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第460話 着替え全ロス

「本当に、本当にありがとう……!!」


 寝不足で頭が働いていないのと眼前の光景を処理しきれていなくて反応に困ってしまう。腕輪から解放したグスタヴォにカルメンがある程度事情を説明して、そのまま囚われていた獣人達を一人ずつ解放していったが――。


「でみとりはああいう、ふく? きない?」


 目の前に並んだ獣人達が皆族長のグスタヴォに倣って頭を下げているが……グスタヴォと体格の良い数人の獣人を除いて、男女問わずメイド服の様なものを着せられてるのはなぜだ??


 アイリスの質問が聞こえたのか、前列に立っていた男性達が耳を立てて顔を赤らめている。


「アイリス、俺は着ないが別に好きな服を着るのは個人の自由――」

「「「「好き好んで着てるわけじゃないです!!!!」」」」

「皆、気持ちは分かるが恩人に対して声を荒げるのは失礼だろう」


 グスタヴォに諫められた獣人達が恥ずかしそうに頭をまた下げてしまった……もしかするとこの服装はシンゴに強制させられていたものなのかもしれない。


「迂闊な発言をしてしまってすまない。流石に替えの靴は人数分持ってないが、シャツとズボンなら貸せるから着てくれ」


 収納鞄から予備の着替えを数着取り出して一番近くに立ってた男性に押し付けるように渡す。


「そ、そこまで世話になるのは――」

「その服装は好んで着てるわけじゃないんだろう? 恥ずかしがっているのを分かって放置するのはこちらも辛いから、俺を助けると思って着替えてくれ。尻尾を通すためにズボンに穴を空ける必要があったらこれを使ってくれて構わない」

「……! かたじけない!!」


 目に涙を溜めながら渡した予備のナイフを抱えた獣人が、仲間と一緒に服を破く勢いで脱ぎ捨て始めた。


「デミトリ、ありがとう……『華奢な体系だからメイド服の方が似合う』とシンゴに言われて、さもあの服を着れるのが嬉しいかのように振舞うのを同胞たちは強いられていた」

「それは……泣きたくなる気持ちも分かるな」


 女性の獣人達が羨ましそうに着替える男性陣を見つめているのがグスタヴォ越しに見える。彼女達も服装を強制させられていた可能性が高いな……。


「他の皆の着替えについては申し訳ないが少しだけ我慢してくれ」

「デミトリ、我々は助けて貰えただけで十分だ。これ以上施しを受ける訳には――」

「シンゴがどこからグスタヴォ達を攫って来たのか分からないが、服だけでなく帰るまでの路銀はどうするんだ? 言い方は悪くなってしまうが、追い詰められた末必要に駆られて賊に身を堕としてしまわれたら敵わない。素直に助けられてくれ」

「……恩に着る」


 複雑な表情をしているが、助けられた手前強く出られないのかグスタヴォが納得してくれて助かった。今の精神状態でまた誰かと言い合いに発展したら流石に堪える。


「それで、一人を除いて腕輪から解放したわけだが……そろそろ理由を説明してくれないか?」

「我々がシンゴに掴まってしまったのはファビオラに騙されたからだ。体の自由を取り戻した今、彼女と対峙したら八つ裂きにしてしまう」


 言葉の綾ではなさそうだな……グスタヴォだけでなく他の獣人達も一瞬にして怒気を纏ったのが分かる。


「……シンゴに操られていた訳じゃないのか?」

「違うな。どんな取引をしたのか分からないが、彼女だけ意志の自由が許されていた」

「あの子、『シンゴに管理を任された』って言って散々私達を……!!」


 苦虫を嚙み潰したような顔でそう吐き捨てたグスタヴォの横で、カルメンが絞り出すようにファビオラの所業について補足しようとしているが怒りのあまり言葉に詰まっている。


 何をしたのかは分からないが相当やらかしていたのだけは何となく分かるな……。


 いくらシンゴの蛮行の被害者とは言え俺はグスタヴォ達の事を良く知らない。彼等の言葉を鵜呑みにするつもりは最初からなかったが、実際シンゴの指示に完全に従っていたカルメンと違ってファビオラは好き勝手に行動していた。


 話しの辻褄が合うだけでなく、獣人達が結託して今こんな嘘を付く必要が全く無い。信じてもよさそうだが……。


「自分から聞いておいて申し訳ないが、ファビオラの事は一旦忘れよう。今解決すべき問題は腕輪をどうするのかだ」

「腕輪を……?」

「俺がシンゴを真似て皆の名前を呼んで呼び出す事が出来ただろう? シンゴが死んでも呼び出す力が使えるなら、腕輪の中に閉じ込める力もまだ使えてもおかしくない。また囚われるのはごめんだろう?」

「もちろんだ!!」


 俺の発言に怒りを露にしたグスタヴォ、警戒する者、恐怖が顔に色濃く出た者……反応は十人十色だったが二度と腕輪の中に閉じ込められたくないという気持ちだけは共通しているな。


「こんな危険な代物を野放しにしておけないが……破壊しようにも、迂闊に触って外せなくなったら困る」

「……触れたら危険なのか?」

「シンゴがまだ生きている時、腕を切り落として腕輪を外そうとしても無理だった。なのにシンゴが死んだ瞬間何の抵抗も無く腕輪が外れた……所有者の死を認識して腕輪が外れたなら、腕輪に触れて新たな所有者と認識されてしまったら、外れなくなるかもしれないだろう?」

「なるほど……」

「試した訳じゃないからそうなると断言できるわけじゃないが……とにかく扱いに困るな」

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