第三十二話 ”国滅の厄災”はまだ終わってはいない
今日も元気に頑張ります!
それでは今日の投稿です。どうぞ!
「逃れたのは百も居なかったか」
スタンピード第五波、第六波を水攻め作戦と崖崩壊により討滅したが、僅かに生き残りがいたのでそれを殲滅する。
スタンピードを討滅したことによりとんでもなくレベルが上がってしまったので今のオレにとって百程度の数、逃がさず屠ることが可能だ。相手は手負いだしね。
それが終わると回収作業だ。
『空間収納理術』に今回使った“水”、崖崩しで使った“岩”、そして“魔物”を詰め込んでいく。
今回【空間運搬理術師】もレベル34まで上がり、第六の理術まで獲得したのだが、その中に面白いものがいくつかあった。
『収納浄化理術』や『破損復元理術』という、収納しているだけで汚れが浄化されて綺麗になり、バラバラに破けていても復元して元に戻るという便利な理術だ。
これで血と土砂で染まった汚水を浄化し、潰れて使い物にならなくなった魔物素材を復元できる。
でも、水の方は浄化されていたとしても生活水としては使いたくないけどね。
しかし、三十万の魔物素材が丸々手に入ったのは大きい。
使えそうな素材が大量だ。また子どもたちが解体量に悲鳴を上げてしまう姿が目に浮かんだ。
うん、これは小出しにして少しずつやろう。幸い『収納浄化理術』と『破損復元理術』の合わせ技で収納中は腐ったり劣化したりする心配はしなくて済みそうだしね。
しかし、三十万の魔物と湖のほぼ全体に渡る岩水の収納はかなり時間が掛かった。
ただ作業しているのも何なのでどれだけ戦果があったのかステータスを開きながら作業する。
まず、特別職業【勇者】と特別職業【賢者】を獲得したらしい。これは【英雄】と同格の職業だろう。特別職業の【英雄】は上位職業よりもおそらく格上のジョブだ。アーツの効果は広範囲に影響を及ぼし、ステータス上昇値は他のどの職業よりも高い。そしてその分レベルアップは遅い。
【勇者】と【賢者】も非常に強力な職業のようだ。レベルが上がればスタンピードを打ち破る手助けになる。
カンストしたのは【土魔法士】【水魔法士】【魔流躁士】の魔法職。元々高レベルだったが、今回の戦闘で軒並みレベルが急上昇した。
続いて【隠密】、これは今回大活躍だった。常時発動していたしね。十万以上の目から隠れていたためかどんどんレベルが上がっていった。
そして【土木技師】、戦闘職ではないが納得のジョブである。湖を大改造したり、溜め池を大量に作ったため急激にレベルが上昇した。
この五つがカンストした職業だ。
予想通り、進化先が表示されている。
《【土魔法士】が成長限界に達しました》
《成長限界を突破したため【土理術師】へ上位進化が可能です》
《上位進化しますか? Yes/No》
《【水魔法士】が成長限界に達しました》
《成長限界を突破したため【水理術師】へ上位進化が可能です》
《上位進化しますか? Yes/No》
《【魔流躁士】が成長限界に達しました》
《成長限界を突破したため【魔流躁術師】へ上位進化が可能です》
《上位進化しますか? Yes/No》
《【隠密】が成長限界に達しました》
《成長限界を突破したため【隠蔽術師】へ上位進化が可能です》
《上位進化しますか? Yes/No》
《【土木技師】が成長限界に達しました》
《特殊条件【大工】【穴掘士】【石切技師】【環境整地技師】【環境破壊工】を結合させることで特殊職業【土木大匠理術師・建築属】へ上位進化が可能です》
《上位進化しますか? Yes/No》
当然全てYesを選択する。
《Yesが選択されました【水理術師】に位階進化しました》
《Yesが選択されました【土理術師】に位階進化しました》
《Yesが選択されました【魔流躁術師】に位階進化しました》
《Yesが選択されました【隠蔽術師】に位階進化しました》
《Yesが選択されました【土木大匠理術師・建築属】に位階進化しました》
ステータスの上昇がすごい。みるみる数値が伸びていく、特にMPの上がりようが尋常では無かった。おそらく魔法職が三つも進化したためだろう。最大MPは五万を超えたところで勢いが止まった。
進化したばかりの職業を調べていく。
今回属性を持っているのは元【土木技師】の進化形【土木大匠理術師・建築属】だけのようだ。
これはその名の通り建築関係に特化した属性なのだろう。
他の職業も含めてあとで追々調べていこうと思う。
片付けが思ったより早く終わったからね。
湖は水も岩も全部収納し終わって元通りのほぼ元のすり鉢状の形に戻っていた。
工事で作った切り立った崖も全部崩してしまったからね。
前より湖が広がってしまったが、また手を入れて今後は対スタンピード用の要塞として活用していこうと思う。
今回の作戦を通じてこれがいかにスタンピードに有効か確認出来た。
まだ広範囲に広がったスタンピードをスマートに誘い込む方法など問題点は多いが、希望が持てたのは大きい。
今度はスタンピード、パターン“国滅の厄災”第七波がやってくる。
次に備えて―――『長距離探知』に反応あり。
「この反応、まさか・・・」
ドッと冷や汗が流れた、残党の最後の確認をしようと『長距離探知』を発動すると、遠くからこちらに向かってくる真っ赤な敵性反応が多数。
しかも数は加速度的に増えている。
確認するため『三歩走術』を使って急いで移動。
そこで見た物は、先の三十万の魔物を優に超すスタンピードだった。
「どういうことだ。こんな近くに、間隔が一日もないじゃないか」
スタンピードは深夜には元シハ王国東、“休景の龍湖”に到着しそうな勢いで侵攻してきている。
【鑑定士】によればその数、約五十万。
しかも途中明らかに他のスタンピードと合流した形跡がある。間隔は近いが五十万という纏まった数ではなく、段階的な十五万、十七万、十八万の三つが連なって侵攻してきているようだ。
つまりこれは、スタンピード、パターン“国滅の厄災”第七波、第八波、第九波の合流したもの。
「なんで、こんなに早く、原因は?」
――『スタンピード第五波はシハ王国の北から侵攻して――』そうだ。
おかしい、何故このスタンピードは“休景の龍湖”を目指している?
“休景の龍湖”から見てこのスタンピードの来た方角は、北。
第五波と第六波が現れた方角は、北西。
スタンピードの種類が違う? いや。
――『スタンピードは倒せば一ヶ月は安泰です』。
確かラーナはそう言っていた。
規模からしても同じ物。だとすれば可能性は。
後ろを振り返れば、先日の雨で鎮火しつつも未だに黒煙を上げるシハ王国王都の姿。
――『スタンピードは人間の要る方へ向かってくる性質がありますから』。
―――そうか!
シハ王国に人が居なくなったからスタンピードの進路が変わったんだ!
シハ王国王都はフォルエン王国の北西にある。
スタンピード第七波以降が来たのはフォルエン王国からみて北。
おそらく第七波は最初南西に進路を執っていたが途中から南東に切り替えた。
そして湾曲した分だけ次波との間隔が狭まってしまった。
第八波も同じで、最終的に三つのスタンピードが合流してしまったのだろう。
第五波と第六波も湾曲してきていたはずだ。それに手を加え進路を無理矢理“休景の龍湖”へ誘導した。遅延作戦も使ったため第七波以降のスタンピードとも結果的に近づいてしまった。
まずいことになった。
しかし、幸いにしてスタンピードは“休景の龍湖”に向かっている。
正確にはその南にあるフォルエン王国を目指しているのだろう。
“休景の龍湖”を使うことが出来るなら、手はある。
すまないラーナ。
そして帰りを待つ子どもたち。
今日は、どうも帰れそうに無い。
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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!




