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第482話 妙な冒険者

 相も変わらずギルド職員以外無人の冒険者ギルドへと足を踏み入れた直後、受付の裏に立っていたギルドマスターと目が合い小走りでこちらに寄って来た。


「デミトリ……!」

「久し振りだな、イーロイさん。報告が遅れてすまなかった」

「気にしないでくれ、むしろセレーナに途中経過の報告を託してくれて助かった位だ! おかげで、デミトリが調査してた森の区画に他の冒険者達が立ち入らないように調整できた」


 幽氷の悪鬼が出現した際、ボルデを拠点にしている冒険者達は領外へと避難しなかったと聞いていた。


 森に滞在中、調査依頼を請けた冒険者と一切出会わなかった事を不思議に思っていたが……俺がアイリスと滞在していた区域を立ち入り禁止にしていたのであれば、誰とも会わなかったのも頷ける。


「それが今回の調査報告書か?」

「ああ。初めての作業で冒険者ギルドの報告書の形式に沿っているか不安だが……」

「見ても良いか?」


 内容が物騒過ぎる為アイリスに読み書きを教えるには不適切と見なし、彼女が寝ている間に書き上げた報告書をイーロイに手渡す。


 この世界で初めて受けた筆記試験も、初めて提出する報告書も冒険者ギルドが絡んでいる事に奇妙な縁を感じている隙に、物凄い速さでイーロイが報告書の中身を確認していく。


「人語を話す魔物……!? ……しかも回収できた遺体の数と現場に残された装備品の数が合わなかったのか……」


 ……あのゴブリンが異世界人だった事を報告すべきか最後まで悩んだ。


 神の存在が当たり前に認められているこの世界で、あんな邪悪な存在を神々が世界に招いたという事実がもたらす混乱と事実をそのまま報告する事を天秤にかけた時、知らない方がましだろうと思い秘匿してしまったが……正しい選択だったかどうかは分からない。


「この短期間で、ここまで詳細な報告書をあげてくれて本当に助かる」

「お眼鏡にかなったみたいで良かった。最後の項までまだ目を通していないみたいだから一応補足させてくれ」

「これは……」

「あの森にあまり詳しくないから精度については保証しかねるが、俺が発見して破壊した罠の位置や数も報告書に纏めている。それとギルドの職員が検分する時記録を残すから不要かもしれないと思ったが、俺が回収した犠牲になった冒険者達の遺体や、彼等の所持品も一覧として報告書に記載しておいた」

「何から何まですまねぇ……!! 幽氷の悪鬼だけでも手が余ってたのに、その陰に隠れて人を狩る魔物まで森に住み着いてたなんて……ちなみに、報告書には討伐済みって書いてあるが――」

「一応件のゴブリンの死体は回収している……ただ、原形を留めていない」


 今更だが、人語を話す魔物の死体がなければ俺が報告した内容の真偽も見極められないんじゃないか……? 感情に身を任せ、怒りのまま圧縮魔法に掛けてしまったのは間違いだったかもしれない。


「すまない……」

「そんなに申し訳なさそうな顔をしないでくれ。人語を話せる魔物は数自体は少ねぇけど、遭遇した冒険者達からの報告でギルドもある程度把握してる……魔物が話した内容に逆上した冒険者が、過度に遺体を損傷させるのも珍しくない話だ」

「だが、証拠が――」

「奴が従えてた配下の死体は残ってるんだろ? 回収された遺体を検死すれば、ゴブリンの被害に遭ったのかどうかなんてすぐに分かる。それに、ここまで詳細な報告書を作っておいて『実は全部作り話でした』なんてあり得ないって事位分かるから心配するな」


 安心させるように説明してくれたイーロイのお陰で落ち着きを取り戻す。


「取り乱してしまってすまない。奴は……文字通り人を狩る化け物だった。あまりの醜悪さに後先考えずに消す事を優先してしまった」

「……人語を話せる魔物は本当に厄介だな。同じ言語で話してるはずなのに()()()()()()()せいで参っちまう冒険者が多いって聞く。デミトリももし引きずりそうだったら、俺達に遠慮なんかせずに依頼を請けないで休んでくれよ??」

「……ありがとう、でも大丈夫だ」


 イーロイとしては俺が城塞都市ボルデに滞在している間、出来る限り依頼を請けて欲しいと願っているだろうに……。


「依頼の報告ついでにもう一つ伝えたい事がある。元々は年明けまでボルデに滞在する予定だったが、少しだけ期間が延びそうだ」

「そうなのか? 冒険者ギルドとしてはありがてぇ限りだけど……いつまで居るんだ?」

「一旦は未定だな。取り敢えず年が明けてすぐにボルデを発つ予定が無くなった事以外は何も決まっていない状態だ」


 ケイレブ殿から直接イーロイに情報共有がされるかもしれない以上、俺の方から事細かに話すのは止めておいた方が良いだろう。とはいえ、今話した以上の情報を持っていないので話したくても話せないのだが。


「そう、か……滞在期間が延びるなら伝えておいた方が良いな。デミトリ、妙な冒険者に声を掛けられたら教えてくれねぇか?」

「それは勿論問題ないが……妙な冒険者??」

「顔馴染みのない冒険者が何人かギルドに来てるんだ。今受けられる依頼の確認だけして立ち去ったり、誰かを待ってるわけでもなく酒場で時間を潰したり……」


 ……依頼を受注しないでギルドでたむろする事は別に禁じられている訳ではないが、状況が状況なのでイーロイの目に留まってしまうのも分かる。


「それ自体は普段なら何の変哲もない行動だけど今ギルドと住民の関係は微妙だろ? 知らないにしても、どうにも行動が腑に落ちねぇんだ。俺の考えすぎかもしれねぇけど……一応デミトリも注意してくれると助かる」

「……分かった」


 必要であれば話すだろうと受け身にならず、俺の方からイーロイと連携して欲しいとケイレブ殿に進言した方が良さそうだな。

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