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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第一章 子どもたちの聖域

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第二十二話 朝起きて…

ブクマありがとう!

実はこの一週間ブクマが増えなかったので凹んでいました。これで今週も頑張れます!

 日の出とともに目が覚めた。

 横にはスヤスヤ眠るラーナが未だに服を掴んでいる。

 まだ暗いし、疲れているはずなのでこのまま寝かせておきたい気持ちはあるが、今日もやることは多いので、心苦しいが起きてもらうことにしよう。


「ラーナ。起きてください。朝ですよ」

「……ん。んん。……ふえ?」


 ラーナがゆっくりと目を開けて、オレも顔を見てから、変な声が出た。


「おはようございます、ラーナ」

「え、あの、はい。おはようございます。あの、え?」


 顔を赤くしながら混乱するラーナを少し可愛いと思ってしまう。


「ここは『土形成』で作った簡易的な建物の中ですよ。ラーナが寝てしまったのでここへお連れしました」

「え? あ、そ、そうだったのですね。ありがとうございますわハヤト様」


 可愛い姿は見ていたいけれど、困らせてしまうのは本意ではないので説明する。

 オレの言葉に少し落ち着いたラーナが部屋を見渡して納得したようだ。お礼を言ってきた。


「こんな朝早くにすみません。今日もやることが多いので手伝ってはいただけますか?」

「はい。十分休めたようですので大丈夫です」


 確認をとって二人でかまくら式拠点を出る。

 小さな子はまだ眠っているみたいだが、年長の子たちはもう起きているみたいだ。

 ちょうどいい、彼女たちにも手伝ってもらおう。

 彼女たちの元へ行こうとするとオレたちに気が付いた一人が駆け寄ってきた。


「あ、あの。おはよう、ございます。ハヤト様、ラーナ様」


 駆け寄ってきたのはルミだった。

 ぺこりと頭を下げてあいさつする。

 そういえば彼女には悪いことをしてしまった。

 ラーナを補佐してくれたお礼に布団を作っておいたのだが伝え忘れてしまった。

 彼女は年長組と一緒に寝たようだった。


 しかし、何故かルミが顔を赤くしてオレとラーナを交互に見ている。

 何を想像しているのか何となくわかるが、君が想像していることなんて無いよ。

 オレみたいなアラサー間近な人が中学生相手に手を出してはいけない。


「おはよう、起きるの早いね」

「ルミ、おはよう」


 ルミの視線をスルーしながら朝の挨拶を交わす。

 そういえばルミはラーナのことをラーナ様と呼ぶんだな。


「私が呼んでも良いと言ったのです。本名では呼びにくいようでしたので」


 オレの疑問を正確に読み解いたらしいラーナが言う。

 確かにライナスリィル様は呼び難い。

 しかし、元王族の彼女が孤児に愛称で呼ぶことを許すとは意外だった。敬称付きだけど。

 いや、ラーナは愛国心にあふれているし、孤児を助けたいという慈愛も持ち合わせている。

 彼女はオレが想像するような王族じゃないのかもしれない。


「朝食を作るんだけど、年長の子たちにも手伝ってほしいんだ。いいかな?」

「はい。大丈夫だと思う、ます。連れて、まいります」


 ここに来た目的を話すと慣れない敬語を使いながら戻るルミ。

 確かにこれではラーナの名前は呼び難いかもしれない。


 少ししてルミが六人の少女たちを連れて帰ってきた。

 あ、この子たちって確か昨日助けてくれた子たちだ。


「お待たせ、しました。連れて、まいりました」

「ありがとうルミ。昨日手伝ってくれた子たちだね」

「はい。あれから仲良くなって。今日も手伝ってくるって言ってくれたの、です」


 視線を少女たちに移す。

 彼女たちは昨日の食事の時ミニテーブルが混雑した時に自ら進んで助けに来てくれた子たちだ。

 年齢は11歳の子が二人、10歳の子が四人だ。

 実は二千人の中でも11歳の子はルミも合わせてこの三人しかいない。

 何か理由があるのかもしれないな、あとで聞いてみよう。

 今は朝食の手伝いが優先される。

 進んで手伝いに来てくれただけあってみんなモチベーションが高そうだ。


「みんな、来てくれてありがとう。朝食作りを手伝ってほしんだけど、いいかな?」

「メティ、手伝いする」

「私はエリルゥイスと申します。ハヤト様とラーナ様にはとても感謝していますわ。精一杯お役立ちいたしますわ!」


 11歳組の二人が率先して手を上げる。

 しかし前者の子はともかく後者の子はすごく丁寧な言葉遣いだ。

 疑問に思ってつい【鑑定士】さんに訊いてしまったところ、この子は元男爵令嬢らしい。

 驚いた、貴族の子が孤児になるなんて。いや、もしかしたら孤児の中にはこの子みたいな元貴族令嬢の子も割といるのかもしれない。その辺も後で調べてラーナと相談しないといけないな。

 あとラーナが愛称呼びを許可したのは孤児全員みたいだ。


 その後、調理場にみんなで移動する。この六人には『結界(バリアク)構築(リエイト)』を抜ける許可を与えておいた。

 台の上に鎮座する“マンモー”の肉の塊を前に六人が目を輝かせている。


「このお肉をみんなが食べやすいよう切り分けてもらうよ。まず見本を見せるからちゃんと見ていてね」


 肉を切り始めるとみんなの目がオレの手に集中する。


「こんな感じで、小さく切ってね。あんまり分厚すぎると口に入らないから」


 食器が無いのを説明して小さく切ることを指導する。

 次に昨日のうちに“マンモー”の牙から加工しておいた包丁をみんなに配る。

 何人か包丁を触ったことも無いという子がいたので改めて包丁の使い方もレクチャーした。

 みんな、最初はおっかなびっくりで切っていたけど、みるみる上達していく。

 これもやっぱり【指導者】が仕事しているのだろう。

 オレとラーナとルミも合わせてみんなでやったおかげで、昨日より少し楽だった。


「疲れた~」

「うう、腕がくたびれてしまいましたわ」


 子どもには重労働だったみたいでメティとエリルゥイスが腕を押さえてダウンしている。

 他の子もラーナもルミも疲労困憊だ。

 手伝ってくれたお礼に『回復(ヒーリング)』と『体力(スタミナ)回復(チャージ)』で疲れを癒してあげる。

 回復する緑のエフェクトに子どもたちが燥いでいる。


「すごい」

「キラキラしてる~」

「疲れが取れちゃったわ」

「もう一回やってみてー」


 10歳組みのリクエストに応えてあげたいが、もう日が完全に出ていて、向こう側の子どもたちが起きている。


「また今度ね。これから肉を焼き始めるから、昨日みたいに小さい子たちの面倒を見てもらってもいいかな」

「いい」

「承りましたわ!」


 率先して11歳組が『周囲魔払(バリアサークル)結界(エリア)』に戻っていくと10歳組が後に続いていった。

 ラーナとルミも昨日と同じく子どもたちへ注意を促しに行く。

 残ったオレは肉焼き係だ。固形燃料もガスも無いので【火魔法士】のジョブを持つオレにしか焼き係はできない。


 昨日と同じく焼いては盛り焼いては盛りを繰り返し、運搬して子どもたちに配る。

 子どもたちは昨日とは違いみんないい子になって食べていた。

 どうやら昨日は空腹で我慢が利かなかったらしい。

 みんなおいしそうに食べている。

 火傷には注意してね?


作品を読んで「面白かった」「がんばれ」「楽しめた」と思われましたら、ブクマと↓の星をタップして応援よろしくお願いします!


作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!

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