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16話 Sランク認定任務



 ぼくたちはゴブリンの巣での出来事を終えて、近隣の街へとやってきた。


【トーカ】の街。

 以前ぼくらが拠点としていた【カシクザキ】から南東に下った先にある、そこそこ大きめの街。


 人も多く治安も良い、ということで、トーカ冒険者ギルドを活動の拠点としたのだ。


 ギルド会館にて。


「カシクザキほどじゃないけど、ここも人多いね」


「そうね。エレン、迷子にならないように、手をつなぎましょう♡」


 ニコニコしながら、アスナさんが手を伸ばしてくる。


 うう……子供扱いされてる……まあでも人多いしなぁ。


 ぼくはアスナさんの手を握る。


「……よしっ」


「どうしたの?」


「ううんっ! なんでもないわ。さっ、受付へ行きましょうか」


 そのときだった。


「おおっ! もしかしてあなたは、【清廉の騎士アスナ】さんじゃあないカイ!」


 ずかずかと、ぼくらに近づくひとがいた。

 背の高くて、かっこいい男の人だった。


 鎧を着て、長剣を腰に差している。

 冒険者かな?


『清廉の騎士とはたいそうな名がついておるようじゃのう』


 頭の上で、ヒヨコ姿のカレンが感心していう。


「あの……どちら様でしょうか?」


 アスナさんの知り合いではないみたい。

 けど向こうは知っている。


 まあ仕方ない。

 アスナさん綺麗だし、強いし優しいし、人気があって当然だもん。


「ワタシは【ナルシス】。トーカ冒険者ギルドでSランク冒険者をやっているものだヨ。以後お見知りおきを」


 役者さんみたいに芝居がかった動きで腰を折る。


「初めまして、私はアスナ。こちらはエレン」


「アスナさんの弟さんでしたか! お姉様に似て可愛らしいお顔をしているネ!」


「えっと……違います。彼はパーティのメンバーです」


「フーン……君が、ネェ……」


 じろじろと、ナルシスさんがぼくを品定めするように見る。


「アスナさんと言えばSランクパーティの魔法騎士として名前も実力も知れている。けど君は誰だい? 彼女にふさわしい実力を備えているのカナ?」


 はぁ、とナルシスさんがため息をつく。


「いや、答えずともわかるヨ。こんな貧弱なお子様がSランクのアスナさんと同等の力を持つはずがないネ。間違いない」


 フンッ! と小馬鹿にしたように鼻で笑われてしまった。


「ちょっとナルシスさん。初対面の相手に、随分と失礼じゃないですか……?」


 アスナさんが険しい表情で、彼を睨む。


「おおっ! 怒った顔もお美しい……ぜひとも我がパーティに入って貰いたい」


 彼がアスナさんの手を取ろうとする。


「だ、駄目だよ!」


 ぼくは両手を広げて、通せんぼするようにして言う。


「あ、アスナさんは……ぼくの相棒だもん!」


「エレン……」


 彼女が頬を赤くして、目を潤ませる。


「どきたまえ。君じゃあ彼女と釣り合わない」


「そんなことあなたに言われる筋合いはない!」


「聞き分けのない子供は嫌いだヨ……。わからせてあげようか、世界の広さを、君がふさわしい男じゃないことをネ!」


 ナルシスさんが、ぐっ、と身をかがめる。


 その瞬間、ぼくの【先読み】スキルが発動した。


 彼は剣を抜いて、ぼくの顔の横ギリギリに突きを繰り出すようだ。


 スキルで身体強化しているらしい。


========

状況打破に適した精霊を呼び出します。


スキル【無刀取り(S)】を獲得します

→武器による攻撃を自動で掴み、武器を取り上げる。

========


 ひゅっ……! と繰り出された突きを、ぼくは指先で受け止める。


 刃を手前にひきよせ、ナルシスさんから武器を奪った。


「なっ!? そんなバカな!? 神速の突きを……受け止めただと!?」


「この剣はおかえしします。けど……アスナさんは絶対に渡しませんから!」


 大切な相棒を取られるわけにはいかないんだ。


「おい今の見たかよ……?」

「ナルシスの突きを、受け止めやがったぜ……?」


「あの少年、何者なんだ……?」

「てゆーか、ナルシスってあんな小さな子供に負けたの? うっわ、ださーい……」


 ギャラリーがぼくらに注目していた。

 ちょっと騒ぎすぎたかな?


「ナルシスさん。お気持ちはうれしいのですが、やっぱり私は彼とパーティを組みますので、申し出はお断りさせていただきます」


「なっ! このワタシよりこの貧相なガキの方がいいっていうのカイ!?」


「ええ。私はエレンの相棒ですから。それじゃ。いきましょう、エレン?」


「はいっ!」


 ぼくらは手をつないで、受付へと向かう。


「……ナルシスふられてるじゃん」

「……うっわー、かわいそー」


 くすくす、と忍び笑いする冒険者さんたち。


 ややあって。


「登録作業は以上となります」


 受付嬢さんが、ぼくらが提出した書類をまとめていう。


 一悶着あったけど、ぼくらは無事、ギルドに登録を済ませた。


「パーティのランクなのですが、おふたりともカシクザキではSランクパーティに所属していた記録が残っております。なのでトーカでも……といきたいのですが、規定により実力を測らせていただきます」


「認定試験を受ける、ということかしら?」


「そうですね。おふたりにはSランク相当の依頼を受けてもらいます。結果の如何によってSなのか、その下のAなのか決定します」


 Sランクの依頼。

 前は大人数だったから余裕があったけど、いまは2人組だからちょっと緊張する。


「わんわん!」

『何を不安がる。わらわたちもおるじゃろう?』


 ランにカレン。

 そうだ、ぼくらは2人ぼっちじゃあなかったんだ。


「Sランク認定、受けます!」


「かしこまりました。では依頼内容なのですが……」


 そのときだった。


「じゃあ【洋館の吸血鬼】の依頼が最適なんじゃないかい?」


 ナルシスさんが、ぼくとアスナさんの間に割って入る。


「吸血鬼……ですか?」


「そう。近くの森のなかに古びた洋館があってネ。そこに吸血鬼が住み着いているんだよ。その討伐サ」


 吸血鬼って、なんだか怖そう……。


『案ずるな。吸血鬼が相手なら精霊使いおぬしは無敵じゃ』


 どういうことだろう……?


「な、ナルシスさん……その依頼は……」


 受付嬢さんが焦って、何かを言おうとした。


「無理にとは言わない。他にもSランクの依頼はあるからネ。ただ一度聞いた依頼を難しそうだからって投げ出すのは、男らしくないよネェ?」


「……わかりました! 吸血鬼の討伐……やらせてください!」

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― 新着の感想 ―
[一言] >「無理にとは言わない。他にもSランクの依頼はあるからネ。ただ一度聞いた依頼を難しそうだからって投げ出すのは、男らしくないよネェ?」 え?勧めるって事は、一度聞いた依頼だって事だよね? …
[気になる点] ギルド内で剣を抜いて攻撃してもお咎めすらないなんて…
[一言] 舞台は新潟県だったのか
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