第二十一話 職業覚醒の発生条件
ハヤトです。
新婚ほやほやでラーナと今すぐイチャつきたいと、仕事を早めに終わらせて帰宅したら、何故だか女の子の秘密のサークルが出来ていてすごく帰りづらい状況になっていました。
仕方ないのでバリバリ仕事に励んでいたら、今まで謎だった【大理術賢者・救導属】が発動し、その発動条件がなんとなくつかめたかもしれません。
早くラーナとイチャつきたいです。
さて、それは置いておき、【大理術賢者・救導属】が発動をした。
対象は9歳児の三人。調理班の子で、いつも朝と夕方欠かさず食事の手伝いをしてくれるとても良い子たちだ。
みんな解体するのは今回で五回目だと言っていた。この実験に付き合ってくれた子たちの中では一番回数が多い。
覚醒したのは【解体見習い】が一人【調理見習い】が二人。
【解体見習い】の子は少し残念かとも思ったが、職業に覚醒すること自体が稀で、孤児にとっては人生が一発逆転、栄光の道へ至る奇跡だ。
宝くじに当選するような物なので関係なくそれはもう喜んでいた。
この結果である確信を得た。
おそらくだが経験値が関係していると思われる。
ずっと考えていたことがあった。
なんでオレはチートを得た記憶も無いのにこんなに職業が手に入りやすいのか?
この世界に来たときの記憶は曖昧だ。気が付いたら居たといった表現が正しい。
神様に出会った記憶も無ければ、チート能力を得た記憶も無い。
ログには特殊条件を満たして上級職業が解禁されたとは乗っていたが、それで職業が手に入りやすくなるという理由にはならない。
なら、どうして、何故簡単に覚醒するのか。
それが最近になってなんとなくこうじゃないかという予想が立てられるようになった。
あの時、オレが始めて職業に覚醒したとき、魔物を大量撃破した。
魔物を倒して得られるものと言えば経験値。
ここからは想像だが、おそらく魔物を倒した経験値というのは身体に溜まる。そして職業を覚醒できるきっかけがあると、溜まった経験値を消費して職業に覚醒するのだと思う。
その証拠に、ここ最近オレは職業に覚醒する機会が減った。
単に手に入る職業が出尽くしたと言うのもあるかもしれないが、おそらく蓄積していた経験値が少なくなった結果、職業に覚醒しなくなったのだとオレは思っている。
たぶん伝説職業【■■槍楯勇者・聖■属】や【古閃大英雄・滅竜属】に無理矢理覚醒したとき、ワイバーンやスタンピードで稼いでいた蓄積された経験値が全部持っていかれたのだと思う。
虫食い状態でちゃんと読めないのも、【勇者】の能力が中途半端に弱いのも、たぶん必要経験値が足りないのに無理矢理覚醒したせいだとオレは思っている。
この前虫食い文字が変化して【古閃大英雄・滅竜属】に成ったとき、それっぽいログが流れていたしね。
そのことを考えると、彼女たちは魔物を解体し、少量だが魔物から経験値を得たのだと思う。
上級職業と初級職ではたぶん覚醒に必要な経験値量も異なる。
弱い魔物数匹倒せば、初級職に覚醒できるだけの経験値を獲得できるのかもしれない。
そこで、覚醒に必要なきっかけを作ってあげれば職業に覚醒できるのだろう。
きっかけ作りは通常かなり大変なのだと思われる。ログを見ると『条件を満たしたため~』という言葉がわりと目立つ。通常、何かしらの条件を満たすことで職業に覚醒するという証拠だろう。
そのきっかけ作りが【大理術賢者・救導属】の力で出来るのだと、今回のことでほぼ確信した。
後は発動条件と発動タイミングさえ熟知すれば、今後任意の職業に覚醒させることも夢ではなくなるだろう。
ラーナに報告したらまた驚かせてしまうかもしれないな、ちょっとだけ楽しみだ。
問題はラーナとルミの時だ。
あの二人だけ今言った条件に合わない。
それも、順次調べて行こう。
なんにしてもまず解体だ。
解体で経験値を稼がないと職業に覚醒できない。
明日からも忙しくなりそうだ。
△
「お帰りなさいハヤト様、今日は遅かったですね?」
「ただいまラーナ。少し職業のことで実験したいことがありまして、遅くなってしまいました。すみません」
「いいえ。ハヤト様はみんなの役に立つよう、みんなを守れるよう様々な事をがんばられています。少し寂しかっただけですわ、謝らないでください」
少し肩を落として寂しげにラーナが言う。
なるほど、今日もたくさんの子どもたちを屋敷に集めていたのは寂しかったせいなのかもしれない。
ならば、その寂しさを埋めてあげるのは夫である自分の役目だ。
「ラーナ…」
「あ…」
ゆっくりラーナに近づきそっといつものように抱きしめる。
ラーナがオレの胸に頭を預けてきた。
最近、オレも抱きしめるのが癖になってきた。
なんと言うか、ラーナがちょうど良いサイズで腕の中にすっぽり納まるのだ。
石鹸も無いのに良い臭いがするし、この後何十時間でも抱きしめ続けたい欲求に駆られてしまう。
しばらく抱きしめあっていたが、どちらとなく離れる。
今日のラーナの格好は白を基調としたドレス姿だった。
スカートに青色の布地が少しだけ入っていて清らかさを演出している。
輝く金髪には昨日ウエディングドレスを着ていたときに着けていた白いバラを小型化してたくさん集めて束ねた感じの髪飾りを着けていてそれがいっそうラーナの魅力を引き出している。
作ったのはオレだけれど、想像以上にラーナに似合っていた。
結婚したばかりなためか、いつも以上にラーナが魅力的に見える。
「綺麗だ……」
「ふふ、ありがとうございます」
思わず、本当に思わず口から出てしまった呟きにラーナがはにかんだ。
少し照れくさい。
しかし、ラーナが美しく綺麗なのは事実なので否定はしない。するつもりも無い。
「身体は、平気ですか?」
「ん、はい。ハヤト様に魔法で直してもらいましたし、少しだけ気だるい感じが残っていますが痛くはありません」
心配していたが、ラーナの体調は問題なさそうで安心する。
なんとなく見つめあい、なんとなく照れあう。見詰め合っているだけなのに何故か心地よい雰囲気が場を支配する。
これが恋か。
地球に居た頃は自分が結婚するとか、こんな気持ちになるなんて考えもしなかった。
ラーナと離れるなんて考えたくもなくなってしまった。
もう一生ラーナの側に居よう。
今後もラーナに好きでいてもらえるよう努力しようと心に誓った。
今日はラーナに職業覚醒の法則(仮)を報告したり、昨日使えるようになった【王】の能力を相談したり、今後の方針を相談したりと事務的なやり取りからプライベートな話し合いまで話すことがたくさんあったのだけれど、…今日はもういいや。
この雰囲気を壊すなんて事はオレには出来ない。もう、このまま部屋に連れてこう。
ラーナのあまりの可憐さにクラッとして、そう心に決めたとき、後ろからガタンガタンと何かが崩れる音が…、振り返ってみると今日屋敷に招かれていたと思われる年長組みの子どもたちの姿が合った。どうやら覗いていたらしい。
「は、はわ! ルミたち見つかってしまいました!」
「エリー、倒れるから」
「ご、ごめんなさいですわ」
君たちまだ帰っていなかったのね。
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