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第480話 賠償金の使い道

「会食の場でも説明したが幽氷の悪鬼を倒したのは俺ではなくユウゴだぞ? 俺がボルデに居たとしても大した抑止力にはならないと思うが」

「デミトリ……」


 思わず漏れ出てしまったような、心底残念な声色でエリック殿下に名前を呼ばれて困惑する。


「……ここまで自覚が無いのは意外ですね。デミトリさん、今まで伝承で語り継がれるだけの存在だった幽氷の悪鬼や、勇者の活躍を聞いてもほとんどの人は現実味を感じられないでしょう?」

「それは……そうかもしれないな……?」

「逆にワイバーンはヴィーダ王国全域で決して少なくない被害を毎年出しています。狩猟の推奨等級が最低でも白銀級のパーティーからなのも、一般常識として知れ渡っている危険な魔獣です」


 ……そこまで危険な存在を足代わりにして、レオが放置するだろうか……? 彼の性格から考えにくいが――。


「聞いていますか??」

「あ、ああ。すまない、少しだけ考え事をしていたがちゃんと聞いている」

「とにかく! 幽氷の悪鬼が去ってもワイバーンが現れる危険な山というだけで、ヒエロ山の危険性に対する不届き者達の認識は跳ね上がった事でしょう」

「それは理解できるんだが、ヒエロ山の危険性と俺は関係が――」

「デミトリさん……ワイバーンをソロで倒せる人物が王族の賓客で、ヴィラロボス辺境伯邸に宿泊しながら冒険者ギルドと連携してヒエロ山の調査をしているんですよ? そんな人間と鉢合わせる可能性があるだけで並の小悪党は諦めます」


 急に息を巻いてリカルドはどうしたんだ? それに、人のことをクマか何かみたいに……大体――。


「倒せたのは毒のおかげで――」

「毒とか関係ありません! どんな手段を使っても一人でワイバーンを倒せてる時点で――」

「リカルド、落ち着いて……! いつの間にか結構飲んでたんだね」

「リカルド君、水を用意する」


 話に集中していて気づかなかったが、リカルドの顔を見ると大分赤らんでいる。妙に強い酒だとは思ったがあれは俺の勘違いじゃなかったのか。


「すみません、少し酔ってしまったみたいです……」

「リカルド君が酔うなんて珍しいな。いつも気を張ってるみたいだから、気楽に飲んでくれたのなら嬉しい」

「お義父さん……」


 別にそう言う訳ではなさそうだが、照れくさそうにしながらもリカルドはケイレブの言葉を否定しなかった。


「滞在期間を延ばす事についてデミトリの了承を得られたんだし、今日は一旦お開きにしよう? 今後については明日以降も話せるから」

「そうさせて頂いた方が良いかもしれませんね」


 夜も更けて来たし、解散するには良い頃合いかもしれないが……。


「……」

「どうかしたの? デミトリ」


 俺が口を出すべき事ではないので切り出すべきかずっと悩んでいたが、却下されるとしても提案するだけなら許されるだろう。


「出過ぎた提案かも知れないが、俺が一時的に預かっているアムール王国から渡された賠償金があるだろう? あれを国境整備と、ヴィラロボス辺境伯家とセヴィラ侯爵家の事業開発資金として利用するのはどうだ?」

「え?」


 俺の突拍子もない発言に、エリック殿下だけでなくリカルドもケイレブも目を丸くしている。


「勿論、王家に賠償金を献上した後別の用途で活用するつもりだったのであれば異論はない。ただ国境線が変わってしまったのも、それが理由でヴィラロボス辺境伯家やセヴィラ侯爵家が新たな課題に直面しているのも、元はと言えば全てアムール王国のせいだろう? 賠償金の使い道として、一番綺麗な落とし所だと思ったから一応提案してみた」

「……いいの??」


 『いいの?』と聞かれても質問の意図が分からないな……エリック殿下の意外な反応に混乱して、返答が少し遅れてしまう。


「……良いも悪いも、あれはそもそも俺の物ではないだろう?」

「それは……」

「デミトリさんは、本当にそれが最善だと思うんですか?」


 今度はリカルドに質問されてしまったが、俺はそんなにおかしい事を言っているだろうか?


「俺は政に関わっていないし、正直に答えると最善かどうかは分からない。素人の考えで恐縮だが……当分セヴィラ侯爵家とヴィラロボス辺境伯家への支援で王家に負担が掛かるだろう? 最悪なのは王家の財政に負担を掛けつつ、資金を調達できずリカルド殿が言っていた事業開発も進められず、ずるずると時間だけが流れて行く事だ」

「そのために賠償金が宛がわれても構わないと」

「事業開発が上手くいくかどうかも分からないのに、何も出来ずに手をこまねいているよりはましだろう。国境が安定しなければ将来的に国内にまで問題が波及するかもしれない以上、早急に手立てを講じるべきだ。それに、資金難を理由に氷贋鉱を狙った人間に付け入る隙を与えてしまうのも避けたいだろう?」

「「!?」」


 話を聞いている内にそう言う事も有り得るだろうと思い鎌を掛けるつもりもなく発言したが、一気に表情が険しくなったケイレブとリカルドを見て嫌な想像が確信に変わる。


 氷贋鉱を手に入れる手段は別に盗掘に限られない。


 ヴィラロボス辺境伯家が資金繰りに困っているのを嗅ぎ付けた人間が、採掘権を担保に融資を申し出て来てもおかしくないと考えたが……二人の反応からしてそこまで直接的な交渉ではないにしろ、既に何かしらの接触を受けた後かも知れないな。


「賠償金については改めて宣言するが、一時的に預かっているだけで俺の物ではなくヴィーダ王家の物だ。どう扱われても一切異論を唱えるつもりは無い……その前提で、今の話は俺の個人的な提案として受け取ってくれ」

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