第471話 いいお節介
「余計なお節介だったか?」
「いや、助かった……さっきはありがとう」
そりから離れているものの、アイリスを安心させるために視界から外れない位置までニルに連れられた。
森で過ごしている内に気付いたが、このままだと聴覚が良いアイリスに会話が筒抜けにならない。そう疑問に思ったのとほぼ同時にニルが見慣れた魔道具を取り出した。
「それは……話したい事は、わざわざ遮音の魔道具を使う必要のある内容なのか?」
長いのか短いのかは個人の感覚によるが、およそ一週間もあれば何かが起こるには十分な期間だ。また何かがあったのかとげんなりしているとニルが苦笑した。
「私が伝えたい事は別に機密情報でも何でもないからそう身構えないでくれ。わざわざこれを使う必要も本来は無いし、後でアイリスに私が話した事を伝えても良い」
「だったら、何故――」
「さっきのお節介ついでだ。アイリスはデミトリの事を良く言えば信頼して頼っているが、あの様子だと少し依存気味だろう?」
姉を失くして見知らぬ人の街に連れて来られたんだ、ある程度は仕方がないと理解して欲しいが……事情を知らないニルから見てそう映っているのは確かに心配だ。
「否定はできないが……」
「獣人は耳が良い。形として別れただけではなく、私が内密にデミトリと話したい事があって、ちゃんとそれをアイリスが聞けない事に意味があると思わないか?」
今はまだ、そこまでする必要が無いと思ってしまうのは俺の甘さだろうか……。
「私は保護された側の心情はともかく、誰かを保護した側の経験ならある。寄り添ってあげようとするのは良い事だが、片時も傍を離れないなんて不可能だろう?」
「……そうだな」
「デミトリにも個人の時間や他者との付き合いがあって、それをアイリスに尊重してもらう為にも少しずつこういった線引きをするのは大事だ。将来的にデミトリに依存して、傍に居ないと不安で何もできなくなるのを望んでるなら話は別だが」
「そんな訳ないと分かってて言っているだろう……」
良薬口に苦しと言うが、アイリスと関わり始めて早めの段階でニルに指摘して貰えたのは良かった。俺の事を気遣った結果、笑えない冗談を言うのは勘弁してほしいが……。
「くく、馬鹿な事を言われても余裕で流せる元気があるならまだ大丈夫そうだな。だが油断は禁物だ、自分が保護したから全部自分でどうにかしようとは考えないように。私を含めちゃんと周りを頼ってくれ」
「! 分かった……ありがとう」
「順序が逆になってしまったが、エリック殿下からもアイリスの保護について承諾を得ているから安心してくれ」
「良かった。代わりに話を進めて貰ってしまってすまない」
「何を言っているんだ。仲間なんだからそれ位当然だろう」
当たり前だと言わんばかりに、呆れた表情を浮かべてくれたニルに心の中でもう一度感謝する。
「よし。アイリスの件はもう大丈夫そうだしそろそろ本題に入ろうか」
「えっ、さっきの話題が本題じゃなかったのか?」
「違うな。城塞都市ボルデの復興作業は佳境を超えて、住民達も普段の生活を取り戻し始めている」
「ボルデに戻った時、大分街の模様が様変わりしたとは思った」
「それに伴い、ヴィラロボス辺境伯夫妻が漸く邸宅に戻って来れそうなんだが……デミトリと是非会ってみたいとお願いされている」
「俺と……」




