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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第二章 王国の産声

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第十一話 会談



 この前ラーナは言っていた。

 ―――『【王族】のアーツ『民兵覚醒』は未覚醒者を一時的に職業覚醒者に出来るのです』と。


 王太子であるラゴウ元帥はおそらくこのアーツが使えるのだと思う。

 確かにこれで兵たちを職業覚醒者に出来れば被害をぐっと減らすことが出来るだろう。


 しかし強力なアーツのため、その対価に使用者の寿命を削る。

 ―――『私のお兄様はたった一度の使用で美しかった金髪が白髪になってしまいました』とラーナは言っていた。

 それ故に多用は出来ず、数回の使用で使用者の命を燃やし尽くしてしまう。


 だが、その対価を克服出来る手がある。これもかつてラーナが話してくれた。

 ―――『たしか伝承では、超越者は肉体の老化を防ぎ全盛期の身体を維持する能力を持ち長寿になると言われています』と。

 つまり、超越者に至った【王族】は対価を大幅に緩和できる。


 ラゴウ元帥の話しぶりからして、おそらく狙いはこれだろう。

 【民兵】は基本職なため能力値上昇の幅は大きいし、覚醒している間はレベルが上がる。


 それは未覚醒者に戻ったときも少しだけステータスが引き継がれるらしく、普通の兵士が少し強い兵士に成れるらしい。

 これを繰り返せば強力で強い兵士が出来上がるだろう。


「我がフォルエン王国の記録によれば、かつて超越者に至った【王族】は『民兵覚醒』を通算十二回発動したが、それでも寿命は尽きなかったとある」


 オレが話に付いてきていると見定めラゴウ元帥が話を進める。

 やはり、思った通りの狙いのようだ。

 しかし、問題もある。ラゴウ元帥は【王族】以外の職業を持っているのか?


「我は四の職業を持つ。超越者殿が依頼を受けるなら公開しよう」


 なるほど。話は分かった。


「条件をいくつか飲むなら受けてもいい」

「超越者殿の意思を尊重しよう」

「それでは、まず第一に今回のようなスタンピードを許可無く押しつける行為はやめてもらおう。第二に城塞都市サンクチュアリに住む住民への危害をできうる限り禁止する。第三にオレが持つ職業を秘匿する」


 真っ直ぐ見つめてくるラゴウ元帥に向かいオレは三つの条件を提示する。

 特に第二条件は絶対に飲んで貰わなければいけない。

 第一条件は最悪オレが嫌な思いするだけなのでさほど問題ないが子どもたちに危害を出すというのなら容赦はしない。


 第三条件は保険だ。オレの能力を知った第三者が横から口出ししてくるのを防ぐ意味合いが強い。

 特に技師系の上級職業なんてこの世界でどれだけ価値があるか想像に難くないしね。

 まあ、超越者とバレているみたいなので今更かもしれない、なので保険だ。


「全て飲もう。我ラゴウ・エルヴァナエナ・フォルエンが確約する。スタンピードにて許可無く超越者殿に頼る事はせぬ。城塞都市サンクチュアリへの危害を禁ずる。超越者殿の職業を他言する事を禁ずる。―――イガス将軍よ」

「はっ。書記官をお呼びしましょう」


 ラゴウ元帥は驚くほどあっさり条件を飲んだ。何というか、オレが想像していた王族と全然違う。ラゴウ元帥は下手な交渉ごとより実直を好むようだ。

 イガス将軍がドアを出ると外で警備していた兵に書記官を呼んでくるように指示して、またラゴウ元帥の斜め後ろに戻る。


「報酬は弾もう。成功し、我が超越者に至った暁には、何でも好きな物を望むが良い」

「……了解した」

「スタンピードに対抗する手札はもうすぐ揃う。イガス将軍よ、我が超越者に至までの期間、なんとしてもスタンピードを食い止めよ。指揮権はそなたに譲渡する」

「はっ、元帥殿が前線に出ている隙に前回のような国内に攻め込まれる事態が無いよう身命を惜しまない所存じゃ」


 ラゴウ元帥の言葉にイガス将軍は反論せずフォルエン軍式の礼を執る。

 ラゴウ元帥はスタンピードのさなか前線に出るつもりらしい。確かにレベル上げは魔物を倒す方が効率は良い。


 しかし、一国の王太子がスタンピードの前線に出るとは肝が据わっている。しかも今初めて会った人物に命を預けると言っているのだからその覚悟は相当なものだろう。

 スタンピードを押しつけてきた件についてはまだ許せていないが、その覚悟と気概は認めざるを得ない。少しくらい手伝ってもいいだろう。


 そこへ書記官と思われる男たちが入室してきて細かい話し合いが行われた。

 第一条件は連絡体制をどう執るのか少々揉めたが、通常日はオレが三日に一回フォルエン要塞に顔を出し、スタンピードが衝突する際はラゴウ元帥の元に出張るということで合意がされた。フォルエン軍と子どもたちを逢わせるのは抵抗があるからね。


 第三条件に関しては物の出所に関しても秘匿するという条約なされた。

 今後オレが作製した物がフォルエン王国に流れないとも言えないのでその対処の一環だ。

 逆に言えばサンクチュアリから流れてくる物の作成者はオレだという意味にもなるが、子どもたちを守るのがオレの目的なので問題ない。


 報酬については前払いでオレの希望をいくつか上げておいた。主に生活用品や衣類、野菜果物を初めとした食料などだ。とりあえず成功報酬は保留にした。ラゴウ元帥の采配で望む物とだけ書かれている。

 

 一通り摺り合わせが済んだので条約を交わして書状を受け取った。

 どうやら彼らはオレのことを一個人では無く城砦都市サンクチュアリ代表と考えているらしい。

 この条約はラゴウ元帥と交わした物というよりフォルエン王国と交わした条約という位置づけになるようだ。

 日本に居た頃は普通のクラフトマンだったオレが国同士の条約を結ぶ立場に居ることになるとは、全然実感が沸かない。


 そして謝礼品の話に移る。目録を貰ったが、残念ながらこの世界の物の名前がよく分からなかったので実物を見ることになった。

 職業のおかげで文字を読むことは出来るんだけどね。

 一度実物を見ないと文字から実物がイメージできないみたいなんだよ。


「ラゴウ元帥、また三日後お会いしよう」

「ハヤト超越者殿、次に会えるのを楽しみにしている」


 その言葉をもって、会談は終了した。

 依頼内容はまた後日に話す事になる。


 部屋を出るイガス将軍の後に続きラゴウ元帥の居る最上階の一室から退室する。

 物品が置かれているのは一階の倉庫らしく、謝礼品と依頼の前払いを受け取るためにそこへ向かった。


 そこでオレは驚愕した。

 フォルエン要塞から一度外に出てフォルエン王国内に入ると、そこは見渡す限り草木が覆い茂る植物の楽園があった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 後に強化民兵が攻めて来る未来しか見えない。 サンクチュアリの知り合いがこぞって攻めて来るんじゃないの? 「お兄ちゃん!?」 とか 「隣のおじさん!?」 とか。
[気になる点] はあ?超越者になりたかったら、前線で戦え! レベルを上げろ! じゃねーのかよ。
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