表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います  作者: 狭山ひびき
SS

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/106

ノベル④巻コミックス⑤巻発売記念☆ テイラー日記

お読みいただきありがとうございます!

どうぞよろしくお願いいたします。


2025年9月:外伝「ティアナ!」の連載を開始しました。(https://book1.adouzi.eu.org/n5341ky/)

どうぞよろしくお願いします!

 夜――


 仕えているオリヴィア・アトワールが就寝したのち、隣の侍女の控室にて、テイラーは日記帳を開いた。

 〇月〇日、と書きはじめるのは「オリヴィア様日記」である。名前の通り、オリヴィアのことについてつづられている日記だ。

 オリヴィアに仕えはじめてから毎日のようにつけている日記も、もう十冊は軽く超えている。

 積みあがっていくのは大好きなオリヴィアとの歴史。

 いつかオリヴィアがこの世に名を残すことがあれば、きっと役に立つだろうとテイラーは自負している。というかむしろ自分がオリヴィアの伝記を書きたい。


「この日記帳もそろそろ終わるわね。今度のお休みに新しい日記帳を買いに行きましょう」


 残り十ページを切った日記帳を見ながらしみじみ思う。この日記帳に書かれた出来事は、それまでの日記よりもずっと濃いものになった――と。

 なんとなく懐かしさを覚えて、テイラーは過去に自分が書いた日記を読みはじめた。



      ☆



 〇月〇日。

 前からいけ好かなかった王太子殿下が、オリヴィア様に婚約破棄をつきつけやがりました。

 あの王太子殿下は目がものすごく悪いのかそれとも頭がものすごく悪いのか、オリヴィア様を馬鹿だと信じていらっしゃいます。

 まあ、オリヴィア様もゆえあって馬鹿のふりをしていらっしゃるのですが、よくよく観察していたらオリヴィア様の聡明さには気づくはずです。そこかしこに欠片が落ちているのですから。

 でもあのバカ王子はそれに気づきません。いい加減むしゃくしゃしてきたところに向けての婚約破棄。それも、どう考えてもオリヴィア様より頭がゆる~いティアナ・レモーネ嬢と婚約を結びなおすそうです。

 正直、あの王太子がどこの誰と新しく婚約しようとどうでもいいのですけど、あのバカ王子、言うに事欠いてどう見ても馬鹿っぽいティアナ・レモーネがオリヴィア様より聡明だとか抜かしやがったそうです。帰って来た旦那様のあれ具合もすさまじいものがございましたけど、直接その場にいなかったわたくしでさえ、聞いたときは闇討ちに行ってやろうかと思いましたよ。ええ、ええあのバカ王子は真正のバカ王子です。

 ですが、処刑覚悟で王太子殿下の闇討ちに行こうと本気で考えていたわたくしは、その後の展開を聞いてひとまず冷静さを取り戻しました。

 なんと、第二王子サイラス殿下がオリヴィア様に求婚なさったというのです。

 サイラス殿下。

 直接お話したことはございませんが、穏やかそうで聡明そうな王子殿下です。オリヴィア様と並ぶと絵になるなと前々から思っておりました。

 バカ王太子はムカつきますが、オリヴィア様はどう考えてもサイラス殿下があっています。

 急なことに戸惑ったオリヴィア様は求婚を保留になさったようですけど、不肖テイラー、全力で応援させていただきます‼





 〇月〇日。

 今日、サイラス殿下がアトワール公爵家にやってきました。

 それも、真っ赤な薔薇の花束を抱えてでございます。

 前触れもなく突然やってこられた時は、令嬢の支度の大変さをわかっているのかこの野郎……と、ちょっと思わないでもなかったですが、お嬢様のために巨大な花束を抱えてやって来られたのでそのムカつきも飛んでいきました。

 サイラス殿下、花束が似合いますね。そして真っ赤になったうちのお嬢様まじ可愛い……。

 わたくし、ド直球で気持ちを伝えられる殿方は好きですよ。それがお嬢様に対してとなるとなおのこと好感度は上がります。だってうちの可愛いお嬢様、超がつくくらいの奥手なんですもの。もちろんそこがいいんですけどね。

 殿下はどうやら来月のパーティーのパートナーにお嬢様を誘いに来たようです。なおのこと好感度が上がります。お嬢様は公爵令嬢ですから来月のお城のパーティーに参加しなくてはならないのですけど、王太子殿下のせいでパートナーがいらっしゃいません。もちろんいらっしゃらなくても参加はできますけれど、口さがないことを言う方もいらっしゃるでしょう。サイラス殿下がご一緒なら、ふざけたことをいう輩を黙らせられるというものです。グッジョブです、サイラス殿下!

 そうと決まれば、ふふふふ~ん、来月のパーティーの日に、お嬢様を最高に可愛くするために今からドレス候補を選んでおかなくては!





 〇月〇日。

 お嬢様が馬鹿王太子殿下のお仕事をお手伝いするためにお城に通うことになりました。

 あんの王太子はこれまでお嬢様が殿下のお仕事の大半をこなしていたこと知らないのでございます。もう少し注意深く周囲を観察する能力を身に着けた方がよろしいんじゃないでしょうか。さもないと即位なさってから困るでしょうに。

 婚約者でなくなったのに王太子殿下のお仕事を押し付けられたお嬢様ですが、見返りに図書館の出入り許可をいただいたのでご機嫌です。お嬢様は聡明でいらっしゃいますので、お仕事なんてちょちょいのちょいで終わります。

陛下のお願いには腹は立ちますが、お嬢様はお仕事なんてとっとと終わらせて図書館通いを楽しむつもりのようですので、まあ、よしとしましょう。





 〇月〇日。

 お嬢様がお城でお仕事をしていたら王妃様に呼ばれました。

 伝言を言いに来た王妃様付きの侍女の腹の立つことと言ったら……呪います。あの顔、一生覚えておきますよ。覚悟しやがりなさいませ。わたくしの怒りは根深いのです。

 さて、王妃様のお部屋にはわたくしは同行できませんので、お嬢様お一人で向かわれましたが、どうやら途中でティアナ様が妨害に入った模様。普通なら腹が立つところですが、今回ばかりは彼女の常識はずれな行動のおかげでお嬢様は難を脱したようですので、目をつむりましょう。

 というか、ティアナ・レモーネ伯爵令嬢は、あの様子で王太子殿下の婚約者が務まるのでしょうか。正直、頭のねじが数本緩いように思うのですが、王太子殿下はご存じなんですかね。ま、困るのは殿下でしょうから、どうでもいいですが。

 それにしても……、王妃様は、なかなか侮れない方のようですね。

 お嬢様がかなり疲れたご様子でした。たいていのことはそつなくこなすお嬢様ですが、王妃様相手にはそれは難しいようです。要注意人物ですね。これまでオリヴィア様をお呼びになることはなかったと言うのに、どういう風の吹き回しか知りませんが、お嬢様にちょっかいをかけないでほしいです。





 〇月〇日。

 フィラルーシュのエドワール殿下とお話してから、お嬢様が難しい顔をすることが増えました。

 そして、何やら資料を集めて読み漁るようにもなって……サイラス殿下も、殿下の補佐官であるリッツバーグ様も一緒になって何やらはじめたので、大変ややこしい事態になっていると想像いたします。

 はあ、それにしてもわたくしのお嬢様は頑張り屋さんすぎますよ。

 エドワール殿下から何を聞いたのかは知りませんが、王太子殿下の婚約者でなくなり、なおかつサイラス殿下の求婚を保留にしているお嬢様が手を貸すようなものなのでしょうか。お人よしすぎます。





 〇月〇日。

 資料を読み漁っていたお嬢様は、サイラス殿下とデボラという町で何やら大変なことを掴んできた様子。

 その帰り道にオリヴィア様とサイラス殿下の仲も進展し、わたくしはにやにやが止まりませんでしたが、わたくしがフラワーシャワーで祝福する前に、オリヴィア様たちは陛下に呼び出されてしまいました。

 わたくしの同席はかないませんでしたので、とっても楽しい場面をこの目で見られなかったのですが、なんと、お嬢様はサイラス殿下と共にレモーネ伯爵を断罪、王太子殿下を王太子の座から引きずり下ろしたようです!

 もっとも、優しいお嬢様は少なからず心を痛めていらっしゃるようですが、もとはと言えばお嬢様を捨ててティアナ・レモーネ嬢に乗り換えたアラン殿下が悪いのです。

 レモーネ伯爵も失脚、ティアナ様もアラン殿下との婚約を白紙に戻されて、わたくし、心の底からすっきりいたしました。ふふふん、お嬢様を馬鹿にするからこういうことになるのです。

 わたくしが直接お邪魔できないところでのやり取りなので、詳しいことはわかりませんが、すべてを終えたお嬢様は幾分かすっきりした顔をなさっておいででした。

 サイラス殿下とも晴れて恋人同士。婚約も内定し、わたくしは一安心です。

 あとは奥手なお嬢様がもっとサイラス殿下とラブラブ出来たらいいのでしょうけど、こればっかりは時間がかかるでしょう。

 でも、すぐに真っ赤になるお嬢様が可愛すぎるので、もしばらくは今のままでもいいかなと思う自分もいるのです。



      ☆



 日記を読み返していたテイラーは、そこまで読んで時計を確認した。

 このまま全部読みたいところだが、あまり遅くなって明日の仕事に差し障ってはまずい。

 今日の日記をしたためて、早くベッドにもぐりこんだ方がいいだろう。


 テイラーは日記帳の白いページを開いてペンを握り締める。

 今日のお嬢様も、可愛かった……。

 テイラーはこれからもお嬢様の幸せを全力サポートいたしますからね‼



お読みいただきありがとうございます!

ノベル④巻、コミックス⑤巻ともに、どうぞよろしくお願いいたします!


ちなみに、ノベル③と④は書下ろしになります(*^^*)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ