59話 金貸しのヴァーガン
テイマーのエレンが、鬼族の少女を助けてから、数日が経過したある日の夜。
王都にある高級娼館の、VIPルームにて。
「いやぁ! 【ヴァーガン】様! よくぞお越しになられました!」
娼館の主が、ペコペコとそいつに頭を下げる。
ヴァーガン。
王都を裏から牛耳る犯罪ギルド【六眼】の、6人いる幹部のひとりだ。
彼は別名【金貸しのヴァーガン】。
長い金髪に、チャラついた容姿の男だ。
「ささっ、VIPルームにご案内いたします! 最高の娼婦にお酌させましょう」
「おう。楽しみにしてるぜぇ」
ヴァーガンは主の紹介で、高そうな部屋に通される。
左右に女を侍らせながら、ヴァーガンは娼館の主が来るのを待つ。
「お待たせしました! 今月の上納金でございます!」
ペコペコと主が頭を下げながら、マジック袋(たくさんの物をコンパクトに収納できる袋)を持ってくる。
ヴァーガンはそれを受け取り、中身を確認して、懐にしまう。
「おれの拉致って来た女どもはどうよ?」
「最高でございます! 常連客からは、ヴァーガン様の連れてくる女は素晴らしいと大絶賛の嵐でございます!」
彼は金儲けのためなら何でもする。
世界各地を周り、美女を見つけては、拉致まがいのことをして娼館に売りさばく。
「ったりめーよぉ、おれさまを誰だと思ってるんだ? 鑑定眼を持つヴァーガン様だぜ? いい女かそうでないかは一発でわかるんよ」
「さすがはヴァーガン様!」
そのときだった。
「お願いします! 通してください!」
娼館の外が、何やら騒がしかった。
バンッ……! と扉が乱暴に開く。
「ヴァーガン様! ヴァーガン様ぁ!」
泣きながら入ってきたのは、粗末な服を着た男だった。
「んだよ、せっかく人がきもちよーく酒飲んでいるところによぉ……」
男は泣きながらヴァーガンの前に立ち、バッと頭を下げる。
「娘を返してください! お願いします!」
「あー……? なんのこった?」
娼館の主が、ヴァーガンに説明する。
「先日この娼館へ連れてこられた娘の父親かと思われます」
「あー! はいはい、貸した金が返せなかったクズの債務者くんね、きみ」
ヴァーガンは懐からたばこを取り出す。
主が火をつける。
「たしかパン屋やってるんだっけ? うちで借金したけどぜんぜん返せないから、借金のかたに娘さんをもらったってやつでしょ?」
「そうです! お金を用意してきました! だから娘を! どうか娘を返してください!」
バッ、と男が革袋を差し出してくる。
それを受け取り、中身を確認する。
ぷはー……っとヴァーガンがたばこの煙を、男に吹き付ける。
「だめ。ぜーんぜん足りね」
「そ、そんな! 金貨300枚! 用意してきましたよ!」
「残念。今は利子が付いて借金は金貨1000枚なのよ」
「1000!? そんな! むちゃくちゃだぁ!」
「無茶も何も利子がつくことは説明済みっしょ?」
涙を流し、男が崩れ落ちる。
「お願いします! 娘を帰してください! 死んだ妻の残したたった1人の家族なんです!」
ヴァーガンの足にしがみついて、男が泣きわめく。
「あーもぉ! うっせぇんだよぉお!」
ゲシッ! とヴァーガンが男を蹴り飛ばす。
「借りた金を返せねえクズがおれさまに触れるんじゃねえこの貧乏人!」
「がっ! ぐへっ! ぐはっ!」
ひとしきり殴った後、ふんっ! と鼻を鳴らす。
ヴァーガンは振り返る。
そこには、屈強な男達がたっている。
彼等は傭兵、ヴァーガンのボディガードだ。
「おいてめえら。ボコって裏に捨てとけ」
「い、いやだぁ! 返してくれぇ! 娘を帰してくれぇええええええ!」
「その前に金返せよばーーーーーか!」
ボディガードが、男を連れて出て行く。
「ったく、興ざめもいいところだぜ。これだから貧乏人のクズは嫌いだ」
「まったくでございます! ヴァーガン様、お口直しに最高の女をご用意してまいりましょうか?」
「おっ、いいね~。おれさまの激しいプレイに耐えられるいい女もってこいよ~?」
……と、ヴァーガンが調子に乗っていられたのは、ここまでだった。
ドガァアンッ! と大きな音を立てて、VIPルームのドアが爆発したのだ。
「な、なんだ……?」
入ってきたのは、2メートルほどの大男たちだった。
「ヒッ……! お、【鬼族】だっ!?」
娼館の主は、腰を抜かす。
大男たちの額には、立派な1本の角が生えている。
鬼族。
亜人の一種。
凄まじい膂力と、鬼術という不思議な術を使うという。
「鬼族は滅多に人里にはこないはず! な、なぜここに!?」
「お、おいボディガード! 何ぼさっとしてる早くこいつらぶっ殺せ!」
傭兵達が武器を手に、鬼族に相対する。
「おらぁ!」「死ねごらぁ!」
武器を振り上げて、鬼の1人に斬りかかる。
がきぃん、と武器が壊れた。
「なっ!? そんなミスリルの武器だぞ……ぐべっ!」
鬼が手を払う。
それだけで、傭兵の頭部がトマトのように潰れた。
「うひぃいいいいいいい!」
ヴァーガンは情けない声を上げる。
「お、おおおい! 娼館にもボディガード常駐させてただろ! 全員呼び出せ! こいつらをぶっ殺せぇ!」
娼館には常に、見張りを置いている。
女どもが逃げたら大損だからだ。
館にいた傭兵達をかきあつめる。
その数は30。
全員が手練れだ。
「ひゃーっはっは! これでてめえらもお仕舞いだ! 野郎ども、ぶっ殺せぇ!」
鬼はたった3人しかいない。
一方で傭兵は30。
どう見ても向こうが不利。
だが……。
ドガッ! ボグッ! ドゴッ! と鬼が手を振るだけで、傭兵達は死んでいく。
「な、なんて強さだ……! くそっ! もっと傭兵を呼べ!」
ヴァーガンが言うが、館の主は首を振る。
「お、おりません! アレで全員です!」
「くそったれぇ!」
ヴァーガンは懐から、杖を取り出す。
「やいてめえ! 調子乗ってくれたなぁ……六眼のおれさまを怒らせると、どうなるか教えてやるぜ……」
彼はただの金貸しではない。
高位の魔法使いである。
普段はまったく訓練しないが、子供の頃は神童と呼ばれた男だ。
「見せてやるよ……おれさまの極大……」
だが鬼族の1人が、ヴァーガンに高速で接近。
杖を腕ごと、グシャッ! と潰したのだ。
「ひぃいいぎゃぁああああああああああああ! 腕が! 腕がぁああああああ!」
利き腕を完全に潰されたヴァーガンは、痛みでのたうち回る。
「わ、私は関係ない! 関係ないぞぉ!」
館の主が、ヴァーガンを捨てて逃げようとする。
だが鬼族のひとりに、頭を殴られて死亡した。
「あぁあああ! 痛ぇ……痛ぇよぉおおおおちくしょぉおおおおおお!」
痛みにもだえていた、そのときだった。
「おい、チンピラ」
部屋の奥から、ひとりの美しい女が出てきた。
彼女もまた鬼のようで、額から2本の角が生えている。
「あたいは【紫音】。鬼族の族長だ。てめえに聞きたいことがある」
「ひぃいい……な、なんだよぉ……?」
紫音はヴァーガンを見下ろしながら言う。
「てめぇか? ひとの【妹】を連れて行った命知らずのチンピラは?」
「い、妹……?」
ヴァーガンは思いだす。
こことは別の娼館に、鬼族の幼女を拉致して連れてきたことがあると。
「その様子だと心当たりがあるようだなぁ……」
紫音は腰につけた刀を抜いて、ヴァーガンの手に突き刺す。
「ふぎゃぁあああああ!」
「河原で遊んでいたあの子を……連れて行ったのはてめえか。この腐れ外道がぁあああ!」
ざしゅっ! と刀で彼の耳を切り飛ばす。
「ひぃいいい! うひぃいいいい!」
「よくも大事な妹にひでえことしやがったな……てめえただですむと思うなよ」
鬼族たちは、本気だった。
その瞳には、絶対に許さないという固い意志を感じた。
「お、おれさまに手ぇ出してただですむと思うなよ! こっちにゃ犯罪ギルド六眼がついてるんだぞ!?」
「だから……なんだ? 鬼族はおまえらを許さない。1人残らず地獄に送ってやるよ……」
紫音の瞳に気圧され、じょぼぼ……と小便を漏らす。
「あ……ああ……」
「おい、こいつ連れてけ」
紫音の命令で、鬼の1人がヴァーガンを担ぎ上げる。
「お、おれさまをどうするんだよ?」
「尋問だよ。仲間の居場所、アジトの詳細。全部はいてもらう。しかる後……ぶっ壊す」
「そんなこと……させっかよおぉおお!」
ヴァーガンは奥の手を発動させる。
奥歯に仕込んだ、【転移結晶】。
がりっ、とかみ砕いて、転移を発動させる。
視界がゆらぐと、次の瞬間、ヴァーガンは別のアジトにいた。
「ぜぇ……! はぁ……!」
「あ、兄貴! ヴァーガンの兄貴!」
部下の1人が、ヴァーガンに気付く。
慌てて近寄り、心配そうに見てくる。
「兄貴! 聞いてくれエレンとか言うガキが……」
だがヴァーガンは、部下の頬を殴って言う。
「おい、娼館に売り払ったあの鬼族の幼女、今どこにいる!?」
「え? な、なんで? あの鬼は殺して良いって……兄貴言ってましたよ……?」
「うるせえ! 今すぐその幼女つれてきやがれ! あのメス鬼に復讐してやるんだよ!」
部下はしどろもどろになりながら、言う。
「それがぁ……その……連れていかれました」
「あぁ!? 誰にだよ!」
「た、たしか特S級冒険者の、エレンとかいうガキだったと思います……」
ヴァーガンは部下を殴り飛ばして言う。
「そのエレンとかいうガキの居場所を調べやがれ! 鬼女に見つかる前に妹を捕まえて、ぶっ殺す!」
「け、けどエレンは強いですぜ……?」
「うっせえ! そんときゃこの高位の魔法使いであるおれさまが直々にぶっ殺してやるよ!」
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精霊使いへの敵対行動を関知しました。
ヴァーガンへのペナルティを実行します。
ギルド【六眼】へのペナルティは実行中。
→ペナルティ進行度50%
→幹部3人はすでに破滅しています。
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