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激闘! 退魔師試験!⑭


 実技試験を積極的に動くことを決めた俺であったが……ここで問題なのは、どこまで紫蘭らに力を貸すかである。

 彼女はすでに銅色のメダルを10枚ほど所持しているらしい。合格点が100点とすると残り90点ということになるだろう。

 俺が所有しているメダルは銀色が1枚、銅色が7枚。先ほど、ゴリラもどきから奪い取ったメダルである。得点にするのであれば17点だ。


 俺の目的はあくまでも九尾の狐へのリベンジ。別にメダルは必要ないのだが……だからといって、手持ちのメダルを紫蘭にあげるのもどうかという気がする。

 仮に俺の力を全面的に借りて『甲種』認定を受けたとしても、実力不相応の評価を得た紫蘭がその後も生き残れるとは思えない。

 むしろ、実力以上の任務を押しつけられて命を落としてしまうかもしれない。


「3枚ぽっちならあげてもいいけど……さすがにこれ以上はダメだよな」


 個人的には全てのメダルを献上したい。

 それくらいしないと、先ほどセクハラした罪は(あがな)えない。

 だが……あえてそれはしない。心を鬼にしてメダルは自分で持っておくことにした。


「これから一緒に行動するわけだけど……そこまで手助けはしないよ。自力で合格しないと意味ないからね」


「もちろんです、これ以上、月城さんに御手間をかけさせないようにいたします」


 俺の言葉に、紫蘭は当然だとばかりに了承した。

 自力で合格しなけれ意味がない。紫蘭もそれはわかっているのだろう。


「でも……紫蘭ちゃんは残り90枚もメダルが必要なんだよね? ちょっと時間が足りなくないかな?」


 カスミが人差し指を唇に当てて、可愛らしく首を傾げた。


「1日あたり45枚……それだけの怪異を探すだけでも大変じゃない?」


「それはそうですね……しかし、強い怪異であれば高得点を稼げるとわかりましたから。これからは積極的に動きたいと思います」


 紫蘭が両手を合わせて、祈りでも捧げるようなポーズをとった。すると、手の中に丸い手鏡のようなものが出現する。


「雛森家に伝承されている呪術は大きく2つ。1つ目は結界術。もう1つは……人形を用いた傀儡術です」


 紫蘭が頭上に手鏡をかざすと……キラリと光を反射した鏡の中から複数の影が飛び出した。

 鏡の中から現れたのは体長50センチほどの大きさの日本人形。それが10体ほどである。


「傀儡術……つまり、人形使いということかな?」


「その通り。雛森家は人形供養を生業とする家系。呪いが込められた人形を封じ込め、操る術に長けた一族なのです」


 俺の問いに紫蘭が答えた。

 まるでマリオネットでも操るかのように、手鏡を持った手を左右に揺らす。


『カタカタカタカタ……』


 現れた日本人形が独りでに動き出し……ジャングルの中に飛び込んでいった。


「彼らは弱い怪異であれば容易に倒せるだけの霊力を込めています。あまり複雑な命令を出すことはできませんが」


「それでも十分にすごいだろう。どうして、昨日はこれを使わなかったんだ?」


「それは……」


 紫蘭がチラリと隣のカスミに目を向けた。

 友人と目が合ったカスミが不思議そうに首を傾げる。


「ああ……そういうことね」


 そんな意味深な視線の意図を悟る。

 つまり、カスミが足手まといになっていたせいで積極的に動けなかったわけか。

 今は俺という「保護者」がいるので自由に動けるが、昨日はカスミを守るために『攻め(オフェンス)』の傀儡術ではなく『守り(ディフェンス)』の結界術に力を割いていたのだろう。


「甘いなあ。悪いことだとは思わないけど」


「これも退魔師の使命ですから。甘さが恥であるとは思いません」


 退魔師の仕事は怪異を倒すことだけではない。

 戦う力を持たない、か弱い者を守るのもまた使命であるということか。


「えっと、何の話をして……きゃんっ!」


 会話の意図が読めずに首を傾げるカスミであったが、何もない場所ですっころぶ。

 俺が貸したメイド服の裾を乱して、盛大に下半身をさらけ出す。


「おいおい……」


「カスミさん、気をつけてください……今は下着をつけていないんですよ?」


「ふあああああああ……やっちゃったあああああああああっ!」


 カスミの悲鳴がジャングルにこだました。

 何故かコスプレ服を持ち歩いている俺であったが……さすがに女性用下着までは持っていなかったのである。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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