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55話 追放された愚か者たち



 テイマーのエレンによって、皇子グスオは聖女を連れ戻せなかった。


 それから半月後。


 グスオは帝都から、追放処分を受けていた。


「くそ……くそぉー……」


 一人トボトボと歩く。

 身ぐるみを剥がされ、平民の着るような粗末な服を身に纏っている。


 今の彼を、いったい誰が皇子とみるだろうか。


「なんで僕が、こんな目に……」


 グスオはエレン達に復讐しようと息巻きながら、帝国へと帰った。


 帝国軍を勝手に率いて、攻め入ろうとしたところを父に発見される。


 問い詰められて訳を話すと、皇帝は激怒した。


 当たり前だ。

 聖女を連れ戻せない。

 それどころか、勝手に軍を動かそうとしたのだから。


 さらに皇族に伝わるグリフォンを失ったことで、父からの信用は完全にゼロになった。


 加えて運の悪いことに、グスオが行ってきた数々の横暴な態度が、すべて皇帝の耳に入ったのだ。


 皇子の態度があまりに酷すぎると、住民が嘆願書を書いてまとめて提出してきたのである。


 ちなみに、書類をもってきたのは、グスオが不当に解雇した御者だった。


 彼は新天地で別の仕事を見つけ、幸せにしているという。


 ともあれ、諸々を総合した結果、皇帝はグスオの態度が皇族に相応しくないと判断。


『グスオ、貴様を追放する!』


「うぐ……ぐす……くそ……くそぉ……なんで……僕が……こんな目に遭わなければいけないんだ……」


 もの凄いスピードで、グスオは持っていたもの全てを失った。


 まるで誰かの手によって幸福を奪われたかのようだった。

 

 さもありなん。

 彼はこの世で最も怒らせてはならない男の不興を買った。


 エレン。精霊使いの少年。

 彼を愛する精霊の王から見放されたのだ。

 グスオに明るい未来など、訪れるわけもない。


 森の中を、当てもなく歩いていた……そのときだ。


「あーん……だーりぃん」

「ん? この声は……?」


 近くの茂みを覗いてみると、そこには……。


「べ、ベラドンナ!」


 自分の元恋人が、森の中で情事にふけっていたのだ。


「き、き、貴様!」

「うげぇ、グスオ……なんでここに?」


 ヒュドラの生息地が近いこの森は、滅多に人が訪れない。


「べ、ベラ……ベラドンナ! だ、誰なんだその男はっ!?」


 ベラドンナたちはいそいそと服を身につける。


「だれって、アタシの新しいダーリン。冒険者なのよ。たくましくってかっこいい」


 ガツンッ! と頭を殴られた気がした。


「新しい彼氏……だと!? か、彼氏は僕だろ!?」


 するとベラドンナは、冷ややかな目で彼を見やる。


「は? 帝都を追放された元ボンボンのゴミが、なにをバカなこと言ってるのかしら……?」


 第3皇子グスオが城から追放されたことは、すでに帝都中の噂になっていた。


 無論ベラドンナの耳にも入っていたらしい。


「ベラ……戻ってきてくれよぉ……僕……なにもかもをうしなって……もう君からの愛しか残ってないんだ……」


 グスオの中では未だに、彼女への思慕があった。


 だが彼女はグスオのことなど、眼中にないようだ。


「いやよ。金も地位も失ったあんたなんて、ただの貧相なガキじゃない」


「べ、ベラ……?」


 小馬鹿にしたように、彼女が言う。


「アタシが欲しかったのはお金と地位。そのどっちも持っていないあんたなんて用済みよ。いきましょ、ダーリン♡」


 新しい彼氏と、キスをする。

 ベラドンナはふたりで、その場を離れようとする。


「そ、そんな……ま、待ってくれえぇ……!」


 はしっ、とグスオが彼女の足を掴む。


「僕を捨てないでくれ、置いてかないでくれぇ……!」


「ああもうしつこいわよこのクズ! だーりん、やっちゃって! こいつぶっ殺して!」


 ……と、ベラドンナが調子に乗っていられたのも、ここまでだった。


「オロロロオォオオオオオオオオオン……!」


 どこからか、特徴的な獣の鳴き声がしたのだ。


「な、なによ今の……?」

「ひゅ、ヒュドラだ! いかん、逃げないと!」


 ずずーん……! と頭上から巨大な毒の竜が降りてきた。


「ひっ……!」


 ベラドンナと目が合う。


「な、なによ!?」

「オロオオォオオオオオオン!」


 ずん、ずん、と毒竜はベラドンナめがけて近づいてくる。


「あっちいきなさいよ!」


 ……さて、なぜベラドンナが狙われているのか。


 理由は簡単、【聖女】だからだ。


 もっとも、彼女の場合は元聖女。

 聖女の持つ浄化のスキルは失われた。


 しかしその聖なる力の【残り香】は残っている。

 クレアがそうだったように。


「だ、だーりん! た、助けて……!」

「む、無茶言うな! 毒竜ヒュドラはSSランクの竜種だぞ!? おれが倒せるわけがないだろ!」


 さぁ……とベラドンナの顔が青くなる。


「あ、アタシを食べても美味しくないわ! そこの無能皇子を食べなさい!」


 だが、毒竜の好物である、聖女の香りをさせた女が目の前にいるのだ。


 どちらを優先して襲うかなんて、言わずもがなだろう。


「オロォオオオオオオン!」


 ぶべっ、と毒竜は毒を吐き出す。

 それは触れると即死の強毒だ。


 しかし、残りカスとは言え聖女の力がなくはない。


 では、その状態で毒を受けると、どうなるのか……?


「ぎぃいいやぁあああああああ!」


 身体に毒を受けたベラドンナ。

 艶やかな髪の毛も、シミ1つ無い肌も。

 豊満な胸も……すべて、ただれてしまった。


「あぁあああ! わたしの美貌が! 美貌がぁあああああああ!」


 彼女の不幸は聖女の力が中途半端に残っていたこと。

 即死の毒を受けていれば、自慢の容姿が変貌してしまったという、死よりも辛い現実に嘆くことは無かった。


 ちなみにクレアが毒竜に飲み込まれて無事だったのは、彼女の着ていた聖女の法衣に毒耐性があったからだ。


 だがベラドンナは【こんなだっさい服着てらんないわ】といって毒耐性のある法衣を着ていなかった。


「だ、だーりん……治癒のポーション……持ってなぁい……?」


「ひっ! ち、近づくな! キモいんだよ!」


 べしっ、とベラドンナは彼氏に叩かれる。


「ツラもいいし胸もあったから拾ってやったけど、それがなくなったらただの性格最悪のブスじゃん! こんな女いらねぇよ!」


「そ、そんな……」


「あばよ! 無能皇子とクズ聖女! 二人仲良く毒竜に喰われちまいな! お似合いカップルだぜ!」


 そう言って冒険者が離れていく。


「あ、あんた! ぼさっとしてないで助けなさいよ!」


「そ、そっちこそ! 浄化の力で毒竜を倒せ! 聖女なんだろ!?」


「違うって言ってるでしょ! アタシはただ、あのふくろうに力を貰っただけよ!」


「うるさい! さっさと力を取り戻して役目を果たせこのクズが!」


 醜い言い争いをしている間に、毒竜はターゲットを決めた。


 ふたりを食べる。

 そう決め、襲ってくる。


「「ひぃいいいいいいい!」」


 彼らは一目散に、逃げ出す。

 聖女の香りをさせるベラドンナは、毒竜のエサだ。


 彼女が逃げる先には、帝都がある。

 帝都に逃げ込めば軍隊があるから、助けてもらえるだろうという算段だ。


 ……しかし裏を返すと、この毒竜を帝都なんていう、国の要の場所へ誘い込むことになるわけだ。


 ベラドンナが自己保身を考えず、帝都から離れれば良かったモノを。


 結局彼女の浅ましい自己保身の結果、帝都に毒竜が襲来するという、前代未聞の大事件を起こしてしまう。


 その首謀者として、ベラドンナ、そしてグスオが逮捕される。


「ちくしょう! ここから出せ! くそっ! 僕は皇子だぞぉおおおおお!」


「いやだぁ! アタシ、こんな顔で、一生過ごすなんて! 嫌だ! 嫌だよぉおおおおお!」


 ちなみに帝都民は奇跡的に死傷者ゼロだった。


 【緋色の翼】という希代の冒険者パーティがたまたま帝都にいたから助かったのだ。


 そのパーティには聖女クレアもいた。

 彼女はパートタイムで冒険者をやることにしたらしい。


 浄化スキル持ちが2人もいてくれたおかげで、帝都の街と民は救われた。


 グスオは自分が追放した聖女の手によって、祖国を救われたこととなる。


 自分が選んだ聖女は偽物で、自分が捨てた聖女は本物だった。


 彼は自分が間違っていたのだと、失意の中、嫌という程思い知らされたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 毎回表現が同じでつまらん 何回頭殴られんねん
[一言] 不当に解雇された御者!生きていたのか!よかった。
2020/08/28 12:24 退会済み
管理
[良い点] 一話完結の昭和特撮の様な、悪役に虐げられる民間人と偶然出会って許さんの一言でバッタバッタ倒していくヒーロー物みたいな雰囲気。 [気になる点]  助ける相手や仲間が女性ばかり。ハーレム目…
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