91話 里帰りと強化イベント
ある日の朝、ぼくは故郷である、おじいさんのお家へと帰ってきた。
ドアをノックしようとして、やめる。
「……こんな朝早くじゃ、おじいさんいないよね?」
「エレン? おまえ、こんなところで何をしておる?」
振り返ると、ぼくのたった1人の家族、ジョエルおじいさんがいた。
「おじいさんっ!」
ぼくは彼の腰に抱きつく。
よしよし、とおじいさんは頭を撫でてくれた。
部屋に入って、ふたりで朝ご飯を食べる。
食べながら、ぼくは近況を話した。
「そうか……おまえは勇者として魔王を倒しに行くのか」
「うん、準備が整い次第すぐに」
ふふっ、とおじいさんが笑う。
「エレン、立派な男になったな」
「そうかな?」
「ああ、前は弱々しかったが、今は強くて優しい……よい目をするようになった」
おじいさんはぼくのほっぺたを触って言う。
「成長したなエレン」
おじいさんに言われて、ぼくはホッとした。
自分の成長は、自分じゃわからない。
一番身近にいたおじいさんがそう言うんだから、信じられた。
「カルラもアドラも、今の成長したおまえを見たらきっと喜んでいただろうな」
「お母さんとお父さん……か。ねえ、おじいさん。2人ってどんな人だったの?」
ぼくが物心ついたときには、ふたりともこの世を去っていた。
さみしかったけど、生まれたときからいないし、それにおじいさんとランがいたからね。
「ちょっと待っておれ。写真がたしかあったな」
ジョエルおじいさんはクローゼットをあさって、何かを持ってやってくる。
「ほれ、ふたりの写っている写真じゃ」
「これが……ぼくのお母さんと、お父さん」
ぼくと一緒の赤い目をした女性。
翡翠の髪をした男性が笑顔で写っている。
ふたりの間には赤ん坊がいた。
「これ、ぼく?」
「ああ。このときはわからなかったが、エレン、おまえはアドラと顔つきがそっくりだ。目はカルラに似てとてもキレイだ」
初めて見るお母さんたちの姿。
「さみしいか、エレン?」
おじいさんが、不安げに聞いてくる。
「ううん、全然! だってぼくには家族がいるもん!」
空気を読んで外にいたランが、窓を突き破って入ってきた。
「若様ぁああああああああ♡」
人間の姿になったランが、ぼくに抱きついてくる。
犬耳お姉さんに抱きつかれて、すりすりぺろぺろされる。
「若様! 私うれしゅうございます! うぉおおおおおん!」
「ら、ラン! こらおじいさんの前で人の姿になっちゃダメでしょ!」
目をパチクリさせていたジョエルおじいさんだったが、苦笑する。
「わしは知っておったよ。おまえがただの狼でないことくらいな」
「えっ!? そ、そうだったの……」
「この子から直接聞いたわけじゃないが、まあ、賢い子だったし、それに……カルラのこともあったからな」
「お母さんの……?」
おじいさんは真面目な顔になると、クローゼットからまた別の何かを持ってくる。
「これは……ペンダント?」
「ああ。その写真を貸しなさい」
おじいさんは写真を折りたたむ。
ペンダントは蓋が開くタイプのようだった。
なかに写真を入れて、おじいさんがぼくに渡してくる。
「それを持っていなさい。お母さん……カルラのペンダントだ」
「う、うん……わかった」
ぼくはおじいさんからペンダントをもらって、首からさげる。
「それからこれも持って行きなさい。こっちはアドラの外套だ」
モスグリーンの外套だった。
渋くてとてもカッコいい!
「おまえが強き男になったとき、カルラから渡してくれと託されたものだ。今がそのときだろう、エレン、持って行くのだ」
「うん……ありがとう、おじいさん!」
ぼくはマントを着込む。
「とてもよくお似合いです! 若様はなにを着ても似合います! さすが若様です!」
「エレン、その外套は【透明外套】といってな、フードをかぶると風の加護を受け、敵から姿を消すことができる」
ぼくは言われたとおりに、フードをかぶってみる。
するととたんに、体が見えなくなった。
「すごいや! けど、お父さんがなんでこんな希少価値の高そうなものを?」
「……エレン。よくお聞き」
ジョエルおじいさんはしゃがみ込んで、真剣な表情で言う。
「おまえは特別な子だ」
「うん、知ってるよ。精霊使いなんでしょう?」
ふるふる、とおじいさんが首を振る。
「いいか、エレン。おまえは精霊と……」
と、そのときだった。
「若様! 敵でございます!」
「なんだって!? こんなときにっ!」
ぼくはランとともに、おじいさんの家を出る。
そこにいたのは、強い気を放つ魔族だった。
「ここにいやがったかエレン・バーンズ! いや、【不死鳥の勇者エレン】!」
「おまえは……魔王の幹部かっ!」
「そうっ……! オレ様は【グリード】! 幹部の1人、グリード様だぁ!」
一見すると、普通の人間の青年に見える。
しかしその体にぎゅうぎゅうに、魔力が圧縮されている。
「ぼくに何のようだ!」
「決まってんだろぉ……? 魔王様に楯突く勇者の排除になぁ……!」
ぼくは聖剣を手に取って、グリードに斬ってかかろうとする。
「やぁ……!」
ザシュッ……! と簡単にグリードの体を切断できた。
「やったか!?」
「若様! 後!」
背後から殺気を感じ、ぼくはその場にしゃがみ込む。
「チッ……! 勘の良い犬っころのせいで避けられちまったかぁ……まあいい」
今斬ったばかりのグリードが、五体満足の姿で立っている。
「そんな……どうして?」
『若様から離れろ!』
神狼の姿になったランが、グリードの首に噛みつく。
「あー……良い攻撃だなぁ……。ま、オレ様【たち】には通じないけどなぁ!」
噛まれているグリードの背後に、また【別のグリード】が現れる。
バキッ……! と腕を振る。
『ぎゃんっ……!』
「ランッ!」
頭部を強打したランが、吹っ飛んでいく。
ピクリとも動かない。
死んではいないけど、神狼を一撃で倒す膂力があるみたいだ。
「グリードが2人……? どうなってるんだ?」
「かかかっ! オレ様は強欲でなぁ……! 何でも欲しい、金も女も地位も名誉も、この世にあるものすべてが欲しい!」
ぞろぞろ……とグリードの周囲に、無数のグリード達が出現する。
「だがこの限りある命1つだけじゃ、この世の全てを手に入れることはできねえ。だからよぉ、手に入れたんだ。【不滅】の力をなぁ……!」
ぼくらの周りを、数え切れないほどのグリードが取り囲む。
「分身……?」
「そんなちんけな力と一緒にすんじゃねえ! 命のコピーさ! 全員がオレ様本人よぉ!」
つまり幹部クラスの魔族が、こんなにたくさんいるということか……!
「ひゃははっ! どぉだぁ……! 絶望したかぁ……餓鬼ぃ!」
ぼくはおじいさんを見やる。
倒れ伏すランを抱きかかえて、守るようにしている。
「そんなわけ……ないだろ!」
ぼくは立ち上がって、聖なる剣をグリードたちに向ける。
「ぼくは勇者に選ばれたッ! ぼくが、みんなを守るんだ!」
「くくく……威勢はいいが、この大軍を前に、果たしてひとりで立ち向かえるかなぁ……?」
「確かに……ぼく1人じゃ無理だ。けど! 今のぼくには、仲間達がいる!」
バッ……! と手を天に掲げる。
不死鳥の大翼が広がり、ぼくの体を包み込む。
翼を開いた次の瞬間、ぼくの仲間達がそろっていた。
騎士のアスナさん。
賢者のティナ。
鬼の紫音さん。
「なっ!? 貴様いつの間に仲間を!?」
『大翼が進化し、こうして自分以外の味方も瞬時に呼び寄せることが可能となったのじゃ。うむ! さすがエレンじゃ!』
「くっ……! だ、だが知っているぞ! エレン以外の味方はSランク程度のザコだってなぁ……! かかれぇ……!」
大量のグリード達がぼくらに襲いかかってくる。
『ふっ、バカな幹部もいたものだね。僕の愛しいエレンの仲間が、いつまでも弱いままだとお思いかい?』
ルルイエさんの声がする。
「みんな……いこう!」
「「「はいっ!」」」
ぼくが言うと、アスナさん達の体が光り輝く。
「せやぁああああああああ!」
アスナさんが剣を振りかざし、勢い良く上段斬りを放つ。
竜巻が一直線上に伸び、そこらにいたグリード達の体をズタズタに切り裂く。
「なっ!? なんだそのバカみたいな威力の斬撃はァ……! 剣聖の力じゃないだと!」
「そう! わたしは今エレンから力をもらって、【剣神】へと進化したのよ!」
剣神となったアスナさんが、走りながら剣を振る。
そのたびに烈風が吹きすさび、グリード達を木っ端微塵にする。
「アスナばかりが強くなったわけじゃないわ! 食らえ【冥府魔道葬】!」
闇の極大魔法をティナが使う。
超広範囲に闇が広がり、闇の奥から無数の触手が生える。
触手はグリード達を掴むと、そのまま地獄へと引きずり込む。
「そんなバカな!? いくら極大魔法が強力だろうと、ここまで威力が高いはずがない!」
「甘いわね! 今の私は賢者でなく【賢神】! 魔法の威力が何百倍も上がっているのよ!」
そして鬼の紫音さんが拳を握りしめると、地面を思い切り殴りつける。
激しい揺れとともに、地割れを起こす。
「なんてパワーだ!」
「そうさ! あたいは今【鬼神】となった! そのパワーは鬼だった頃を遥かに凌駕してるんだぜぇ……!」
仲間達がグリードの数を瞬く間に減らしていく。
「一騎当千の駒を、3人も作り出しただと!? バカな! 人間にそんなマネができるはずねえええ!」
「ははっ! バーカ! ここにおわす御方をどなたと心得る!」
ルルイエさんは顕現すると、ぼくの前に跪いて言う。
「恐れ多くも【精霊の神子】! エレン・バーンズ様であらせられるぞっ! 今のエレンなら精霊核を進化……否! 神格化させることなど容易いことなんだぁ! どうだぁ……!」
『は、母上……落ち着いて……ちょっと年齢を考えましょう……』
ウキウキで言うルルイエさんをたしなめるのは、その娘であるカレンだ。
「人間風情が神格化させた……だと!? バカなバカなバカなぁあああ!」
慌てふためくグリードめがけて、ぼくはツッコむ。
「たぁ……!」
聖剣を使って、胴を斬る。
「1人でも強いのに……強い仲間を生成できる……なんて、馬鹿げた力を持つ……化けものめぇ……!」
その場にいたグリード達は、ぼくらの活躍によって全滅した。
「……エレンよ」
「おじいさん!」
一部始終を見ていたおじいさんが、感心したようにつぶやく。
「強くなったな、エレン。さすが勇者だな」
よしよし、とおじいさんがぼくの頭を撫でてくれる。
「待ってて、おじいさん。ぼくが必ず、魔王を倒してくるからね!」
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はぁああああん♡ もうっ♡ もうっ♡ エレンかっこいいよぉお~~~~~~~はぁあ~~~~~~~~~~ん♡
……さて、と。
本体をこっそり逃がしていたチキン野郎、もとい幹部のグリードくんには、ペナルティをしっかり与えないとね。
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