表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います  作者: 狭山ひびき
第四話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/122

カルツォル国の第五王子 1

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 お菓子の箱を持ってどこかへ消えたティアナは、テイラーが入れた紅茶がすっかり冷めた頃になって戻ってきた。

 ドレッサーの前でテイラーに髪を結ってもらっていたオリヴィアは、鏡に映るティアナの様子を確かめる。


「どこに行っていたの?」


 何食わぬ顔でソファに座って、冷めた紅茶を飲んでお菓子を食べはじめたティアナに訊ねてみると、予想外の答えが返ってきた。


「アラン殿下のところです」

「アラン殿下の?」


 オリヴィアはぱちくりと目をしばたたいた。


(アラン殿下にティアナのことを知られても困るわけじゃないけど……どうしてわざわざアラン殿下? もしかして、ティアナってまだアラン殿下のことが好きなのかしら?)


 アランの婚約者の座がほしくて、オリヴィアに嫌がらせをしていた時期もあったティアナだ。それだけ好きだった相手のことを、すぐに忘れられなくても仕方がない。


(どうしましょう。ティアナは身分が剥奪されてしまったし、罪に問われてしまったから、アラン殿下のお相手としては厳しいわ……)


 父親のバンジャマンの罪は重いが、ティアナの場合それほど重い罪ではないので、あと一年ほどもあれば労役からも解放される。

 だが、そのあとでティアナが貴族社会へ戻るのは難しい。親戚が彼女を引き取れば望みはあるが、ティアナが仲良くしていた親戚と言えば、従兄であるロマンくらいだ。彼はバンジャマンの弟の男爵の子で、城で兵士として働いている。

 けれども、ロマンは何かとティアナの面倒を見ていたが、バンジャマンと弟の仲は険悪だったので、男爵夫妻がティアナを引き取るとは思えない。万が一引き取られたとしても、元罪人で男爵家の養女という立場では、アランの相手に上ることはないだろう。


(前途多難ね……)


 けれど、なんとなくだが、ティアナならばそんな逆境も全部跳ねのけてしまうような気もするから不思議だった。


「わたくしは応援しかできないけど、がんばってねフラン」

「は? 突然何なの? 宝石選びのこと? ちょっと待ってよ食べ終わるから」


 ティアナは急いで口の中にお菓子を詰め込むと、クローゼットの中の宝石が収められている箱を持って来た。

 今日オリヴィアが身に着ける宝石を選びたいとティアナが言い出してテイラーが許可を出したので、今日のアクセサリー選びはティアナの担当だ。


(宝石のことじゃなかったんだけど……楽しそうだし、アラン殿下のことはわたしに応援されても困るかしらね? 心の中でこっそり応援することにしましょう)


 オリヴィアが頓珍漢な勘違いをしつつティアナを見つめていると、いくつかのアクセサリーを取り出したティアナがうーんと首をひねる。


「ドレスがシルバーだから何色でもあうのよね。サファイアやダイアモンドも捨てがたいけど……ルビーがいいわ。この大きいやつ。目立つから!」


 はい、とティアナが差し出してきたルビーを見て、オリヴィアはハッとした。


「ごめんなさい、伝え忘れていたわ。あのね、カルツォル国では赤は高貴な色なの。今日はアベラルド殿下の歓迎会でしょ? 殿下はおそらく赤をまとわれるでしょうし、殿下と並び立つような赤は失礼にあたるから、避けた方がいいと思うのよね」

「え? オリヴィア様っていちいちそんなことを考えるの?」

「これは重要なことなのよ。おもてなしする方を不快にしてはいけないわ」

「そんなことを考える人間なんて少ないと思うわよ。今夜のパーティーだって、きっと赤を身につけてくる人もいるでしょう?」

「そうかもしれないけど……サイラス様のパートナーとして出席する以上、気を配るべきだわ」


 ティアナはルビーを片づけながらあきれ顔をした。


「はー……オリヴィア様って、ほんと真面目なんだから。じゃあ、これ。サファイアね。サイラス殿下の瞳の色と一緒だし、これならいいでしょ?」

「ではリボンも青に揃えてもいいかもしれませんね」


 オリヴィアの髪を結っていたテイラーが、ティアナが差し出したサファイアを確認して、紫のリボンから青のリボンへ変更した。

 テイラーが丁寧にオリヴィアのプラチナブロンドを編み込んでいく。

 着飾るオリヴィアが羨ましくなったのか、使わなくなった紫のリボンをもてあそびながらティアナが言った。


「いいなあ、パーティー」


 ティアナはパーティーが大好きだったから行きたいのだろう。


「連れて行ってあげられたらいいんだけど、今日のパーティーは招待客が限られているから、侍女をこっそり連れていくことはできないのよ。それに、変装していても、誰かにフランの正体に気づかれるかもしれないし」

「わかってるわよ。侯爵家以上しか招待されない小規模パーティーなんでしょ」

「ええ。陛下はカルツォル国と自国の貴族たちのつながりを持たせたくないのだと思うわ」

「そんな警戒するもの?」

「まあ、過去にもいろいろあったし……、カルツォル国の現王陛下は、お年を召されて昔ほどではないとはいえ、好戦的な方でしょう? アベラルド殿下がどのような方なのかは知らないけど、用心するに越したことはないの」

「ふぅん」


 ティアナはカルツォル国の話しには興味がないのか、リボンを置くと、クローゼットから紺色のパンプスを持って来る。


「はい。靴はこれ。あと、グローブの上からリボンでも巻けば? そのドレス、キラキラしていてきれいだけど、色的にぼやけるのよね」

「そうね……テイラー?」

「いいかもしれませんね。こちらも青で揃えましょう。リボンは……」

「このベロア生地のやつがいいわ」

「光沢が美しいですね」


 ティアナがリボンを差し出すと、テイラーが頷いて受け取る。


「……あの方、自分が装うときは信じられないくらいに派手な格好をするんですけど、センス自体はあまり悪くないんですよね。不思議です」


 テイラーがぽそりとティアナに聞こえない音量でつぶやいたので、オリヴィアは苦笑した。

 ティアナが伯爵令嬢だったころ、あちこちのパーティーで恐ろしく派手な格好をしたティアナを目撃した。あのときは何て奇抜なのだろうと思ったものだが、テイラーが言う通り、根底にあるセンスはオリヴィアよりも何倍も優れている。


(ティアナは目立ちたがり屋だから、目立つこと重視で考えるんでしょうね)


 そして、自分が装わない場合は、その欲求が抑えられるから、相手に何が似合うのかを考えてものを選ぶ。

 テイラーもそれがわかったから、ティアナにオリヴィアが身に着ける靴や宝石を選ぶ許可を出しているのだ。

 シルバーのグローブの上から手首にリボンを巻き付け、ほどけないように丁寧に結ぶと、テイラーがオリヴィアを立ち上がらせる。

 テイラーはオリヴィアの周りを一周して笑った。


「はい、できました! 今日のオリヴィア様も完璧です!」

「ありがとう、テイラー。フランもね」

「別に。選ぶの楽しいから。……サイラス殿下がいるから大丈夫だとは思うけど、気を付けて行ってきなさいよね」

「そうね、アベラルド殿下には用心しないとね」

「…………そう言う意味じゃないんだけど」


 ティアナがぽそりとつぶやいたが、声が小さすぎてオリヴィアの耳には届かない。

 ややしてサイラスが迎えに来て、オリヴィアは彼とともにパーティー会場である大広間へ向かった。

 オリヴィアの両親も兄ロナウドも招待されているが、家族はまだ到着していないようだ。

 大広間に入るとバルコニーの近くにアランがいて、見るからに不愉快そうな顔をしていた。


「兄上、レネーンを押し付けられたからね」

「……なるほど」


 レネーンの姿は見えないが、グロリアは可愛いレネーンをパートナーなしでパーティーに出席させることをよしとしなかったようだ。

 サイラスがオリヴィアとの出席を早々に決めてしまったので、アランにお鉢が回ってきたのだろう。


 サイラスとともにアランに近づくと、彼は白ワインを一気に煽ってグラスを置いた。





ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


昨日1/15、TOブックス(Celicaノベルス)から、

「すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く」①巻が発売しました(#^^#)

追加の番外編エピソードを2本収録。

TOブックス様の公式サイト限定の特典SSもあります!

イラストはすずむし先生が描いてくださいました!

②巻も準備中☆コミカライズ企画も進行中です!

どうぞよろしくお願いいたします!

挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ