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芋くさ令嬢ですが悪役令息を助けたら気に入られました  作者: 桜あげは 
番外編

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114/120

113:芋くさ夫人の娘の縁談(ルーナ視点)2

 いつ見ても華やかな王城の一室に、お見合いの場が用意されている。

 普通よりも少し豪華な食事の席に、王妃殿下が自らルーナたちを案内してくれた。

 スラリとした身体に凜々しい話し方、珍しい魔法。王妃はルーナの憧れでもある。

 今日は父はいなくて、母だけが一緒。向こうも保護者は王妃だけだ。


(国王陛下まで現れたら、食事が喉を通らなかったわ)


 母は精神が図太いので、国王や王妃と仲良くやっているけれど、小心者のルーナには無理である。


「アニエス夫人、ルーナ嬢、顔合わせを承諾してくれてありがとう。だが、肝心の馬鹿息子がまだ来ていなくて……」


 気まずそうな王妃に同情すると共に、ルーナはエルメについて思いを馳せる。


(ほら、やっぱり。エルメ殿下は私になんて興味がないんだわ)


 好かれていると思っていたわけではないが、少し気分が落ち込む。

 ルーナの力が必要云々に関しても、どうせ嘘だろう。


(きっとお父様との繋がりが欲しいだけね。嫌んなっちゃう)

 

 ある程度状況を理解しているつもりだったが、心の中でどこか期待していた自分がいたことも否定できない。

 そんな希望は今、綺麗に打ち砕かれてしまったけれど。


「そのうち来ると思うから、先に食事を始めてしまおう」


 気まずい様子の王妃が提案し、母もルーナも頷く。

 使用人たちが前菜を運ぼうと動き出したそのとき、扉が開いて一人のきらびやかな青年が入ってきた。

 父親譲りの金髪に母親譲りの薄紫の瞳。背は高くスラリとしていて、申し分のない美青年に見える。子供だった時とはずいぶん様子が違っていた。

 しかし、キラキラした外見に反して、彼の顔は無表情で感情が読めない。

 どうせ、顔合わせが不服とか、そういう感じだろうとルーナは結論づけた。


(嫌なら最初から、婚約の打診なんて送って来なきゃいいのに。そうしたら、私だってスートレナから遥々王都まで出向いたりしないわよ! というか、「転移」が使えるなら、迎えに来てくれてもいいくらいだし。ここへだって一瞬で移動できるでしょうに)


 ルーナのエルメに対する印象がどんどん悪くなっていく。

 対するエルメは形式的な挨拶だけして、さっさと席に座ってしまった。

 なんともいえない沈黙が落ちる中、食事が運ばれてくる。

 勇敢にも最初に口火を切ったのは王妃だった。


「ごほんっ、息子のエルメだ、今年で十七になる。最近まで私の祖国へ留学していた」

「こちらは娘のルーナです。しっかりしていて、いつも私を助けてくれるんです」


 ニコニコ答えながらも、母はルーナやエルメの様子を観察しているように見える。

 エルメの様子を見て、何か思うところがあったのかも知れない。

 食事が始まるも、エルメから何かを話すことはなかった。ルーナも同様だ。


(こんな失礼な人に何を言っても無駄だし)


 王妃も母も、顔合わせが上手くいっていない事態に気付いているみたいだった。

 食事が終わり、その場で解散することになる。

 本当は「あとは若いお二人で」となるところだろうけれど、親同士が「これはないな」と判断してくれた模様。助かる。

 母もルーナも立ち上がり、お礼を言って部屋を出ようとした。

 しかし、解散する直前になってエルメがガタリと席から立ち上がって、すたすたとルーナの方へ歩いて来る。


「こいつ、借りるぞ」

「へっ?」


 母が「はい」とも「いいえ」とも答えないうちに、エルメはルーナを引っ張って部屋を出て行ってしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 婚約者との会食の場で最低限取繕えない王族って存在価値なくね? 仮に絶対王政型の政治形態でもコンナン要らんわなw
[一言]  何だか、王子の態度って……クーデレ?とかみたいな感情が表情に現れないタイプとかと言うオチな気がして仕方がない。
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