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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第三章 託す希望と託された未来

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第十四話 『視察』 お食事タイム

読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ



「今日はハンバーグの日。ハンバーグにお好みのソースを付けて食べる。そのまま食べるもよし、ハンバーグをパンにサンドしてもよし、ハンバーグでハンバーグをサンドしてもよし。とにかくハンバーグを堪能すること」


 そんなハンバーグの食べ方を長文で語るのは意外なことにメティだ。君は単語主義者じゃなかったのか? と思わずツッコミたくなるほどよくしゃべる。

 しかし誰もツッコまない。むしろよく分かると言わんばかりに頷いている子が大半を占めている。さすがお肉ジャスティスたち。

 メティも眠たげな雰囲気の口調の割りに声には熱気が宿っている。何言っているか分からないと思うが、普段単語しかしゃべらないメティが長文を語っている異常な光景で察していただきたい。


「ハ、ハンバーグというのですね? 美味しそうですわ、ね…?」


 席についてハンバーグについて説明(?)を受けたシステリナ王女が困惑した声で返す。

 うちの子たちがすまない。



 現在、第一食肉食堂の一角に座り、昼ごはんをいただくところだ。

 先ほどまで視察を兼ねた見学をしていたら、ハンバーグの臭いに腹が耐え切れなかったのでシステリナ王女一行にためしで食事に誘ってみたところ、従者の反応は芳しくなかったがシステリナ王女が物は試しです。と言ってくれたためこうして空いている席を確保したのだ。

 だが、後から気づいたけれど、ほぼ肉料理しか出さない第一食肉食堂は失敗だったかもしれない、せめてその他も出す第六辺りに行けばよかったかと席についてから後悔したが時すでに遅し。まあ、……たまにはいいだろう。と無理矢理自分に言い聞かせて心を落ち着かせる。

 とりあえず『空間(アイテ)収納(ムボッ)理術(クス)』から柔らかい白パンだけは取り出し、受け渡し担当の子にシステリナ王女一向に渡すようにと言って預けておこう。



 食事を受け取りに窓口まで行くと、ちょうどメティが前に居たので、彼女に見本役を頼みシステリナ王女一行はその様子を間近で見て()真似(まね)で注文。

 無事ハンバーグとパンを受け取って来たところだ。

 ちなみにこの世界にも酵母はあったのでパンはふわふわの中身が白いロールパンである。


「一緒、いい?」


 メティは珍しく一人だったようでオレたちと一緒に食べていいか訊いてきた。

 システリナ王女一行がいるためどうしたものかと考えていると以外にもシステリナ王女が「共に食事をしましょう」と了承し、こうして一緒に食事をすることになった。

 彼女的には「国民の直接な意見など聞いてみたい」とのことで、一般国民のメティがこの食堂や食事、現在の生活について聞き取り調査をしている。


 すると、ハンバーグについて訊かれたメティが眼に炎を灯し熱く語り始めたというわけだ。

 メティがこんなにハンバーグが好きだとは知らなかった。


「ん、ハンバーグはソースで決まる。オススメはハンバーグにハヤト様特製トマトソースを垂らし、ハンバーグでサンドして食べること。……すごく贅沢。これ以上の贅沢は、無い」


 本当にこの子はあのメティなのだろうか?

 ハンバーグをハンバーグでサンドする?

 オレは彼女のセリフに困惑した。


「あ、ありがとうございますわ。ではそれも少しいただいて、せっかくですから他のも、このハンバーガーというパンに挟むタイプのも食べたいですわ」

「白いパンもハヤト様特製。ハンバーガーもとても贅沢」


 テーブルにはハンバーグのオススメな食べ方の絵が張られていて、それとメティのオススメを参考にシステリナ王女は何種類かの食べ方に挑戦するらしい。

 さらにテーブルにはオニオン、ガーリック、トマトなどの七種類のソースが置いてあり、好みでハンバーグに垂らして食べる形式だ。


「お、美味しいですわ…。肉なのにまったくと言っていいほど硬さが無く、ジューシーでやわらかく、そしてソースが抜群に合っていますわ」


 トマトソースのハンバーグを一口食べるとシステリナ王女がとても大きな衝撃を受けたかのように呟いた。

 隣で口いっぱいに頬張ったメティが無言でうんうん頷いている。

 いつの間にかずいぶん仲良くなったね君たち。


 まあ、ハンバーグはとても人気の料理だ。これを再現するのに結構がんばったのでこうして直接に褒められるとちょっとうれしくなる。

 システリナ王女の従者の方々も気に入ってくれたみたいだ。おかわりを勧めてみたらスッと立ち上がって窓口へ向かっていった。



 食事も終わり、メティは仕事に戻っていったので、こちらも視察を再開する。


「次はどこに行きますの?」

「西側に行こうかと思います。職人街西地区は“雑貨工房通り”と呼ばれており、サンクチュアリ唯一の商業地区がある区画ですね。規模はあまり大きくは無いですが」

「商業地区…、ですか?」


 システリナ王女が疑問視する気持ちは理解できる。サンクチュアリにはまだ通貨がないからね。


「まあ、行けば分かりますよ。商業、と言ってもいいのかは分かりませんが」


 そう言って。システリナ王女一行を連れて西地区へ移動すると大きい建物が並んでいる区画にたどり着く。

 建物は量産型一軒家のざっと五倍ほどの広さを持ちその前には服の像や椅子とテーブルの像、櫛やコップの像や鍬とジョウロの像などが立っている。

 その像がそれぞれ建物が何の店かを表しているわけだ。看板代わりだね。

 通りを歩くとシステリナ王女一行が興味深そうに建物を見る。


「ここが商業地区ですか。露店などは無いのですね」

「そうですね、基本的に建物内でやり取りします。通貨がまだ無いので露店はもう少しあとですね」


 後日ハンミリア商会が移転することになるので、それに合わせて少しずつ通貨を広めていこうと思っている。まあ、とりあえずそれに関しては今はいいだろう。


「では、まず衣服の専門店に行ってみましょう」


 服の像が立つ店を見ると、システリナ王女が頷いたので、連れて服屋に入る。


「いらっしゃいませですわ~」


 中に入ると、早速歓迎の言葉が聞こえてきた。


「こんにちはエリー。少しお邪魔させてもらうね」

「あ、ハヤト様でした。いらっしゃいませですわ。お邪魔なんて少しも思いません、気が済むまで見ていってください!」


 出迎えてくれたのは元シハ王国貴族令嬢のエリルゥイスだ。みんなからは親しみを持ってエリーと呼ばれている。

 少しドジッ娘というか、他の孤児のパワフルさに着いていけてない印象がある子だ。孤児の中でもルミ、メティと合わせて最年長の一人で、孤児の中でも高い教養を持っているため営業地区の仕事を任せている。将来的には営業地区そのものを任せるつもりだ。


「あ、ハヤト様、そちらはお客様ですの?」

「ああ、紹介しよう。フォルエン王国第三王女のシステリナ殿下だ。後ろに控えるのはその従者」


 オレの言葉を聴いたエリーがピシッと音がする勢いで固まった。

 そして、まるでさびたブリキのようにギギギとこちらを見つめ震えた声で訊いてくる。


「お…、王女様一行ですか…?」

「緊張しなくてもいいよ。少し視察に寄らせてもらっただけだしね。いつも通りの対応で大丈夫だよ」


 視察だからね。いつも通りの光景が見たいと伝える。しかしエリーは首をぶんぶん振った。

 首から下は緊張でガチガチだ。

 うーむ。元貴族令嬢なために外国の王女様の相手はハードルが高いらしい。

 少し酷だったかもしれない。エリーが高い教養を持ち優秀だったのでつい油断してしまった。エリーには後で謝っておこう。

 とりあえず、服屋にこれ以上いるとエリーの心的負担が増すためそうそうに切り上げ、隣の櫛とコップの像が立つ雑貨店に移動することにした。



誤字報告ありがとうございます! 助かります(>_<)

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― 新着の感想 ―
[一言] こういうお話でハンバーグはデフォですな。 ただ現状余裕があるように見えても食糧難の様相があるここに、柔い、あまり噛まなくてもいい食品を提供してしまっていいのかな、と思わなくもない。
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