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54話 皇子の襲来



 ぼくがクレアさんを助けてから、1週間くらいが経過した。


 冒険者ギルドにて。


 受付カウンターで依頼を受けた。

 アスナさんとティナは道具屋でアイテムの補充をしている。


 さて出発しようと荷物を確認していたときだった。


「あ、しまった。お弁当忘れちゃった」


 パーティハウスに取りに戻ろうとしたそのときだ。


「……エレン様♡」

「クレアさん! どうしたの?」


 白髪の美少女クレアさんが、微笑みを浮かべながら、ぼくらのもとへくる。


「……お弁当を届けに来ました」

「わぁ! ありがとう! ごめんね、わざわざ」


 いいえ、とクレアさんからぼくはお弁当を受け取る。

 ぼくらのハウスに彼女が住むようになった。


 住まわせて貰っているからと、家事全般をやってくれている。

 クレアさんは掃除洗濯お料理が大得意なのだ。


「よぉ! クレアちゃん!」


 冒険者の男が、笑顔で彼女に近づいてくる。


「この間はケガ治してくれてサンキューな! 助かったぜ!」

「クレアさん、ばあちゃんの腰を治してくれてありがとうね!」


 あっという間に、クレアさんが冒険者達に囲まれる。


『人気者じゃのう、彼女は』

「ぼくらが冒険に行っている間、困っている人を助けてあげてるんだって」


 とても偉いことだ。

 世の中には酷い人も多い。


 けどこうして困っている人を放っておけない、いい人もたくさんいる。


 ぼくもアスナさんやクレアさんのように、立派な人になれるように、がんばらないとっ!


 と、そのときだった。


「クレア! 見つけたぞ!」


 ギルド会館のドアが乱暴に開いて、見知らぬ男性が入ってくる。

 

 背は高く、軍服を着ている。


「なんだあいつ?」「さぁ? この辺のやつじゃないな」「おれどっかで見たことあるような……」


 軍服の男は、クレアさんに近づいてくる。

 さっ……と青い顔をして、彼女がうつむく。


「手間をかけさせるな! 帰るぞ?」


 クレアさんの手を無理矢理引いて、帰ろうとする。


 彼女は手をはらい、男から離れる。


「……何をしにきたのですか?」


「おまえが急に必要になった。帰るぞ」


「……わたしはもうあなたとは無関係なの」


 男は顔を真っ赤にすると、クレアさんめがけて、頬をぶつ。


「きゃっ!」

「僕に逆らうな! ついてこいといったらついてくるんだ!」


 彼がクレアさんの腕を乱暴に掴んで、引っ張ろうとする。

 ぼくは彼の手を掴んでひねる。


「いたたたたたたっ!」


 ぱっ、と手を離す。


「やめなよ、彼女が嫌がってるじゃないか!」

「……平民の分際で、逆うな、無礼者!」


 男は腰の剣に、手をかける。


========

精霊使いへの敵対行動を関知しました。

グスオへのペナルティを実行します。

→皇子の精霊核エレメンタルを永久剥奪します。

→スキル【皇族剣使用権限】を剥奪します。

→スキル【帝国式剣術】を剥奪します。

→etc.……。


========


「我が皇族にのみ使用を許可される、宝剣のさびにしてくれよう……」


 周囲がざわつく。


「皇族……?」「外国のおえらいさんが、こんな辺境の冒険者ギルドに……?」


 ふっ、とぼくたちを見下したように言う。


「僕はグスオ=フォン=マデューカス。皇帝の息子だ」


 イケメンの彼が、高らかにそう宣言する。

 外国の、しかもとても偉い人だ。

 ぼくらのような平民では、一生お目に掛かれるような類いの人じゃない。


 けどクレアさんのこの怯えよう。

 グスオ本人なのかもしれない。


「その証拠に、見よ! この宝剣の輝きを!」


 ぐっ、と皇子が、剣を抜こうとする。


「ふぬっ!」


 力を入れてるみたいだけど、剣は抜けていない。


「このっ! ぐぬっ! ふんっ! ふんぐぅうううううう!」


 顔を真っ赤にして、剣を必死に抜こうとする。

 だけど剣はまったく抜けない。


 勢い余って、彼は体勢を崩し、その場に倒れる。


「ぶぎゃっ!」


「ぶっ……! なんだ今の……?」

「うわぁ……まじだっせえ……」


 くすくす、と冒険者たちが蔑んだように笑う。


「き、貴様らぁあああああ! 皇子に不敬だぞ!」


 冒険者相手に、彼がケンカをふっかけている。


 ぼくはクレアさんの腕を引く。


「今のうちに、ここから離れよう」

「……は、はい」


 彼女を連れて、こっそりとその場を離れようとする。


「待てよクレアぁああああああああ!」


 ぐしゃっ、とクレアさんの髪の毛を掴んで引っ張る。


「いたっ」

「なにするのさっ! 離せ!」


「うるさい! おまえはさっさと帰ってくれば良いんだ!」

「……い、いや! 帰りたくありません!」


「わがまま言うな! おまえは僕のモノだ! 言うことを聞け!」


 男がクレアさんを殴ろうとする。


「やめろぉ!」


 ぼくはその手を掴んで、逆に殴り返す。


「うげぇえええええええええ!」


 彼はコマのように回転しながら、ギルドの壁に激突する。


「エレン! よくやった!」「おれたちのクレアちゃんを守ってさすがだぜ!」


 冒険者達がぼくにエールを、そして倒れ伏すグスオに言う。


「帰れ! 皇子だかなんだかしらねえけど、ここは冒険者ギルドだ!」


「というか本当に皇子なのかよこいつ? てんで威厳ないし、あんな小さな子供に負けるとかだっせぇし」


 グスオは立ち上がって、近くの冒険者の腰から剣を抜く。


「あ、おい! それおれの剣だぞ!」

「黙れ! 見せてやろう、幼きころからたたき込まれた、帝国の剣術を!」


 バッ……! とグスオは剣を構える。


「帝国式剣術だって……?」

「マデューカス帝国っていえば、随一の軍事国って聞くぜ。その剣術なら相当なもんだろ……」


 グスオは剣を手に、ぼくにツッコんでくる。


 ぼくはクレアを下がらせる。

 ……あまりに、相手の剣が遅かった。


 え、なにこれ?

 ワザと? フェイント……?


 先読みスキルを使うまでもなく、彼の単調な攻撃を、ぼくは半身をよじってよける。

 すかっ、とグスオの剣が宙を切る。

 体勢を崩していたので、足を引っかけて転ばした。


「ほぎゃっ!」


 倒れ伏して、グスオが顔面を強く打つ。


「ぷっ、なんだあいつ。マジでだせえ」

「ぎゃっははあ! なーにが帝国式の剣術だ! 剣を握ったばかりのひよっこかと思ったよ!」


「「ぎゃーっはっはっは!」」


 ふらつきながらグスオは立ち上がる。


「度重なる……侮辱! 万死に値するぞ! こうなったら、奥の手だ!」


 グスオは懐に手をいれると、結晶クリスタルを取り出す。


「この結晶には皇族が代々従えてきた【大精霊】グリフォンが封印されている!」


「大精霊……グリフォンだって?」


「そうだ! 現れよ、空の王よ!」


 ぱりんっ、とグスオが地面に結晶をたたきつける。

 魔法陣が展開し、グリフォンが出現した。

「ゆけ! グリフォン! あの無礼なガキを殺すのだ!」


 くるっ、とグスオの方を見やると、口から風の魔法を吐き出す。


「ほぎぇええええええええええ!」


 木の葉のように簡単に、吹っ飛んでいった。

 ギルドの壁をぶち破って、道路にぐしゃっと倒れる。


「きゅるうぅ……♡ きゅー……♡」


 グリフォンはぼくに近づくと、すりすりと頬ずりしてきた。


『間抜けな男じゃ。エレンを誰と心得る。精霊の寵愛を一身に受ける精霊使い、大精霊が攻撃などするわけがなかろうが』


 ぼくは外に出る。

 倒れ伏すグスオが、悔しそうにぼくを見てくる。


「ち、くしょぉ……なぜだぁ……なぜ僕に従わないんだぁ……」


「もういい加減にしてよ! クレアさんは誰のモノでもない! もうつきまとうな!」


 ふらふらと立ち上がるグスオに、冒険者達が続く。


「そうだ、帰れ!」「クレアちゃんにはおれらが指一本触れさせないぞ!」「帰れ自称バカ皇子!」


 ぎりっ……と歯がみすると、ぼくらをにらみつけてくる。


「……覚えておけよ。一度帰って出直してくる。必ず貴様ら全員、打ち首にしてやるからな……!」


 ふらつきながら、彼は立ち去っていく。


「エレン様……ありがとう、ございました」


 クレアさんが涙を流しながら、ぼくに深々と頭を下げる。


「気にしないで。女の子を守るのは男の子の仕事だから!」


 それにしてもグスオは本当に酷いヤツだ。

 自分から捨てたくせに、急に来て無理矢理連れ戻そうとするなんて!


========

精霊使いへの敵対行動を関知しました。


皇子グスオにペナルティを実行します。


========

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公は何で仲間が殴られたり、傷つけられてからじゃないと行動しないの?確か先読み的なスキル持ってたよね?自分が攻撃される時は使って仲間には使わないとかゲスだよね?
[一言] エレンは皇子にクレアが腕や髪を掴まれるのぐらい防げないの?
[良い点]  話は面白いけど・・・・ [気になる点] > 男は腰の剣に、手をかける。 > >======== >精霊使いへの敵対行動を関知しました。  グスオの最初の敵対行動認定はこの場面でいいと思…
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