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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
二章 焔の剣士と魔術師ギルド
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喧嘩の代償

「会いにきたって……こっちに来て大丈夫だっ――」「これは一体何の騒ぎですか?」

 レインさんに尋ねようとした時にちょうどマリーさんが外の様子を見にギルドから出てくる。

「あ……」

「タスクさん? これはいったいどういう事なんでしょうか? 私……大人しく待っててって言いませんでしたっけ?」

 俺は静かにそう告げるマリーさんの後ろに三面六臂の神様のイメージを幻視する。

「はい……確かにおっしゃってました」

 恐怖を感じた俺は出来る限り丁寧な言葉遣いで話す。

「ですよね? 確かに言いましたよね? ところでタスクさん。そちらのエルフの女性はお知り合いですか?」

「はい……知り合いであります」

 もはや丁寧かどうかも分からない言葉で返す。

「そうですか……とりあえず中で話を聞きましょうか? そこの気絶してる人は怪我は無いみたいですが一応診療所で診てもらってください。ではタスクさん行きましょうか。エルフのあなたもご足労願えますか?」

「え? あ……はい。大丈夫です」

 いきなり話を振られたレインさんも驚きながらも笑顔で返事をする。

「ではギルドマスターの部屋で話しましょう」

 そう言ったマリーさんの後に付いていく俺の気分はまるで連行されているかのようだった。


「なんだ? また何かやらかしたのか?」

「またって……俺そんなに問題起こしてますかね?」

 部屋に入るなりおもしろがってるような笑みを浮かべながら訊ねてくるドーザに尋ね返す。

「数はそうでもないが質がな。ところでそっちのエルフの嬢ちゃんは初めてだな? エルフがこっちまで出てくるなんて何事だ?」

「はじめましてギルドマスター。レインと言います。こっちにはタスクさんに会いに来ただけですからエルフの領域に魔獣の件以外で何かあったわけじゃありません」

「タスクに会いにね……よろしくなレイン。俺のことはドーザでいい。タスクお前もだからな? ギルドマスターなんて呼び方堅苦しいから性に合わん」

「え? ああ……うん(脳内じゃすでに呼び捨てだったのは言わないでいいか)」

 パン!パン!

「はい。自己紹介も終わったところで本題に入りましょう」

 手を叩きながらマリーさんがそう告げる。

「まずはタスクさんこれを」

 マリーさんは何かの袋をテーブルの上に置く。

「これは……」

 中を確認すると金貨が入っていた。

「ホロバードの依頼達成料です。1日で達成するのは想定外でしたけど……」

「はは……ありがとうございます」

 隣を見るとレインさんがその様子を眼を輝かせながら見ていた。

「レインさんどうしたんですか?」

「え? いえエルフの領域からあまり外に出たことがないので見るもの全てが新鮮なんです」

「珍しいな。いくらエルフって言ってもそんなに箱入りな奴が今時いるとはね」

 ドーザが驚いた様子で話す。

「レインさんはエルフの姫様ですから箱入り娘って表現も間違ってはないですね」

「は?」「え?」

 俺の言葉にドーザとマリーさんが口を開ける。

「タスク。その子女王の娘なのか?」

「ええそうですけど」

「大丈夫なのか?」

「何がですか?」

「女王の娘を連れ出したりして大丈夫なのかって事だ」

「……どうなんですか?」

 俺はレインさんに尋ねる。

「大丈夫ですよ。女王からはタスクさんと一緒なら心配ないと言われてますので」

(まぁパーシヴァルもついてるしな)

「それならいいんだが……帝国の動きが気になる以上エルフと揉めるのは勘弁して欲しいからな」

 安心した顔でそう話すドーザ。

「それではタスクさんの次の問題についてです」

「……はい」

 マリーさんが静かにそう告げたので俺は神妙な態度で返事をする。

「タスクさん。先程ギルド前で起こった揉め事の経緯を説明してください」

「はい」

 俺はマリーさんがギルドの奥に引っ込んでからの出来事の説明を始めた。


「ハッハッハッ! Cランクの冒険者を寄せ付けないか。さすが俺が見込んだ男だ」

 俺の説明を聞いてドーザは大笑いしながらそう言う。

「いや笑い事じゃありませんよ。今この村にいるCランクの冒険者と言えば金獅子のマイクしかいません」

「おう。それがどうかしたのか?」

 マリーさんの言葉にドーザは興味がない様子で尋ねる。

「忘れたんですか? 金獅子を呼んだのはギルドマスターですよ? 護衛の依頼を頼むって言って」

「あ? あ~そうだったか?」

「頼まれたでしょ! お母さんから!」

「お母さん?」

 俺は突然出てきたその単語で頭に疑問符を浮かべる。

「おう。魔術師ギルドのギルドマスター・俺の嫁さんだ」

「ん? 嫁さんで……でもお母さんって」

 そう言いながらマリーさんを指差す。

「言ってなかったか? マリーは俺の娘だぞ」

「……」

「今似てないと思っただろ?」

「……いえ。お母さん似なんだろうなと」

 目を逸らしながら答える。

「それ似てない言ってるのと同じじゃねぇか!」

「そんなことよりお父さん! お母さんの頼み事どうするの? 依頼してた金獅子がタスクさんにやられちゃったから使い物にならないよ」

「え? あのマイクって人は無傷だと思いますけど?」

 俺はマリーさんに疑問に思ったことを訊いてみる。

「公衆の面前で惨敗したんですよ? しかも金獅子とか言ってそれなりに名前が売れてる人間がですよ? そんなの体は無傷でも心の方は無事じゃすまないですよ。それこそ仕事に影響が出るくらいにはね」

「……なるほど(男の身体強化が実は魔法っていうのもその辺に関係してるんだろうな~)」

 俺は心の中でも大きく納得する。

「マリー。依頼のことなら心配はいらないぞ」

「何か当てがあるんですか?」

「そこにいるだろ? 今回の事で責任を感じて進んで依頼を引き受けてくれそうな人の良い腕の立つ冒険者が」

 そう言ってドーザは笑いながら俺を指差した。

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