15話 ザックの失敗、ソロで迷宮探索
ディーナと別れた後、ザックはギルドへ行って金を借りた。
「おいおいザック、さらに借金なんてしていいのかよ?」
知り合いの冒険者が、ザックの身を心配して言う。
「確かにSランクパーティは、ギルドから借りられる額がほかのランクより高い。けど限度額はあるし、返せないと奴隷落ちしちまうぞ?」
ザックは不機嫌な顔になると、知り合い冒険者を殴った。
「いってぇなぁ! なにすんだよ! 心配して言ってやったのに!」
「うるせぇぇぇ! 下に見た発言するんじゃあねえぞクソが!」
苛立ちげにザックが言う。
「いいか!? おれはSランク! 最高峰の冒険者なんだ! 誰の指図も受けねえ!」
「Sランクだからって偉そうにしやがって! そんなに強いことが偉いのかよ!」
「ああ偉いさ! 強さは絶対的な価値! 弱い人間は価値のない人間なんだ! 強者に逆らわずうつむいて歩きやがれカス!」
言いたいことだけ言って、ザックはその場を離れる。
借りた金で、ザックは装備一式をそろえた。
「そうだ。スキルがないからってなんだ。おれには名だたる強敵と戦ってきた自負がある。ちゃんとした武器があれば負けるわきゃねーんだ!」
結局のところ、ザックは理解していないのだ。
彼の持っていた【勇者のスキル】。
もっと言えば、精霊使いによる恩恵が、どれほど自分を強くしていたか……。
さておき。
武器を得たザックは、前回失敗したダンジョンへと向かって歩いていた。
仲間を募ることはしなかった。
というか、できなかった。
「クソッ……! どいつもこいつも、おれを疑いやがって……! 何が、『ザックの仲間になったら、ピンチのときに裏切られるかも知れないから怖い』だ。そんなことしねーっつーの!」
エレンを置き去りにした悪評は、すでにギルド中に伝わっていたのだ。
結果、仲間にならないかと呼びかけても、誰ひとりとして良い返事をしなかったのである。
まごう事なき、自業自得だった。
「まあいい、もとより仲間を組むのはウザくて嫌いだったんだ。おれの活躍の場面が取られちまうからよぉ……」
リュックに荷物をいれてザックは草原を歩く。
強烈な夏の日差しが、頭上から照りつけてくる。
「クソッ……! あちぃ……重い……荷物って意外と重いなクソ……」
今まで荷物はエレンのオオカミに運ばせていた。
「こんなに重いなら全部置いてくれば……いや、もしものことがあったらマズいし……くそ! 煩わしいなぁ!」
ややあって。
「ぜぇ……! はぁ……! や、やっとついた……」
ダンジョンの入り口までやってきた。
すっかり体力がなくなり、一歩も動けなくなる。
「荷物邪魔すぎる……くそ! なんでこんなときに荷物持ちがいねえんだよゴミテイマーがよ……」
リュックから飲み水を取り出し、のどを潤す。
回復アイテムだけでなく、水筒だって必要なのだ。
冒険の際の荷物はどうしても多くなってしまう。
冒険者達はあまり重視しないが、荷物持ち役は地味に重要なポジションなのだ。
「一息ついたぜ。よし、いくか」
リュックを背負い、ザックは洞窟へと侵入する。
「来るのは2回目だからよぉ。迷うことはまずないぜ。道もほら、1本しかねえ。あんなテイマーいなくても迷いっこない」
と、調子に乗っていられたのは、最初の数分だけだった。
ダンジョンはよく生き物に例えられる。
体内に無数の血管や神経があるように、迷宮内の通路も数えきれぬほどある。
一度来たことがあるからといって、覚えていられるものではない。
「くそっ! ミスった! どこから来たかわかんなくなった!」
案の定、ザックは迷ってしまった。
前回ダンジョンから脱出できたのは、往路でエレンが、光る小石をまいてくれたからだ。
これは魔力を込めると光るという、魔法道具だった。
だが数日経って魔力は消え、ただの小石となってしまった。
正解のルートがわからず、迷子になってしまった次第。
「どうすりゃいい……! どうすりゃ……!」
そのときだった。
「グルルルゥウウ……!」
前方から、大型の黒い犬が出てきた。
頭に骸骨をかぶっている。
「【地獄犬】……Dランクか。へっ! ザコだな」
ザックはリュックを放り投げ、新しい剣を引き抜く。
「犬人との戦いの時は、剣が刃こぼれしてたせいで上手くキレなかった。だがこれは新品! もう負ける気がしねえ!」
剣を構え、地獄犬と相対する。
「来やがれザコが!」
敵は吠えながら、地を這うように襲いかかってくる。
飛びかかってきたところに、ザックは剣を振る。
「おら死ねぇ!」
すかっ!
「なっ!? あたらねえ!?」
がぶっ! と強く腕をかまれた。
「うぎゃぁああああ!」
痛みで剣を落とす。
腕をメチャクチャに振ってみるが、地獄犬は離さない。
「ちくしょおぉ! 離せぇ! くそ! なんで剣があたらねえ! 前は適当にふるだけで当たったじゃねえかぁ!」
さもありなん。
【自動攻撃追尾】は、勇者のスキルのひとつだ。
攻撃が必中となるスキルを失ったのだ。
適当な攻撃がモンスターに当たる道理もない。
「はなせっ! はなせぇ!」
だが牙が肉に食い込み、血がだくだくと流れ出る。
ザックは必死になって、地獄犬の頭を蹴飛ばした。
「いてえ……す、すぐに回復を……」
だが、敵はザックを休ませてくれない。
「グルルウゥ!」
「バウバウッ!」
「アオォオン!」
ダンジョンの奥から、地獄犬の群れが出てきたのだ。
「近くに仲間が居たのかよ! チクショウ!」
無論エレンがいれば、敵の接近をすぐに知らせてくれた。
そもそも敵の少ないルートを選んでくれただろう。
だが、もう彼はいないのだ。
いっせいに、地獄犬が襲いかかってくる。
「ひ、ひぎいぃいいいい!」
ザックはみっともない声を上げて、いちもくさんに逃げ出す。
リュックも武器も放り投げて、惨めに泣きながら走る。
しかし出口の位置もわからないまま逃げたところで、捕まるのは時間の問題なのであった。
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