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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
一章 出会いは水と共に
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新たな決意

 エルフの領域を出た俺は森の中をアスト村へ向かって歩いていた。

(なんだかんだでこの森も慣れたな。お?)

 遠くのほうにヘルハウンドの姿を見つける。

(そういえば懐が寂しかったよな……)

 ポケットの中を見ると銀貨と銅貨しか入っていなかった。

「やっぱり金貨は持っておきたいよな。よし!」

 俺は右手を銃のような形にして指先に魔力を集中させる。

「術式構成・雷・狙撃」

 指先からバチバチと放電が始まる。

雷撃奇襲サンダーレイド!」

 指先から放たれた小さな雷撃の弾は的確にヘルハウンドの頭部に命中する。

「ギャフ――」

 遠距離だったため小さくしか聞こえなかったが、ヘルハウンドはうめき声を出してパタリと倒れた。

(なんだ? 威力が上がってるのか?)

 そんなに魔力を込めた覚えがないのに小さな弾でヘルハウンドを一撃で倒したため指先を確認する。

『それは少し認識が違いますよ』

「うわっびっくりした! いたのか? パーシヴァル」

 エルフの領域を出てから声がしないのでいないと思っていたために驚いてしまう。

『いたっていうか。ずっといますよ。本体はもちろんあの水源にありますけど意識は繋がっている状態なのでいつでも会話はできますよ。領域に何か起こったら知らせることもね』

「なるほど。それは有難いな。ところで認識が違うってどういうことだ?」

『ええ。確かに先程の雷撃の威力は上がっていましたけどそれは単純にタスクが加減を間違えただけです』

「いやそんなつもりはなかったんだが……」

『でしょうね。いいですか? 今のタスクの魔力を百とするなら私の加護を受ける前のあなたはまぁ三十ぐらいでしょうかね。あなたはその三十の中で魔力をやり繰りしていたわけです。無意識にね』

「つまり魔力の量が増えた分それも難しくなったと?」

『その通りです。ちゃんとやり繰りできるように練習あるのみですね。タスク』

「魔力が増えたっていっても良いことばかりじゃなくてそれなりに大変なわけね……がんばるしかないけどさ」

『そうですよタスク。これから精霊の加護が増えていくことになるでしょうから、さらに大変になっていきますよ。しっかりしなさいタスク』

「お前は俺の母ちゃんかよ。まぁ退屈しないで済みそうではあるけどな……」

 俺はぼやきながらアスト村を目指した。


 タスクがエルフの領域を出立した後、レインと女王は部屋で向かい合っていた。

「女王様。話があります」

「何か重要な話みたいですね。レイン」

「はい。私はエルフの領域を出たいと思います」

「……その理由は何ですか?」

「はい。水精様がタスクさんに力を貸した以上水精の巫女たる私もタスクさんに力を貸すのが道理だと思うからです」

「…………」

「女王様?」

「レイン……最もらしい理由だけれども本当の理由は何かしら?」

「ほ……本当の理由なんてあ……ありませんけ……けど」

「はぁ……まぁ私としてはエルフの一族にウォーロックの血が入ることは歓迎しますし。孫がウォーロックの血を引くというのも悪くないと思ってはいますよ」

「血? 孫? 孫って……おおおおおお母さん! 何言ってるの!」

「ふふふっ。違うのですかレイン?」

「ううるさいです、とにかくエルフの領域を出ますからね! お母さん!」

「はいはい。がんばって彼を振り向かせて見せなさい」

「もう! お母さん!」

 こうしてレインはエルフの領域から出る許可を得たのであった。


「なに? 魔獣の反応が消えた?」

 玉座に座っている眼光の鋭い男が彼に跪いている男に訊ねる。

「はい。皇帝陛下。実験ために水精の森へ放った魔獣の反応が完全に消失しました。おそらく何者かに倒されたのかと……」

「あの周辺に魔獣を倒せるような実力者がいたということか? まさかエルフが倒したなどと言うつもりじゃないだろうな?」

「いえ。さすがに非力なエルフに炎毒の魔獣を倒せるとは思えません。おそらくは冒険者か魔術師が倒したのではないかと」

「なるほどな……しかしあの辺境に魔獣を倒すような実力者か……」

「どうしますか? 探りを入れておきましょうか?」

「捨て置け。仮にどんな相手が立ちはだかろうと俺が全て屠ってやるさ。むしろ楽しみが増えていい。ハッハッハッ」

 神聖レムナス帝国皇帝は不気味に笑った。


 無事にアスト村にたどり着いた俺は宿屋の近くまで来ていた。

「あれは……お~いヒナちゃん!」

 俺が呼びかけるとヒナちゃんはキョロキョロと周囲を見回した後こっちに気付く。

「あ~! お兄ちゃんだ! お父さん! お母さん! お兄ちゃんが帰ってきたよ!」

「ヒナ! 本当かい? タスクが帰ってきたのかい?」

 宿の中からハルコさんが飛び出してくる。

「心配をおかけしました……すいませんハルコさん」

 俺はそう言って頭を下げる。

「タスク……あんたって子は……そうじゃないだろ?」

「え?」

「おかえり~お兄ちゃん!」

 そう言って俺に向かって満面の笑みを浮かべるヒナちゃん。

「ほら。ヒナのほうがよく分かってんじゃないのさ」

「そうですね……ただいま! ハルコさん。ヒナちゃん」

 俺は笑顔に迎えられながら決意を新たにした。

(強くなろう……この笑顔をどんな敵が現れても守れるように……決して奪わせないように)

はじめまして時好(ときよし)りをです。一章が終わりましたので挨拶をさせてください。

まずはここまで読んでくれた方、ブックマーク登録してくれた方、評価をしてくれた方、本当にありがとうございます、励みになります。

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