泉
風にざわめく木々
緑の楽園の向こうから
誰かに呼ばれた気がして
森の中に入る
森の中は空気が澄んでて
木々の傍に生えるキノコや草花を横目に
森の奥へ奥へと入っていく…
森の奥には、ちいさな泉がひとつ
濁りなく透明で
木洩れ日当たる水面が
きらきらと煌めいている
波紋広がる水面の向こう
うっすらと町が見える
そこには、人間のようなものたちも見える…
私は、ここを知ってる
前世よりもっと向こうの日
私は、この泉の向こうで生きていた
私は、いつか住んでいたこの場所に
故郷に、呼ばれたのかもしれない
私は、地上の記憶を洗い流すように
その泉に
入って
いく………




