め込むことを決めて、少女2人の戦いを見守ることにしたのである。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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