エイプリルフール企画 爆誕・王太子妃ティアナ⁉
エイプリルフール企画で、ティアナのお話を書きました。
ノベル③巻のあとのお話ですので、ノベル③巻を読まれていない方はご注意ください。
それでは、短めですが、よかったら(*^^*)
たくさんのレースやフリルに、引きずるほど長いトレーン。
緻密な模様のレースのベール越しに、ティアナはうっとりと目の前の男を見上げた。
純白のティアナの衣装に合わせ、白い盛装に身を包んだアランは、いつもの何倍もカッコよく見える。
アランが、焦げ茶色の瞳を柔らかく細めて、ティアナを見つめていた。
この、優しい、けれどもほんの少しだけ困ったようなアランの微笑みがティアナは好きだ。
「仕方がないな」の一言でティアナのすべてを受け入れてくれる。アランの微笑みは、ティアナにそんな錯覚を抱かせる。
ぐるりと参列席を見渡せば、最前列に国王夫妻とサイラスとオリヴィアが座っていた。
オリヴィアは相変わらず美しいが、今日の主役はティアナである。
アランに婚約破棄されてから、本当にいろいろあった。
(でも、ついにわたくしが主役の時代がやってきたわ‼)
両親がいないため、ティアナの花嫁衣装は第二王子妃であるオリヴィアが用意してくれた。
オリヴィアの侍女だった自分が、まさか王太子妃に選ばれる日が来るなんて。
いろいろあって王太子の位を降りたアランだが、結局、再びその地位に返り咲いた。
ティアナが出会ったころよりも幾分も落ち着いて大人の男性の魅力を増したアランは、本当にたまらなくカッコイイ。
(うふふ、結局アラン様はわたくしが大好きなのよ!)
跪いてプロポーズをしてくれた時は、感動のあまり泣いてしまったほどだ。
国王夫妻にも第二王子サイラス夫妻にも祝福され、ティアナは今日、王太子妃になる。
アランの手が、ティアナのベールにかかる。
優しくベールを持ち上げ、後ろに流してくれて、アランの手がティアナの頬に触れた。
「ティアナ……」
いつにも増して甘いアランの声がティアナの名を呼ぶ。
うっとりと見上げると、アランがゆっくりと上体をかがめた。
唇に、暖かい吐息が触れる。
(ああ、ついに、わたくしの時代が――)
あと、一センチ。
そして、今まさに唇が重なろうとした、その時だった――
ドスン!
枕を抱きしめた体勢で、ティアナはぱちりと目を覚ます。
目の前には、寝ていたはずのベッドがあった。どうやら転げ落ちたらしい。
「…………ちっ」
ティアナは小さく舌打ちすると立ち上がって、ベッドの上にごろんと仰向けに横になる。
「あとちょっとだったのに。わたくしの時代が……」
夢が覚めるのが早すぎだ。
ぷうっと頬を膨らませたティアナは、枕をかかえて再び目を閉じる。
もう一度目をつむれば、夢の続きが見られるだろうか。
せっかくなので王太子妃から王妃になって、天下を取るところまで夢に見たい。
(そして毎日綺麗なドレスを着て美味しいお菓子を食べて幸せに暮らすのよ!)
第二王子妃にオリヴィアがいるのだから、面倒くさい仕事はきっと全部やってくれるはずだ。
何故なら夢の中はティアナにとって都合がいい展開になるのだから、ティアナが仕事に追われるはずがないのである。
「うふふ、もう一回寝よーっと」
しかし三十分後、いつまでも起きてこないティアナに業を煮やしたテイラーにたたき起こされて、結局ティアナは最後まで夢を見ることができなかった。
そして、どういうわけかこの日以降、同じ夢を見ることはできなくて――
(テイラーめ!)
素敵な夢を見た日を忘れないようにと、カレンダーにハートマークを付けたティアナは、テイラーさえ邪魔しに来なければ最高の夢が見られたのにと、不貞腐れた。











