142.そして伝説へ!!! ⑯
連続投稿中になります。
読み飛ばしにご注意ください。
吸血鬼の『神』が放った光線が迫ってくる。
俺は自分の方から、まっすぐ突き進んでくる攻撃に飛び込んでいく。
わざわざ攻撃を喰らいに行ったのは、決して余裕の顕われではなかった。
俺の後ろには……少し離れた場所にあるマンションには、沙耶香達がいる。
ここで俺が攻撃を躱してしまえば、代わりに沙耶香らが『神』の攻撃にさらされることになってしまう。
「つまり……正面から迎撃するしかないってことで!」
『神』が放った赤い光線は、かつての俺であったのならば10人まとめて消し炭にできるほどの威力がある。
だが……そんな強烈な攻撃を正面から受けにいく。
「スキル発動──【神鋼】、【錬金術】、【武王】」
妖精の加護によって修得したスキルを同時に3つ発動させる。
【神鋼】スキルによって身体能力が極限まで向上。さらに、【錬金術】によって手の中に刃渡り1メートルほどの剣が生み出された。
そして……【武王】。
あらゆる武術を極めることができるスキルによって、神業の域に達した剣技が振るわれる。
「神技──超・回転斬り!」
剣を振り回しながら、ジェット機のプロベラのように猛スピードで身体を回転させる。赤い光が斬撃によって千々に切り裂かれる。
赤い閃光が回転によって拡散され、攻撃力を持たないただの赤色光となって消えていく。我ながら力業過ぎる対処法である。
「だが……傷つかなーい! ノーダメージ!」
「なっ……まさか無傷ですか!?」
強引に吸血鬼の光線を掻き消した俺であったが、ほぼダメージはなかった。
厳密に言うと全身に火傷のようなものを負ってはいたのだが……わずか数秒で何事もなかったかのように修復される。
治癒魔法を使ったわけではない。
あらゆる身体強化を極めた【神鋼】によって攻撃力や防御力、速度だけではなく、自然治癒力もまたブーストされているのだ。
「む……さすがに剣は保たなかったか」
とはいえ、『神』の光線を切り裂いた剣は溶解して壊れてしまった。
もともと、大気中の塵やら水蒸気やらを集めて、【錬金術】によって無理やりに剣の形にしたものだ。
『神』の攻撃に耐えられなくてもしょうがない。
「ま……別にいいけどね。素手で殴れば済むだけだよ!」
「うぐうっ!?」
一瞬で相手の懐に入り、『神』にボディブローを決めた。聖のものだった身体が『く』の字になって折れ曲がる。
聖の身体に申し訳ない限りだが……そのまま容赦のない打撃の雨を浴びせかけてしまおう。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアッ!!」
「グッパオンッ!?」
時間を止めたような連続パンチを受けて、『神』が校舎の中まで吹き飛んでいく。
窓ガラスを破壊し、たくさんの机を巻き込んで教室の中に転がっていった。
「お前の大好きなオラオララッシュだよ。領収書も切ってやろうか?」
「クッ……流石ですね、先輩。この我に一方的に攻撃を叩きつけるとは」
それでも……やはり相手は紛れもない神だった。
破れた窓ガラスの向こうから現れた聖の身体は校舎の残骸で汚れてはいたものの、傷らしい傷は見られない。
どうやら、ただの打撃でダメージを与えることはできそうもなかった。
「まあ……予想通りだけどね。ちょっとした確認作業だよ」
「確認ですか……それは悪手ですよ。貴方は我を怒らせた」
「むっ!?」
今度は『神』が瞬間移動してきた。
鞭のように鋭いケリが俺の顔面にヒットする。
回避する暇もなかった。気がつけば、聖の足が顔にめり込んでいた。
「ドラアッ!」
「ぐっ……!?」
今度は拳が腹にめり込んでくる。
さっきのボディブローのお返しだろうか。今度はこっちの身体が『く』の字になってしまう。
高速移動でその場を離れようとするが……またしても顔面を殴られて吹き飛ばされた。
そのまま民家の屋根に突っ込んで盛大に家屋を破壊する。
「痛……くはないけど、小柄な女の子に殴られるのは気分がよくないね。どうやら、俺にはMの素質はないらしい」
いや……沙耶香やクラリスになじられたりするのはわりと楽しいから、相手が問題なのかもしれない。
アホの後輩にマウントをとられるのが嫌なだけだろうか。
「それはともかくとして……やってくれるね。回避も防御もできなかったよ」
民家に突っ込んだ俺は、この家の住人に心の中で謝罪しつつ、壊れた屋根の穴から外に出る。
再び、宙を飛んで『神』に向き合った。
「何をされたかと思ったら……ゴッド聖。時間を止めたな?」
「おや、もう気がついてしまったんですか? 我のスタンド能力にあっさり気がついてしまうとは面白くないですね」
「誰がザ・〇ールドのスタンド使いだよ。時計塔にエメラルドをブッ込んでやろうか?」
恐るべきことに、『神』は時間を止めて俺を攻撃してきた。
時間を停止できるのは1秒か2秒ほどだと思うが……『神』のスピードであれば、余裕で100メートル先の敵だって攻撃することができるだろう。
「バトルマンガの最強系能力と言ったら時間停止ですよね。ラスボスである我が、その基本を怠るわけがないでしょう?」
「自分がラスボスだって自覚があるのかよ。だったら……こういうのはどうだい?」
「っ……!?」
俺の拳が『神』の顔に突き刺さる。
敵も時間を止めて反撃しようとするが……その一撃を腕で受け止める。
「なっ……!」
「主人公が急に時間を止められるようになるのもお約束だよな。自分に出来ることが俺にできないとか、いつ勘違いしたんだ?」
「クッ……まさか、スター〇ラチナが完成したというのですか!?」
「誰が承〇郎さんだ。いや、さっきオラオラやったけどね」
停止した時間の中で、『神』と殴り合う。
オラオラと、無駄無駄と、激しい攻防が繰り広げられる。
「くっ……先輩、時間を停止させるなんて器用な真似をしますね。本格的に人間を辞めるつもりですか!?」
「すでに人間やめてる奴に言われたくないっての。【万能魔法】を使って時空魔法を発動させただけだ」
妖精の加護によって修得したスキル──【万能魔法】
文字通りに、あらゆる魔法を使うことができる。
地水火風、光闇、雷や毒、そして……時空。どんな属性にも魔力を変換することができ、あらゆる魔法を使いこなす。
我ながらチート過ぎるスキルである。
「なるほど……時間停止すらも真似して見せるとは、どうやら、先輩の刃は我の命に届くレベルに達しているようですね。こちらも全身全霊を尽くさせてもらいます」
「まだ切り札を隠しているのか。ラスボスだからって変身でもするつもりかよ?」
「ある意味ではその通りですね。この技は血液を激しく消耗するので、使わずに置きたかったのですが……」
『神』が両手を広げると、彼女を中心として周囲の景色が深紅に染め上げられていく。
時間を停止させて回避しようとするが……時空魔法が発動しない。抵抗する暇もなく、敵の術中に取り込まれてしまう。
「神格拡張──【血界神域】!」
「おおうっ……!?」
赤い空間が俺の身体を飲み込んだ。
莫大な魔力。圧倒的過ぎるほどの力の奔流。
かつてない攻撃を前にして、俺の背筋に冷たい汗が流れた。
領域てんか……げふんげふん。
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