26話 新パーティ結成
ぼくたちはディーナと別れて、【トーカ】の街へと帰ってきた。
「まずはギルドにいって、ティナの冒険者登録だね」
「改めてだけど……エレン。アタシで良かったの? 姉さんの方が、才能あるし……」
不安げにティナが尋ねてくる。
ぼくは笑って言う。
「ぼくはティナとパーティを組みたいんだ」
「エレン……」
涙ぐんで、彼女がバッ! とぼくに抱きついてくる。
「あら♡」『若様ぁああ!?』『くっ……またしてもライバルが!』
「えっと……」
「本当に……ありがとう……アタシ、あなたに受けた恩、頑張って返すわ」
ティナがぼくから離れて、顔を赤らめていう。
「恩なんて気にしないでよ。ぼくたち対等な仲間なんだからさ」
「でも……」
「いいからほら、いこうよ!」
ぼくたちはギルドへと向かう。
ティナは涙を流しながら「……ありがとう。大好きよ」と小さく何かをつぶやいていた。
ややあって。
ぼくらはギルド会館へとやってきた。
受付にて、ティナの登録手続きをする。
「登録申請書類は受諾しました。あとは登録料金が必要です」
「登録料……そうね、お金必要よね」
ティナは懐から、革袋を取り出す。
中には宝石がジャラ……っと入っていた。
「それって魔宝石よね?」
「ええ。アタシ、お金持ってないから、これを売ろうかと」
ティナは父親から酷い扱いを受けていた。
働きに出ようとしたら、里長の娘は働いてはいけない! といってアルバイトをさせてくれない。
かといって父親からは生活費を一切貰ってなかったという。
里から出るときも、1ゴールドたりとももらってないという。
「可哀想……」
きゅっ、とアスナが、ティナを抱きしめる。
「けど、それでどうやって生活してたの?」
「死んだお母さんが、アタシに残してくれた貯蓄があったの。それがこの魔宝石。これを節約しながら売って生活費の足しにしていたの」
それでも足りないときは、森で薬草や山菜を拾って腹の足しにしていたそうだ。
「……本当に、酷い父親だね。絶対に許せないよ」
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精霊使いの能力が発動します。
里長のスキル【疫病神】を遠隔強制発動させます。
【疫病神(-S)】
→疫病、水害、干ばつ等、あらゆる自然災害を因果関係を無視して周囲に引き起こす。
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「アタシのために怒ってくれてありがとう」
ティナは微笑むと、受付嬢さんに革袋を渡そうとする。
「これを換金して……」
ぼくはその手を掴んで言う。
「駄目だよ、ティナ。それを売っちゃ」
「でも……登録料がないと冒険者になれないわ」
「大丈夫だよ。ぼくが払うから!」
目を丸くして、ティナが慌てて首を振る。
「だ、駄目よ! そこまであなたに迷惑はかけられないわ!」
「いいんだ、ティナ。ぼくたちは仲間なんだ。困ってるときは助け合うんだよ」
ぼくはアスナさんを見やる。
ザックのパーティにいたとき。
彼女はいつだって、ぼくが困っているときに、手を差し伸べてくれた。
お腹がすいたときにはパンを買ってくれたし、ランの餌を買ってくれたこともある。
アスナさんの仲間を思いやる優しさが、いまのぼくを作っている。
だから今度は、困っている仲間に、優しくしてあげるんだ!
「その魔宝石は、お母さんの形見でしょ? なら取っておきなよ」
「エレン……本当に、いいの?」
ぼくは強くうなずく。
「受付嬢さん、たしか魔物の死骸を買い取りってしてくれますよね?」
「ええ、ギルドで買い取りますよ。けれど、見たところ、どこにも死骸はありませんけど?」
「あります、アビー、出して!」
『うん……わかった』
ぼくの影の中から、吸血鬼アビーの声がする。
ずぉっ……! と、影から何かがでてきた。
「ぶ、【血塗れ熊】の死骸ですってッ!」
つい先日、森の中で出会ったモンスターの死骸だ。
倒した後、アビーが影のスキルで、収納してくれていたのである。
「影スキルって、影で攻撃するだけじゃなくて、こうしてものを収納できるんだ。アビーに協力して貰って、倒した死骸は全部回収してるよ」
「すごいわエレン……影のスキルをこんな風に活用できるなんて……!」
アイテムボックスも持っているけど、ぼくがいちいち入れないといけないから若干面倒なのだ。
「す、すごい……こんなに状態の良い血塗れ熊の死骸は見たことがない!」
たしかに、本当に死んでいるの? ってくらい、死骸がきれいだった。
「炎であぶったはずだけど、全然焦げてないのはなんで?」
『不死鳥の炎は破壊のみにあらず。再生能力を持っているからな。炭化した細胞を活性化させれば、新鮮な肉体のできあがりじゃ』
「す、すごい……エレン、あなた不死鳥の力を完全に使いこなしてるのね……」
ティナが感心していた。
「す、すぐに鑑定を行います!」
受付嬢さんが鑑定用の魔法道具を取り出す。
「あ、まだ死骸いっぱいありますよ」
あのとき襲ってきた、モンスターの大群すべての死骸を出す。
ギルドホールに、血塗れ熊の死骸の山ができる。
「す、すぐに鑑定を行います! 今しばしお待ちください!」
職員総動員で、鑑定を行う。
「な、なんだありゃすげえ!」
「Aランクモンスターを、あんなたくさん倒したのか!?」
「すげえ! さすがソロSランク冒険者だ!」
ギャラリーがぼくらに、注目している。
うう……あんまり目立つことは得意じゃないんだけどなぁ。
ややあって。
「お待たせしました!」
ドサッ……! と巨大な革袋が、受付カウンターに乗せられる。
中を少し見たら、全部金貨だった。
「ちょ、ちょっと多すぎない?」
『さすが若様! ほんの少しの間にここまでの大金を稼ぐとは! お見事でございます!』
ランがパタパタ! と尻尾を振るう。
「じゃあ、これ使ってティナの登録をお願いします」
「かしこまりましたっ! すぐにギルド証をご用意いたします!」
受付嬢さんが一度引っ込んで、奥の作業台で何かをしている。
「エレン……何から何まで、ありがとう」
「気にしないでティナ。ぼくは昔自分がして貰ったことを、してあげているだけだよ」
ぼくはアスナさんを見やると、彼女はうれしそうに笑った。
「偉いわエレン♡ 本当に偉い子」
すりすり、とアスナさんがぼくの頭をなでてくれる。
憧れの人に認めて貰ったような気がして、うれしかった。
ほどなくして、受付嬢さんが帰ってきた。
「こちらがティナさんのギルド証になります。それと、パーティ名を記入できるのですが、いかがいたしましょう?」
「そう言えば決めてなかったね、名前」
3人以上のパーティにはそれぞれ、呼称が必要となるのだ。
「エレンが決めて良いと思う」
「アタシも。あなたに従うわ」
アスナさん達がぼくに決定権を任せてくる。
ちょっと考えて、ぼくはカレンを見ていう。
「じゃあ【緋色の翼】で」
「とってもかっこいいわエレン!」
「良いセンスしていると思う」
仲間達が賛同してくれる。
「緋色の翼ですね。かしこまりました」
ぼくとアスナさんのギルド証も提出し、名前を登録して貰う。
こうして、新しいパーティ【緋色の翼】が結成されたのだった。
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