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第479話 抑止力

「正式には採掘されていないと言う事は――」

「お察しの通り、量は少ないですが盗掘されています」


 リカルドとケイレブが揃って溜息を吐く。


「隣領のプラード子爵領で不審な人の動きがあると王家の影から報告がありましたし、これから本当に大変になりそうです」

「不審な人の動きって……もしかして氷贋鉱を狙ってるの?」

「それだけが目的かは定かではありませんが、氷贋鉱が目当ての人間は少なくないでしょう。ヒエロ山に眠る財宝(希少鉱石)は幽氷の悪鬼と同じ位有名ですから」


 リカルドの説明に再びケイレブが大きなため息を吐き、悔しそうに膝の上に置いた拳を握り締めながら話し出した。


「幽氷の悪鬼を刺激しないようにヴィラロボス辺境伯家は代々ヒエロ山への不法な侵入を禁じ、領軍の巡回もしていました。それでも欲に目が眩んだ冒険者や商人全員を止める事が出来ず……」

「お義父さん、それはヴィラロボス辺境伯家のせいではありません。アムール王国側にも侵入経路があるのに加えて、ヒエロ山の麓の森は禁止区域に設定できない都合上巡回警備にも限界があります」


 ……あの森は、セコーヤの木だけでなくボルデにとっては貴重な食料を確保できる狩猟の場だと冒険者ギルドのイーロイから聞いている。


 立ち入り禁止にする訳にも行かず、広大過ぎて監視が行き届かないとなると手の打ちようが無いのも理解できる。


「ケイレブ殿、ヒエロ山に侵入を許してしまった事にはどうやって気づいたんだ?」

「巡回中に不自然な足跡や野営の痕跡を発見した場合周辺の調査を行うんだ……ほとんどの場合、物言わぬ侵入者の死体が発見される」

「幽氷の悪鬼が討たれる前のヒエロ山は、登れば上るほど屍人に襲われる魔境でしたから当然ですね」


 俺も屍人の群れと戦った時その数には驚いたが……確かに盗掘目的で訪れた人間が、容易に対処できる敵の量ではなかったな。


「ほとんどの場合という事は、何人かは氷贋鉱の採取に成功したのか……盗掘に成功しても、氷贋鉱が急に市場に出回ったら騒ぎにならないか?」

「命懸けで盗掘を試みる不届き者達と言えどそこまで馬鹿ではないらしく、我々が確認できた範囲では新しく採掘された氷贋鉱は他領の闇市に卸されていました」


 リカルドの口から当たり前のように闇市の存在が明かされたが……一般的に知られているものなのだろうか? 違法に取得された品の売買がされているのを取り締まらず見過ごす理由は幾つか思い浮かぶが……。


「闇市に流通した氷贋鉱はごく少量ではあるものの、その全てがかなりの高額で取引されていました」

「盗掘された氷贋鉱の行方は追ってたんだね」

「ええ、王家の影にもご協力頂き……その結果、由々しい状況なのが発覚しました」


 ……やはり、闇市を取り締まらずに放置しているというよりも盗品の流通経路と売買に誰が関わっていたのかを調査するために敢えて()()()にしているみたいだな。


 俺が闇市について考察している間、ケイレブが自分を落ち着かせるように酒を仰いでから話を続けた。


「入手難度の高さも相まって色々な噂に尾ひれが付き、氷贋鉱を手に入れれば一生遊んで暮らせるだの、氷贋鉱はヒエロ山に潜む幽氷の悪鬼を封じた聖女の魔力の残滓だとか……良くない形で有名になり過ぎた結果、今でも手に入れようと目論む人間が後を絶たない」

「私がボルデに到着してすぐに幽氷の悪鬼の襲撃があったので、まだ資料全てには目を通せていませんが……先日ヒエロ山への不法入山者の検挙資料をお義父さんに見せてもらった時は目を疑いました」

「私も感覚が麻痺していたが、改めて見るとあの量は異常だった……」


 曰く付きで、採取が命懸けの希少鉱石か……。


 安定して採掘が出来るようになり、価格が暴落しないように流通を調整すればヴィラロボス辺境伯領にとって一番の財源に成り得るが、不法な盗掘を含め紐づいて来る問題も特大なのが厄介だな。


「先程隣領で不審な人の動きがあったと言っていたが……」

「エリック殿下にお答えした通り全員が氷贋鉱目当てとは言い切れません。はっきりとしているのは、幽氷の悪鬼討伐の報とセヴィラ侯爵家のヴィーダ王国への加盟報告を受けて、何かしらの目的の下、人間が城塞都市ボルデに集まっている事だけです」


 全員が全員邪な考えを持った人間ではないだろうが……今のボルデにとっては迷惑となる人間が多そうだ。


「話が大分反れてしまいましたが、先程城塞都市ボルデでの滞在期間を延ばして頂きたいとお願いしたのもこの件に関係しています」


 集まって来た人間と俺に一体何の関係が……?


「俺は別に構わないが……関連性が見えないな」

「幽氷の悪鬼を倒した勇者はもう居ませんが、勇者と共に戦った滅死の魔術士が城塞都市ボルデに滞在している。それだけでなく、冒険者ギルドの依頼を請けてヒエロ山の調査を行っている……この事実が不届き者達に足踏みさせる抑止力になっています」


 抑止力……? 流石に表現が大げさすぎないか? 前世の大量破壊兵器みたいな扱いをされても困る。

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