50話 奴隷商人
ぼくは本来の妖精を助け出すことができた。
妖精の国の、王城。
謁見の間にて。
「エレン様、誠に感謝申し上げる。なんとお礼を申して良いやら……」
「気にしないでください。みんな無事で済んで良かったです!」
ちなみにこの場にはぼくしかいない。
妖精の国は大気中の精霊の濃度が非常に濃い。
そのため常人では入って来れない、ということでアスナさん達はお留守番だ。
「我が国を上げてあなた様への感謝の宴を開きたい……のは、山々なのですが、ひとつ懸案事項を抱えておるのです」
「何かトラブルでもあるんですか?」
「妖精の誘拐事件が多発しておるのでございます」
話をまとめるとこんな感じ。
・最近妖精の国に【邪竜】が突如として出現しては、妖精をさらってどこかへいってしまう。
・妖精の国は基本、妖精以外は入れないはずなのでこれはおかしい。
・だがいくら調べても邪竜は見つからず、誘拐事件が連発している。
「連れ去られたものたちの捜索に人員と労力をさかれておりまして、城が手薄になっているところをマーダオスに襲撃されたのです」
妖精王と王女アンジェリカが、表情を曇らせる。
連れ去られていった妖精達は、国民だもんね。
心を砕くのは当然だ。
「なるほど……わかりました! ぼくがその邪竜を見つけ出します!」
「そ、そんな! エレン様、これ以上あなた様にご迷惑をかけることなど……」
アンジェリカが申し訳なさそうに言う。
「全然迷惑じゃないよ。困っている人を見捨てられないんだ、ぼく」
今までアスナさん以外、弱かったぼくに救いの手を差し伸べてくれる人は居なかった。
強くなった今、アスナさんがそうしてくれたように、ぼくも困っている人は助けたいんだ。
「ありがとうございまする! どうか、我が民をよろしくお願いします!」
さて、妖精王から依頼を受けたぼく。
「ええっと……アビー、いる?」
「いるの」
ぼくの影から、小柄な女の子が出てくる。
彼女は吸血鬼のアビゲイル。
「たしか影で蝙蝠作れたよね。それをたくさん作って国中にばらまいて。邪竜を見つけるんだ」
「わかったの。しばしまたれよなの」
アビーは影の中に沈むと、そこから無数の蝙蝠が出てくる。
しばらくして。
「見つけました!」
「おお! もうでございますか! さすが精霊使い様でございます!」
「今から現場に向かいます」
「わたくしもついて参ります!」
不死鳥の翼で空を飛び、アビーの示した地点まで向かう。
「いたっ! あそこだ!」
5メートルほどの黒い体を持つ竜がいた。
「あそこは小さな集落となっております!」
ぼくらは集落へと到着する。
ちょうど邪竜が、妖精のひとりを捕まえているところだった。
ぼくは風神の剣を取り出して、邪竜の腕を切る。
ザシュッ……!
邪竜の腕から妖精が堕ちてきて、ぼくはその子を空中でキャッチ。
「だいじょうぶっ?」
「助かりました、ありがとうございます!」
助けた妖精は慌てて逃げていく。
ぼくは腕を失った邪竜を見上げる。
だがすぐさま竜は、切った部分が再生された。
『やっときたかマーダオス。到着が遅いぞ……なに? なんだ、貴様らは?』
邪竜がぼくらを見下ろす。
「おまえこそ誰だ? どうして妖精さん達を連れ去るんだ」
『ハッ! 知れたこと。高く売れるからに決まっているだろうが!』
邪竜の胸には宝玉が1つ、紐を通してぶら下がっていた。
『どうやらあのマジックアイテムに妖精を詰め込んでいるらしいのう』
『若様、ひとつ不可思議な点がございます。しゃべっているのは、あの邪竜ではございません』
邪竜がぼくらを見下ろす。
『ほぅ、なかなか賢い犬っころじゃ。どれ、わしのコレクションに加えてやってもよいぞ?』
『無礼者が。私はエレン様の忠実なるしもべ。貴様のような悪党に頭を垂れる気はさらさら無い』
『そうか、残念じゃな。フェンリルもまた高く売れるというのに』
話を聞いてる限りだと、この邪竜は本人がしゃべっていない。
それにさっきから高く売るって言ってるし……。
「まさかおまえ、人間か? 邪竜を遠隔操作して妖精を連れ去っているんだろ!」
テイマーに近い能力だろう。
契約した獣(竜)を操っているんだ。
『ほぅ……能無しではないようじゃな。して? それが事実だったとして、どこに問題がある?』
くつくつ、と邪竜が笑う。
『わしら【奴隷商人】にとって、小さく美しいこの妖精は、愛玩奴隷にはぴったりじゃ』
「だからなんだ! 誰の許可を得て連れて行く! 妖精のみんなにも家族や友達が居るんだぞ!」
『知ったことか。わしの関心は、商品がいかに高く売れるかどうか。それ以外はどうでもよいのじゃ』
なんて……酷い人だ!
世の中には、こんなにも多くの悪人がいるなんて、許せない!
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精霊使いへの敵対行動を関知しました。
奴隷商人スレイヴへのペナルティを実行します。
→【奴隷商人の精霊核】を剥奪しました。
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「ギャァオオオオオオオオオ!」
『な、なんじゃ! 邪竜よ! どうした、言うことを聞け!』
突如として、邪竜がコントロールを失ったみたいに、暴れ出す。
『服従のスキルが効かぬ! ど、どうなっているのじゃあ!』
邪竜は口を大きく開くと、そこから黒い炎を吐き出す。
ぼくは不死鳥の翼を生やし、その場からジャンプ。
「あの邪竜、奴隷商人に無理矢理言うことを聞かされてたんだね」
『どうする、エレンよ?』
「鎮圧する、殺さない。あの子に罪はないから!」
ぼくはバッ! と手を伸ばす。
「アビー、力を貸して!」
『おっけーなの』
ぼくは吸血鬼のスキル【操影】を発動させる。
『あびーの力、影を自在に操るの。相手の影だろうとおかまいなしなの』
邪竜の足下にできている影から、影の触手が現れる。
触手は何本も伸びて、竜の体をグルグル巻きにして捕縛する。
ずずぅん、と大きな音を立てて、邪竜が倒れた。
ぱりぃん! と倒れた際に、竜の体に押し倒されて胸の宝玉が割れる。
捕まっていた妖精達が排出される。
「みなさん! よくぞご無事で!」
「アンジェリカ、みんなを避難させて!」
王女様の顔を見ると、捕まっていた妖精達が安堵の笑みを浮かべる。
全員でぼくらから離れていく。
『こうなったら奥の手だ! 働けトカゲ野郎!』
突如として、びたんびたん、と邪竜がのたうち回り出す。
『邪竜の体内に仕込んだマジックアイテムで痛めつけ、無理矢理言うことを聞かせているようじゃな』
「つくづく酷いヤツだ!」
『ころせぇ! あのガキをころせぇえええ!』
奴隷商人スレイヴの命令に無理矢理従わされ、邪竜がぼくめがけて炎を放つ。
「【契約解除】!」
精霊の力を強制的に無効化させる。
竜の炎は魔法を元に作られている。
だから、黒炎は途中で雲散霧消した。
『な、なんだってぇええええええ!?』
驚くスレイヴをよそに、ぼくは邪竜に近づく。
「ギャアロォオ! ギャオオオオ!」
「大丈夫だよ。痛いの、すぐ治してあげる」
『は、はんっ! バカめ! こいつに仕込んだ場所は、脳の奥だぞ! 絶対に壊せぬ!』
ぼくはスレイヴを無視して、邪竜を見やる。
「信じて、必ず治す。少し我慢して」
「キュゥウ……」
邪竜はこくり、とうなずくと、おとなしくなる。
『おい動け! 動けこのトカゲ! くそこのっ!』
アイテムを使って、邪竜を痛めつけているんだ。
けどこの子は、その痛みを我慢してくれている。
ぼくが治すことを、信じて。
「いくよ」
不死鳥の癒やしの炎を発動させる。
邪竜の体を、青白い炎が優しく焼く。
この炎は決して肉体を傷つけない。
この子を痛めつけている病巣のみを、炎で焼いた。
「きゅーん……きゅーん……」
邪竜がおとなしくなる。
「ふぅー……成功したみたいだね」
『見事じゃエレン! 癒やしの炎をここまで自在に操るとはな!』
邪竜はぼくに顔を近づけて、ぺろり、と舌で舐めてきた。
「元気になって良かったね!」
「きゅーんっ!」
ぼくは邪竜の顎をなでる。
『そんなバカな!こんな展開ゆるさん、ゆるさんぞおおおおお!』
スレイヴが苛立ったようにして言う。
『くそがぁああ! マーダオスも協力者のバカもなにをやっている! 無能どもめぇ!』
「もう二度と妖精は勝手に連れて帰らせない! それに奪われた子達も必ず取り返す、必ずだ!」
『やってみろこのクソガキめ! 貴様のような小僧なんぞ、わしの権力でひねり潰してやる!』
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精霊使いへの敵対行為を関知しました。
スレイヴへのペナルティを実行します。
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