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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
二章 焔の剣士と魔術師ギルド
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ギルドからの呼び出し再び

 エルフの領域から帰ってきた翌日、どこからか帰ってきたことを聞きつけたのか冒険者ギルドから呼び出しを喰らったので朝食を食った後、俺はギルドに向かっていた。

(まぁどこに行っていたか訊かれるんだろうけどな)

 そう思いながら冒険者ギルドの扉を開けた。

(……なんだ?)

 ギルドに入った瞬間に中にいた何人かの冒険者と目が合ったがすぐさま逸らされる。

(敵意がある感じじゃないけど……いい気持ちはしないな)

 そのまま受付に向かい見知った顔に話しかける。

「マリーさん。おはようございます」

「タスクさん! ほんとに無事だったんですね。良かった~」

 そう言ってマリーさんは胸を撫で下ろすしぐさをする。

「無事ってどういことですか?」

「どういうことじゃないですよ……おそらく水精の森に向かったと思われる人が数日帰ってこなかったら何かあったと思うに決まってるじゃないですか!」

「なるほど……それはなんかすいません」

「はぁ……もういいですよ。それより早速ギルドマスターにお会いになられますか?」

「あ……その前にこれをお願いします」

 俺はそう言って腰掛けのバッグからヘルハウンドの犬歯を8個取り出して受付に置く。

「……もう驚きませんけどねこれぐらいじゃ。はいどうぞ」

 マリーさんは呆れたような声を出しながら金貨二枚を雑に手渡してくる。

「ありがとうございます。ギルドマスターは奥の部屋ですか?」

「ええ。前回と同じ部屋にいますのでそちらで話を聞いてください」

「わかりました」

 そのまま受付を後にしてギルドの奥に向かい部屋の前にたどり着く。

 コンコン

「おう! 入っていいぞ」

 ノックをすると中からドーザの声が聞こえる。

(また入った途端に仕掛けてこないだろうな……)

 警戒しながらドアを開けると、ドーザは普通に椅子に座っていた。

「よぉ無事だったか。まぁ死んだとは微塵も思っちゃいなかったが」

「ええ。まぁなんとか」

「それでだ……何があった?」

 俺は椅子に座りながら水精の森で起こったことの説明を始めた。


「森に魔獣が現れてそれをお前が撃退した……か。にわかには信じられんな」

 難しい顔しながらドーザが呟く。

「でも事実です。実際にエルフの中に怪我した人もいますし」

「別に疑ってるわけじゃあない。ただ魔獣が現れたとなるとこの村やエルフの領域だけの問題じゃなくなるな」

「どういう事です?」

「魔獣を放ったのは帝国の可能性があるからな。その可能性がある以上王都に報告する必要がある」

「帝国が?」

「ああ。魔獣は失われた神に関係が深い。真っ先に疑うのは当然だろう?」

「なるほど。じゃあ今日呼ばれたのはその報告っていうのに俺が行く必要が?」

「あ? あ~いや今のところその必要はないぞ。それに俺が今日呼んだのはお前がここ数日何処に行っていたのか聞きたかっただけだからな」

「そうなんですか。じゃあもう帰ってもいいですか?」

「おう! いいぞ」

 その言葉を聞いて俺は席を立つ。

「一つ聞いて良いか?」

 部屋から出ようとしたところでドーザから訊ねられる。

「なんですか?」

「お前ほんとに何があった? 何故そんなに強くなってる? 数日前は正直やりあっても負ける気はしなかったが今のお前相手だとかなり苦労させられそうだ」

「勝てないとは言わないんですね?」

「当たり前だ! お前みたい新人に簡単に負けてやるようじゃギルドマスターは務まらないんだよ。何なら今すぐ試してみるか?」

「遠慮しておきますよ。今の俺だと勝てそうにないですから」

「今の……ね」

 ドーザガ不敵に笑いながら呟く。

「ええ今のですよ。それじゃ失礼します」

 そう言ってギルドマスターの部屋を後にした。


「もう話は終わったんですか?」

 ギルドの奥から戻ってくるとマリーさんに話しかけられる。

「ええ。話が聞きたかっただけみたいですから」

「そうなんですか……あ! そうだ。タスクさんの冒険者ランクなんですけどFからEに上がりましたよ」

「え? 大した事してませんけどいいんですか?」

「はぁ……ヘルハウンドをポンポンと狩ってきたりDランクの冒険者を倒しちゃうような人がなに言ってるんですか」

 呆れ顔で溜め息を吐きながら話すマリーさん。

「ははは……すいません」

「ギルドとしては助かりますからいいんですけどね。それで今日はこのまま帰られますか?」

「あ~せっかく来たんでちょっと依頼を見てみます」

「どうぞごゆっくり」

 俺は受付を離れると依頼が張り出されている掲示板の前に移動する。

(どんなのがあるかなっと……お、これは)

 俺はホロバードの狩猟、報酬金貨10枚と書かれた紙を取ると受付まで持っていく。

「マリーさん。この依頼なんですけど」

「はい……タスクさん。また厄介な依頼を持ってきましたね」

「厄介?」

「ええ。このホロバードというは平原に生息している体長2メートルぐらいの鳥の魔物でですね。その肉は美味で料理の食材に重宝されているんですが警戒心が強くて大抵空を飛んでいるために地上にいる時間が極端に少ないから狩猟が難しい魔物なんですよ」

「だったら空中にいる時に撃ち落せばいいんじゃ?」

 俺が疑問を口にするとマリーさんは何言ってんだこいつという視線をこっちに向ける。

「それができたら苦労しないですよ。高速で空を飛んでいる魔物に弓を当てることが出来る冒険者なんてこの辺にはいませんよ」

「え? でも魔法を使えばいいじゃないですか?」

 俺がそう言うとマリーさんは今度は残念な子を見るような視線をこっちに向ける。

「あのですね……魔術師がこんな依頼やるわけないんですよ! 基本的に魔術師の人たちは国からの依頼か研究目的でしか動きませんからね! こんな常識ぐらい知っておかないと余計なトラブルに巻き込まれますよ! 分かりましたか? それで! この依頼受けるんですか?」

「は……はい! 分かりました! 受けます。その依頼受けます」

 学校の先生のような口調で捲くし立てられながら俺は依頼を受諾した。

「じゃあ早速狩りに行ってきます!」

「え? あ……ちょっと」

 俺はそのまま出口に向かって歩き出す。

(試してみたいことがあるからとりあえず買い物だな。しかし魔術師ギルドね……俺ってそこだとどういう扱いになるんだろうな……)

 そんな事を考えながら俺は冒険者ギルドを後にした。

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