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赤月さん、アルバイトに誘われる。

 

 レポート提出に追われつつも、単位を得るための試験が行われる時期になりました。提出するべきレポートは全て提出し終わっているので、あとは試験に臨むだけです。


 全ての試験が終われば夏休みが待っているので、ほとんどの学生は浮かれ半分、試験勉強での忙しさ半分といったところでしょう。


 講義の選択次第では、すでに夏休みに入っている方もいるようです。私も今日の午後に行われる試験を受け終われば、夏休みに突入することが出来ます。

 

 今は昼休みの時間なので、食堂でいつものメンバーで集まりつつ、夏休みをどのように過ごすか世間話のように話していました。



「私はフランスに行く予定だ」


「お、おお……。海外に行ったことないので、フランスの写真を楽しみにしていますね」


「うむ。ああ、そうだ。住所を教えてくれるならば、フランスから絵葉書の暑中見舞いでも出すよ」


「わぁっ! ありがとうございます、楽しみです。それでは後で、メールで住所を送っておきますね」


「ああ」


 さらりとフランスに行くと告げたのは来栖さんです。彼女はフランス人と日本人のクォーターで、親戚がフランスにいるので長期休暇を利用して会いに行くのでしょう。


「僕も夏休みの大半を熊本の実家で過ごすつもりだ。皆も実家に帰るのか?」


 奥村君は焼き魚定食を食べていた手を止めてから、周囲を見渡すように訊ねます。

 そういえば、奥村君の実家は熊本県だと言っていましたね。一人暮らししている家から約半日かけて実家に帰るそうなので、移動が大変みたいです。


「そうだね。僕ら三人は隣の県が出身地だけれど、実家には一週間程、帰るつもりだよ」


 だよね、と確認するように私とことちゃんへと視線を向けて来たのは白ちゃんです。三人で実家に帰る予定なので、帰り道の電車の中でどのように過ごそうか計画中です。


「……それで、まだ伊織は電話から戻ってきていないのかな?」


「そういえば、さっきから大上の姿を見ていないな」


 ラーメンを食べることに集中していたことちゃんは大上君の姿がないことさえ気づいていなかったようです。


「席を立ってから結構、時間が経ったけれど、何か悪い連絡でも来たのかな」


「どうなんでしょうね……」


 白ちゃんも私と同様にどこか心配するような表情を浮かべています。

 先程、昼食を食べ終わったばかりの大上君のもとへと珍しく電話がかかってきたため、彼は今、席を外しているのです。


「まだかなぁ……」


 大上君が消えていった方に視線を向けますが、帰ってくる気配はありません。

 すると、来栖さんは食べ終わったお皿が載ったトレイを持って、すっと立ち上がります。


「ふむ、ならば私達はそろそろ試験の準備をしに向かおうか」


「そうだな。あと十五分程で始まるし」


 どうやら昼休みの後に、来栖さんと奥村君は試験が控えているようです。私は残っている試験が四限目なので、まだ時間に余裕があります。


「試験、頑張って下さいね」


「そちらもな。それじゃあ、またな」


 来栖さん達がトレイを持ったまま、返却口へと返しに行く後ろ姿を眺めつつ、大上君が帰ってくるのを待っていると、どうやら電話を終えた彼が少し慌てた様子で戻ってきました。


「いやぁ、参ったよ~」


 大上君はどこか困ったような表情を浮かべながら、私の目の前の席へと座ります。


 そして、トレイの上に載せていた水が入ったコップを手に持つと、喉が渇いていたのか一気に飲み干しました。

 夏場ですし、長時間喋り続ければ喉も渇くことでしょう。大上君が落ち着いたのを確認してから、私は彼へと話しかけます。


「どうかしたんですか?」


「うーん……。それがねぇ、実家からの電話だったんだけれど……」


 もしや、大上君の実家で何か不幸なことがあったとか、そのようなお話でしょうか。

 私達が身構えていると大上君は肩を竦めながら、その場に残った三人を見渡して、一言呟きました。



「三人とも、神社でのアルバイトに興味ないかな?」


 


いつも読んで下さり、ありがとうございます。

今年最後の更新です。気付けば、「大赤」を連載し始めてから8ヶ月程が経っていました。

イケメンな変態を書きたいと思って始めた連載でしたが、今ではたくさんの方に読んでいただけて嬉しく思います。

今回から新章が始まりますが、これからも二人のイチャイチャは増していくので、どうか温かく見守っていただければと思います。

長文となりましたがありがとうございました。

また、年始で忙しいので、次の更新は1月6日くらいを予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それではよいお年を。

 

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