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【書籍化】王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います  作者: 狭山ひびき
SS

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コミックス③巻発売記念SS『贈り物』

皆様本作ではご無沙汰しております!!

9/14に本作のコミックス③巻が発売されますので、記念SSを書きました!

(X(Twitter)にて、SS主人公の投票にご協力くださった皆様ありがとうございます!ぶっちぎり1位のサイラス君でお送りいたします!!)


また、本作のノベル③巻の方は今冬に発売予定です!

発売日などの詳細はまだご報告できませんが、この冬のどこかで発売される予定らしいと、頭の隅っこの方にでも記憶しておいていただけるととっても嬉しいです!


そして、ノベル③ですが、内容はwebと異なります(時系列的にはweb③話の後です)。

web版と路線変更となってしまうのと、ノベルにて書き下ろしたものをwebに上げられないという理由で、web版はいったん完結設定をさせていただきます!

本編の続きを投稿しないため完結設定には致しますが、発売記念などのSSや小話など、ノベルの進行に問題ないレベルで投稿しようと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

(またどこかでX(Twitter)でSS主人公の投稿をしたりするので、そのときはよかったら投票してくださいませ!)


前置きが長くなりましたが、それではSSをお楽しみいただければ幸いです。

(時系列的には、ノベル1巻の、オリヴィアがまだ書類仕事をしている時でございます!)


「ねえコリン。どれがいいかな?」

「どれもなにも全部殿下のペンではないですか」


 机の上に何本ものペンを並べてうなっていたサイラスに、コリンが怪訝そうに首をひねった。


「朝からがさがさしていたと思えば、なんだってこんなにたくさんのペンを引っ張り出してきたんです?」


 サイラスの机の上には十本近いペンが並んでいる。

 どれもインクをつけて使うものだが、書き心地やペン先の太さ、ペンの重さから材質まですべて違うものだ。


「最近はこのガラスペンが気に入っているんだけど、固いから長時間使っていると手が痛くなるだろう? だからこっちの柔らかいのがいいかなとは思うんだけど」

「だから、何がです?」

「もちろんオリヴィアへのプレゼントだよ」


 するとコリンは、ますます解せない顔になって、じっと並べられているペンを見やった。


「どれも殿下のペンですよね」

「そうだよ」

「同じものを買うんですか?」

「違うよ。この中のどれかを上げるんだ」

「……新品ではなく?」

「新品では意味がないんだよ」


 サイラスはコリンを振り返って、二本のペンを掲げで見せた。


「候補はこの二本なんだよね。長時間の書類仕事でも手が疲れにくいし、ほら、持ち手にクッション性があるから指のここのところが痛くならない」

「それ、殿下が特注したやつじゃないですか」

「うん、そう」

「買ったところに頼めばまた作ってくれるんじゃないですか?」

「だから、僕のペンを上げたいんだ」

「……説明を求めます」

「わからない?」


 サイラスは不思議そうな顔をして、ペンを置いてコリンに向き直った。


「いいかいコリン。僕のペンをオリヴィアに上げるとするよ。するとオリヴィアは、仕事の間もきっと僕のことを思い出してくれるはずだ。そうだろう?」

「それから?」

「……ついでにオリヴィアのペンと交換してくれたら、僕もオリヴィアのことを思い出しながら仕事ができる」

「はー……」


 コリンは両手で顔を覆って天井を仰いだ。


「殿下、何を女々しいことを言っているんですか!」

「仕方ないだろう! だってオリヴィアは午前中は書類仕事をしていて会えないし、僕も僕で用事があるからいつも一緒にいられないんだ。離れている時もオリヴィアを近くに感じたいしオリヴィアにも僕を想ってほしい!」

「オリヴィア様を前に同じことが言えますか?」

「言えるわけないだろう恥ずかしい」


 サイラスはぷいっとそっぽを向いて、ペン選びを再開する。

 コリンは女々しいと言うが、世の中の男が女性にプレゼントをする理由なんて大半がサイラスと似たような理由だと思う。自分の贈ったものを見て、自分を思い出してほしいから贈るのだ。オリヴィアの場合恋愛に関してはこと鈍感なので、ただペンを贈っただけではただの仕事道具としてしか認識しそうにないから、「サイラスのペン」を贈ることにしただけなのである。


(やっぱりこっちだよなぁ。ちょっと細いからオリヴィアの華奢な手にも使いやすいだろうし。でも装飾はこっちの方が綺麗なんだよ)


 実用性を取るか綺麗さを取るか、そこが悩みどころだ。


(でもこっちもいいな)


 背後でコリンがすっかりさじを投げていることに気づきもせず、サイラスはその後、たっぷり一時間もかけてオリヴィアに贈るペンを選んだのだった。






 選んだペンに自ら綺麗にラッピングを施すと、サイラスは意気揚々とオリヴィアの元へ向かった。

 仕事の早いオリヴィアのことだ、そろそろ書類を片付け終えるころだろう。

 案の定、部屋に向かうとオリヴィアはテイラーの入れたお茶で休憩をしているところだった。


「やあオリヴィア」


 ここのところ、暇さえあればオリヴィアに会いに来ていたので、サイラスが来てもオリヴィアは驚くことなく微笑んでくれた。


「殿下、陛下からお菓子の差し入れを頂きましたのでご一緒にいかがですか」

「うん、いいね」


 あの狐目親父の差し入れと聞いてもサイラスは驚かない。ジュール国王が昔からオリヴィアを気に入っていることをサイラスは知っているからだ。だからあの手この手を使って強引にアランの婚約者にしたのである。あのとき、幼かったサイラスが「王様なんていやだー」なんて言わなければサイラスもオリヴィアの相手の候補として土俵に挙がっていたはずなのに、それだけが悔やまれる。

 だがあの当時のサイラスは、女児が欲しかったジュールに女の子の格好をさせられて嫌気がさしていた。そのせいで「国王という人間は碌なやつがいない」と思い込んでいたのだから仕方がない。


 もっとも、成長したらしたで、国王という重圧も、臣下たちとの精神がすり切れそうな駆け引きも、恐ろしいほどの仕事量も、できることなら避けたいなと思ったので、結果を見れば変わらなかったのかもしれないが。

 テイラーがサイラスの分のお茶とお菓子を用意して、にこりと微笑んで控室へ下がる。


「オリヴィア、これを……」


 丁寧にラッピングした箱をすっとオリヴィアに差し出せば、彼女はきょとんと首をひねった。


「これは?」

「プレゼントだよ。開けてみて」

「え⁉」


 オリヴィアは驚いたように息を呑んで、それから戸惑ったように視線を彷徨わせると、何度も何度も礼を言って箱を手に取る。


(……兄上が、いかにオリヴィアにプレゼントを贈っていなかったかがわかるな)


 異性からの贈り物に慣れていないのだろう。おろおろしながら緊張した面持ちでリボンをほどくオリヴィアがたまらなく可愛い。

 リボンを丁寧にほどいて箱を開けたオリヴィアは、中に納められていたペンを見て目を丸くする。

 サイラスが最終的に選んだのは、ペン先が金でできていて、持ち手に皮をなめしたものが巻かれたものだった。サイラスが持っているペンの中で一番書き味がよくて、長時間握っていても疲れにくいものである。握りやすさだけで言えばもっといいものがあったが、あれはいまいち書き味がよくなかったので、吟味に吟味を重ねてこれになったのだ。


「僕が使っているペンなんだけど、よかったら。使いやすいと思うんだけど……ちょっと試し書きしてみて」

「ありがとうございます。ちょうど今使っているペンが傷んできたので嬉しいです」


 オリヴィアは立ち上がると、インクと紙を持って戻って来た。

 紙に何度か自分のサインをして書きやすさを確かめると、嬉しそうに笑う。


「すごく書きやすいです。あ、でも、殿下のペンですよね。もらってしまっていいんですか?」

「うん。だからオリヴィアに使ってほしいんだ。そうして、たまにでいいから僕を思い出してくれると嬉しい」

「え……?」


 途端に、オリヴィアの顔がボッと赤くなった。

 ペンを握り締めたままあわあわとして、それから赤い顔のまま俯いて小声で「ありがとうございます」と言う。


(あー……本当に本当に可愛い……)


 衝動的に抱きしめたくなるが、そんなことをすればオリヴィアを怯えさせるかもしれない。ここは冷静に、オリヴィアの気持ちがこちらへ向いてくれるまで耐えるのだ。


「ええっと……その、お礼をしたいのですけど、今お渡しできそうなものがなくて……後日何かをお贈りさせていただいてもいいでしょうか?」


 男からの贈り物に対してお返しを考えるあたり律儀で真面目なオリヴィアらしい発想だ。

 しかし、オリヴィアがこう返答してくることを、サイラスは想定済みだった。

 部屋を出る前から計画していたことなどおくびにも出さず、さりげなく言う。


「オリヴィアが使っているペンでいいよ。ちょうどダメになりそうだったんだろう? 交換しよう」

「いえ! あれは本当に、ペン先が割れてきていて……」

「いいんだよ」


 ペン先が割れていようと壊れていようと構わない。サイラスはオリヴィアの使っていたものが欲しいのだ。


「僕が上げたものも僕のお古なんだから、交換するのがちょうどいいだろう」

「で、でも……せめて使えるものでないと……」

「気にしないで」


 むしろここで押し通しておかないと、オリヴィアのことだ、絶対に新品を贈ってくる。新品では意味がないのである。

 オリヴィアはそれでも抵抗を見せていたが、サイラスが引かないことを知ると、渋々机の上から使い古しのペンを持って来た。


「ほ、本当にこちらでよろしいんですか?」

「うん」

「では、その……どうぞ」

「ありがとう!」


 心苦しそうなオリヴィアからペンを受け取って、サイラスは内心でガッツポーズを上げた。

 オリヴィアから受け取ったペンを、丁寧にハンカチにくるんでポケットに入れる。

 にこにこと笑うサイラスに、オリヴィアは不思議そうな顔をしていたが、本人がいいならそれでいいかと納得したようだ。それ以上は何も言わなかった。



 後日――

 オリヴィアからもらったペンは、丁寧にガラスケースに入れられてサイラスの机の上に飾られた。

 仕事の合間に壊れかけのペンを眺めてはにこにこ笑うサイラスに、仕事を持って来た文官たちが首を傾げることになるのだが、それはまた別のお話。




お読みいただきありがとうございます!

お楽しみいただけましたでしょうか?


前書きにも書きましたが、本作コミカライズ③巻は9/14発売予定です!

また、特典がとってもたくさんあります!

各書店さんで違うのでマッグガーデンさんのwebサイトをご確認の上、念のため店舗にお問い合わせくださいませ。

また、今回の得点には「ホログラムしおり」があります!こちらも応援書店さんでお配りするものになりますのでご注意ください(全部の書店さんじゃないです)


また、本作③巻のほかに9月は別で2作品のコミカライズ作品が発売されます!

下記にスケジュールを書いておきますので、よかったらチェックしてくださいませ(*^^*)


どうぞよろしくお願いいたします。



~~9月の発売スケジュール~~~~~~


9/7 病弱(嘘)令嬢は婚約破棄したい!~お金勘定に忙しいので、結婚したくないんです!(スクエア・エニックス様)


9/8 美麗公爵様をを口説いてこいと命じられたのに、予想外に溺愛されています(双葉社様)


9/14 王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います③(マッグガーデン様)


ちなみに8月には「殿下、あなたが捨てた女が本物の聖女です(一迅社様)」のコミックス①が発売されています~!



~~~9月から下記二つの新連載も開始しました~~~


☆妖精の風の吹くまま~家を追われた元伯爵令嬢は行き倒れたわけあり青年貴族を拾いました~

https://book1.adouzi.eu.org/n1598ik/

⇨ファンタジー色強めのラブコメディー


☆王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

https://book1.adouzi.eu.org/n2319ik/

⇨パワフルでポジティブなヒロインがヒーローを振り向かせようと必死になっているラブコメディー



追記:ノベル3巻の書影が公開されました!12月20日発売予定です!


挿絵(By みてみん)

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