剣の捜索と選定の儀式 4
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一方そのころ、奇しくもオリヴィアも、同じ意見にたどり着いていた。
城の西側の一階の部屋を調べ終わってのことである。
ユージーナはエドワールと同じく、城中の部屋を探し回ればそのうち紛失した剣を発見できるだろうと思っているようだが、果たしてそうだろうか。
(剣をいつ紛失したのかはわからないけれど、そもそも紛失して気づかないままでいられるものかしら? 第一、自分の行動は自分が一番よくわかっているものだもの、『置き忘れたのだろう』とご自身で言うくらいだから、どこかに置いた記憶があるのよね? だったら自分が立ち寄った場所に探しに行けば早いんじゃないかしら?)
まさか毎日城中の部屋をくまなく歩きまわっているわけでもあるまい。国王に毎日のようにうろうろされては、使用人たちは仕事がしにくくてやれないだろう。
ユージーナもエドワールもウィルソン国王の「うっかり」に疑問を抱いていない。よくあることだと口をそろえて言っているし、本当に過去に何度もこうしたことが起こっていたのかもしれないけれど――本当に、過去の「うっかり」と今回の「うっかり」は同じと考えていいものだろうか。
国宝であり、即位の際に代々受け継がれてきた選定の剣を紛失するということは、ただの「うっかり」ですまされるレベルのものではない。
もしこれと同レベルの「うっかり」をくり返してきたのならば、ウィルソン国王の王としての資質を問う人間が現れるはずだ。
しかしオリヴィアの目にはウィルソン国王は国民にも臣下にも慕われていて、誰も彼の資質に疑問を抱いているようには見えない。
(と言うことは、過去にこのレベルの「うっかり」はなかったはずだわ)
息子や娘からと、外部の人間からでは見方が変わるだろう。エドワールたちはウィルソンの「うっかり」に振り回されて育って来たのか、今回のことについて深く考えるのをやめてしまっている。
「オリヴィア様、次は上に行きましょう」
ユージーナに声をかけられて、オリヴィアは頷いて彼女のあとを追った。
イーノックとユージーナが、次は二階のどこを調べるかと話しながら階段を上っている。
「オリヴィア様、どうかなさったんですか?」
オリヴィアについて一緒にまわっているテイラーが不思議そうな顔をした。
「ちょっと……気になることがあるだけよ」
「そうですか。でも、考え事に集中しすぎて、階段を踏み外さないでくださいね」
「ええ」
考え事に集中しすぎると周りが見えなくなるオリヴィアの性格をよく知っているテイラーは、心配そうな顔で、オリヴィアの数歩うしろをついてくる。
(疑問点は三つ。どうしてウィルソン陛下はこのタイミングで選定の剣を紛失したのか。それを外部のわたしたちにも話したのか。そして……どうして、エドワール殿下とユージーナ王女に探させているのか……。これではまるで……)
そこまで考えて、オリヴィアはぴたりと足を止めた。
ある答えが脳裏をよぎった瞬間、愕然としてしまったからだ。
いつも穏やかで優しいウィルソンが考え付くことではない。そう思うけれど――この答えが、一番しっくりくる。
「オリヴィア様?」
「あ、ええ、なんでもないのよ」
突然足を止めたオリヴィアに怪訝そうな顔をしたテイラーに微笑んで、オリヴィアは再び足を動かした。
(結論は急ぐべきじゃないわ……でも、サイラス殿下に相談が必要ね)
行きついた答えが正であるならば、オリヴィアとサイラスは、とんでもなく厄介な問題に巻き込まれていることになる。
(今度ばかりはこの予感が勘違いであってほしいものだわ……)
しかし、昔から、オリヴィアは嫌な予感ほどよく当たる。
オリヴィアは仲睦まじく話しているユージーナとイーノックを見上げて、何とも言えない気持ちになった。
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本日!!「王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います」の2巻が発売されました!!
皆さまぜひ、硝音あや先生の素敵すぎるイラストを堪能してください!
(どのイラストも素敵すぎますが、何気にわたしが気に入っているのはP175ページの例のあの人の「むっ」としている顔ですw)
そして、巻末に2本書下ろしを書かせていただきました。
1本はオリヴィアの兄ロナウドのショートストーリー。
もう1本はオリヴィア×サイラスのショートストーリーです。こちらは、ちょっぴりイチャイチャさせてみました。
どうぞよろしくお願いいたします!
それから、新連載も開始しました!
【記憶喪失になった婚約者は、どうやらわたしが好きらしい】
https://book1.adouzi.eu.org/n2251hs/
こちらもどうぞよろしくお願いいたします!











