第465話 強制回復
「おきない」
「ちょっと疲れてるみたいね」
「わたしのせい……?」
「デミトリはそんな風に思ってないと思うわよ」
それにしても四日間も寝ないのは流石にやり過ぎね。デミトリにはもう少し自分の身を顧みて欲しいわ。
「……」
横たわっている姉の傍を離れたアイリスがデミトリの傍に寄って座り込んで、未練が残る視線を姉から引き剥がしてからゆっくりと瞳を閉じる。
「まいにちごはんをくれてまもってくれてるのに、これいじょうめいわくかけたら、おねえちゃんにおこられる……」
コボルドの生態には詳しくないけど、群れの長と認めたデミトリに迷惑を掛けたくないからって自分の悲しみを呑み込めるのね。
「心の準備が出来たみたいね」
「うん……おねえちゃんのぶんも、がんばる」
がんばる……精一杯生きるって認識で問題なさそうね。再び開いたアイリスの瞳には力強い意志が宿っているのが見える。
「偉いわよ、アイリス……お姉ちゃんの事は私に任せて」
「てぃしあちゃんにまかせる?」
「私が責任を持って連れて行ってあげるわ」
「……うん、おねがい」
逡巡した後了承してくれたアイリスを見てほっとする。いつまでも手元に姉の遺体を置くのはこの子のためにならないから、ちゃんと別れを受け止めてくれたようで良かったわ。
呼び出した闇の中に消えていく姉の姿を名残惜しそうに見つめたアイリスが、決心した様に短く頷いてから闇に消えていく姉から顔を背けた。
すんなり別れを受け入れられたのは、デミトリがアイリスに寄り添ってあげたお陰ね……知らぬ間にセイドが調教神の祝福を授けてたみたいだからその影響もあるかもしれないけど。
「世話焼きなのは昔と変わらないわね……」
「せわやき?」
「こっちの話だから気にしなくても大丈夫よ」
涙を堪えているのを隠したかったのか、顔を背けたまま質問して来たアイリスの頭を撫でる。
「でみとりもせわやき」
「それは……そうね」
周りと同じ位、自分自身の世話をするのに注力してくれたら嬉しいんだけど……。
「わたしもでみとりのせわやく!」
「ふふ……そうしてくれるとありがたいわ」
「うん! それじゃあまってて!」
「アイリス!?」
「たべものとってくる!!」
物凄い勢いで天幕を飛び出て行ったアイリスを見失わないように意識しながら近辺の森を探る。進化したアイリスの力量なら……手古摺りそうな相手はいないわね。
だとしても進化したばかりだから無理をするべきじゃないって、デミトリが起きてたら全力で止めそうだけど……今回の狩りは多分アイリスにとってかなり大切な事だと思う。
「我慢してね?」
「んー?」
微睡の中で起きようと藻掻くデミトリに、睡眠魔法を掛け直しながら意識をアイリスの方に集中する。
「危険だと思ったらすぐに呼び戻すから、心配しないでね」
「ん……」
四日間も寝ずにいたのに半日寝たぐらいで起きようとする困った愛し子を寝かしつけて、意識をアイリスの方に集中させる。
「私が見守ってる限り絶対安全だから」
「……」




