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第88話 商会の闇

 ――バレスタ商会……?


 メリシアに忍び込んだ日、身を隠した馬車の乗客を思い出す。


「……あの商会が取り扱ってるのは主に酒だろう? 冒険者から奪った装備を買い取ってるなんて、信じてもらえると思ったのか?」 

「本当です!! 信じてください!! 盗品は普通の商会じゃ買い取ってくれないから、バレスタ商会は死体剥ぎの間じゃ有名なんです!!」

「証拠が無ければなんとでも言えるし、もう少しましな嘘を付くべきだったな。やっぱりさっきの約束はなしにするか」


 脅しの為に作り出した水の檻に下半身を覆われながら、死体剥ぎが懐に手を伸ばし必死に何かを探し始めた。


「まっ、待って!? 待ってください!!! こ、これが証拠です!!」


 死体剥ぎが差し出した折りたたまれた紙を受け取り、手元で広げる。


「盗品に関わらず、武器防具全般求む……シモン・バレスタ? この署名の横に押されているのは、商会印か?」

「そうです! 確認してもらえれば本物だってすぐに分かります!」

「……死体剥ぎの間で有名と言っていたが、まさかこのふざけた内容の紙をお前以外の死体剥ぎにも渡しているのか?」

「はい!!」

「こんな物を渡す意味が分からないんだが……」

「う、裏社会も信用が全てです! これをネタに商会を強請ったらただじゃすまないし、逆にこれを持ってる限り商会も僕らを裏切れない」

「そうか、じゃあばらしたお前はどの道ただじゃ済まないな」

「うっ!!」


 水の檻を解除して死体剥ぎの下半身を解放する。


「だけど約束は約束だ、あいつと同じ目には合わせない」

「それじゃあ!」


 拳ほどの大きさの水の塊を、無理やり死体剥ぎの口から胃の中へと流し込む。


「ぅぶっ!? どうして!?」

「体調はどうだ?」

「え……!? あ、大丈夫……です?」


 ――こいつの魔力に阻害されるかと思ったが、体内に入っても水魔法を操作出来るな。


 試しに、胃の中で水の塊を暴れさせる。


「ッグォア!?」


 死体剥ぎが腹を抱えながら、苦しみ出す。


「その気になれば、お前に飲ませた水の塊でいつでも殺せるから変な気は起こすな。俺に付いてきて、大人しく憲兵に投降するなら見逃してやる」

「た、たのみます! 何でもするから! それだけは――」

「何でもするなら言う事を聞け」

「……クソ!! 調子に――」

「交渉決裂だな」


 死体剥ぎから魔力の揺らぎを感じたのと同時に、彼の胸に風穴を空けながら水の塊が飛び出す。くぐもった呻き声を出しながら、死体剥ぎはそのまま事切れた。


 (あの……)

 ――……ラス?

 (大丈夫……?)


 ラスの心配する声が聞こえて、先程まで死体剥ぎ達に向けていた怒りが一気に引いていく。生き残るためには何でもするような外道にならないと決めていたはずなのに、いくら殺しが正当化されるとは言え実験感覚で魔法を使い嬲った男達の死体を改めて見て血の気が引く。


 ――俺……俺は……

 (……デミトリのせいじゃないよ。とにかく肩の怪我も心配だし、治療しよ?)

 ――ああ……


 手癖で腰に手を伸ばしたが、そこに収納鞄はない。


 (まずは外骨格を解除しないとね)

 ――……どうすればいいんだ?

 (色々と説明する前に休んじゃって、迷惑を掛けてごめんなさい……私の事をデミトリの一部だって認めてくれたから、魔法が使えたよね? 今なら解除したいって念じれば、変身が解けるはずだよ)


 ラスの言葉に従い解除したいと強く念ずると、鎧が消え装備も収納鞄も元通りになった。収納鞄を開き、カテリナ達の遺体がまだある事に安堵する。


 (……私のせいで、怪我をさせちゃってごめんなさい……変身にも付き合わせて、ごめんね? もう、デミトリが求めればいつでも顕現するから……)

 ――ラス――

 (私は……しばらく休まなくちゃいけなくて話せなくなっちゃうけど、ずっと応援してるからね!)

 ――ちょっと、ま――

 (迷惑を掛けちゃって、本当にごめんなさい……)


 その言葉を最後に、ラスは呼びかけに応えてくれなくなってしまった。


 メドウ・トロルの死体と死体剥ぎの死骸で汚れてしまった窪地の中心で、中級ポーションを飲みながらぼーっとする。


 ――愛想をつかされてしまったのかもしれないな……


 ラスは、カズマが夢を叶えられなくなった事よりも彼の行動や嘘を付いた事に怒っている様子だった。そんな主人が嫌になり、新しく選んだ主人が猟奇的な方法で人殺しをしていたら絶望してしまっても無理はない。


 ――あの時、普通に殺すのはもったいないと思った。色々試すのに、丁度いいとも思ってしまった。やはり、俺は――

 (違うからね!!)


 自責の念に駆られていると、急にラスの声が聞こえて来た。


 (休まないといけないのは……そういう理由じゃないし、攻撃されるまで巻き込まないようにがんばってるのも見てたよ……! 愛想なんかつかしてないから気にしないで!)

 ――でも……

 (本当に、気にしちゃだめだよ? あいつらのやってた事は最低だし、同じ人間だと思うから辛いんだよ。前の前のますたぁも言ってた、悪い奴は怪人? 魔物だと思わないと心が保てないって……とにかくそれだけ言いたかったの、またね!)


 そう言い残すと、またラスは呼びかけに応えてくれなくなった。ラスの残した言葉のおかげで、先程までの破滅的な思考から抜け出すことが出来た。


 ――悪人に限って、人だと思わないのは……逆にさっきの様な行動を助長しそうだが、確かに気は楽になるな……


 少し心が軽くなった所で、どうせここまでやってしまったのでもう一つだけ試すことにする。バラバラの肉片になってしまった死体剥ぎの死体を水魔法で包み、呪いを込める。


 ――五体満足じゃないと、モータル・シェイドは出現しないみたいだな。


 検証を終えて、メドウ・トロルと尋問した死体剥ぎの死体を収納鞄に仕舞った。


 ――……メリシアに戻ったら、バレスタ商会について冒険者ギルドに報告しないとな。

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― 新着の感想 ―
なんだこの話? 主人公の心情もいつの間にか長年の相棒みたいになってるラスとの関係値も全然理解できない ここまでの内容で愛想尽かされたっていうフレーズ出てくるの何?
神器ラスは、防具を着せるので、よいアイデアではないか。酷評には賛成できない
ラス要る??? ただ邪魔なんだが、不愉快でしかない
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