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第455話 仲間に託して

「「いいよ」」


 考えるそぶりも見せずヴァネッサとセレーナに了承されてしまった。即答されるとは思っていなかったので一瞬返答が遅れてしまう。


「……お願いした俺が言うのもなんだが、二人共そんなに安請け合いしない方が良いと思うぞ?」

「そんな事言われても……私に謝罪したいのは足手纏いって言った事についてでしょ? あの時はああ言うのが正しい判断だったしもう気にしてないよ」

「私も……ずっと話せなかったのがデミトリのせいじゃないのは分かってるし、シエルに頼んでまで手紙を送ってくれたから大丈夫だよ?」


 謝罪したい内容を的確に言い当てているし、全く気にしていないと言う訳でもなさそうだが……二人が目を瞑ってくれようとしているのに蒸し返すのは逆に失礼だろう。


「二人共ありがとう」


 感謝しつつ、どこかでちゃんと埋め合わせをしようと胸に刻む。


「ちなみにシエルは…‥?」

「今日もさそったんだけど……まだ外に出たくないみたい。ナタリアさんが預かってくれてるから安心して」


 ナタリアと一緒なら安心だが……ボルデに帰ったらシエルの様子も確認しなければいけないな。

 

「何をすればいいの?」

「正午に俺を迎えに来る馬車が街道に停まるはずなんだが……その御者に、俺は自分で帰るから帰っても良いと伝えて貰えないか? 駄賃はもちろん渡す」

「それ位お安い御用だけど、どうして……?」

「アイリスが姉と別れを告げるまで見守ってあげたい」

「……そう言う事なら任せて」

「それじゃあ私達は戻ろっか」


 移動する準備を始めたヴァネッサとセレーナの元に寄り、ヴァネッサの手を掴む。


「ヴァネッサ」

「? どうしたの?」

「相談もせずに勝手にアイリスを保護すると決めたのに受け入れてくれただけでなく……仲良くしようと歩み寄ってくれただろう? 改めて感謝したいのと、今は色々あって不安定なアイリスの事を優先していてヴァネッサに甘える形になっているが……ヴァネッサが大切なのは変わらないとだけ伝えたかった」


 自分でも伝わるのかどうか不安な程支離滅裂な吐露になってしまった。呆気にとられたような表情になったヴァネッサを見て、焦りが募り早口でまくし立てる。


「上手く言葉に出来なくてすまない。一方的に負担を掛けて、ヴァネッサの事をないがしろにしていると思われるのが嫌――」

「もう、そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ……でもありがとう。私の事はいいからアイリスに寄り添ってあげて」

「ありがとう」

「へー、ヴァネッサちゃんだけ特別扱い?」

「す、すまない、もちろんセレーナも――」

「冗談だよ! 出発する前に他に頼みたい事は無い?」

「え、あ、あー……」


 他に頼みたい事か……ここまで二人に甘えてしまったのなら今更遠慮しても仕方が無いな。


「一つある。セレーナは割符を持っているか?」

「依頼を請けた時無いと困るから持ってるよ?」


 商会で余分に紙を買っていて良かった。手紙に使わず保管していた余りの用紙を一枚取り出し、簡易的な報告書を急いで書く。


「俺の割符を渡しておくから、代わりに冒険者ギルドに居る受付のダニエラさんかイーロイさんに調査依頼の完了報告が少し遅れる事と……ヒエロ山に住み着いたワイバーンを討伐した事、そして行方不明になっていた冒険者達に関係しているかもしれない情報得たと伝えてくれないか? 走り書きだがこの報告書も渡してくれると助かる」

「そう言えば依頼中だったね、分かったよ。じゃあ私の割符も渡しておくね」


 互いに割符を交換し合い、無くさないようにすぐに収納鞄に仕舞う。


「助かる」

「一応ワイバーンの討伐証明になる物も持って行った方が良いんじゃないかな?」


 ヴァネッサの言う通りなので、彼女に預けていた収納鞄に切り落としたワイバーンの頭部だけ移してようやく出発の準備が整った。


「エリック殿下には私達からアイリスについて伝えてもいい?」

「いや……殿下に同行している身分で勝手にアイリスを保護する事を決めたのは俺だ。その報告を二人に押し付ける訳には――」

「でも急にヴィラロボス辺境伯邸にアイリスを連れて行ったら騒ぎになるよ?」

「何でもかんでも自分で解決しようとするのは良くないよ、私とヴァネッサちゃんに任せて」

「……二人の言う通りだな。頼らせてくれ」

「了解」

「それじゃあまたね、デミトリ」

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