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第454話 予定変更

「手間を取らせてしまってすまない」

「待ってる間暇だったから」


 昨晩トリスティシアが椅子代わりにしていた倒木だけでは足りないと気付いたセレーナ達が、気を利かせてもう一本ワイバーンが倒した木を焚火の横まで運んでくれたらしい。


 燃えた薪が時折弾ける音意外何も聞こえない静かな森の中、四人で焚火を囲むように着席する。


「それで、その子は――」

「あいりす」


 名前を呼ばれなかったのが不服だったのか、アイリスがヴァネッサの発言を遮る。


「……アイリスは、尻尾と犬耳? が生えてるけど……本当にコボルドなの?」

「一から説明させてくれ」


――――――――


「進化出来るようになる加護……」

「ヒエロ山で別れた後、幽炎だけじゃなくて幽氷の悪鬼まで現れてそれをデミトリが勇者と討伐したって聞いた時も驚いたけど、行く先々で変な事に巻き込まれるね」

「……元々運は良い方じゃないと自覚していたが、それだけじゃ説明が付かない頻度で妙な出来事に巻き込まれているな」


 俺が把握している限りだと、直接原因になりそうな神呪は授かっていないはずだが……それだけ命神の神呪が強力だと言う事なのか? それとも本当にただ単に不運なだけなのだろうか……。


「うん、わるい?」


 ヴァネッサ達に状況を説明している間、お腹を空かせていたし手持無沙汰で待たせるよりはましだろうと思い渡していた燻製肉を全て平らげたアイリスが問いかけて来た。


「……ちょっとだけ人より悪いかもしれないが、心配しなくても大丈夫だ」

「その子は――」

「あいりす!」


 再び発言を遮られてたヴァネッサが、深呼吸した後改めて話を続ける。


「……アイリスはどうするつもりなの?」

「あの探求神の思惑通りに動くのは業腹だがこのままにはしておけない。俺が勝手に進化の方向性を決めてしまった以上……責任を取って保護したい」

「……」

「事前に相談せずに決めてしまったのは本当に申し訳――」

「大丈夫だよ」


 言い訳を連ねようとした俺を止めるようにヴァネッサが手を上げたので口を噤む。


「デミトリがそう決めたなら私も協力するから」

「……本当に良いのか?」

「逆に見捨てたらデミトリらしくないよ……改めてよろしくね、アイリス」


 アイリスにそう言ったヴァネッサに対して、ぷいと顔を逸らしたアイリスを見つめたまま固まってしまったヴァネッサをセレーナが宥める。


「ヴァネッサちゃん、自分から歩み寄ろうとするのは偉いよ……!」

「……平気だよセレーナ。デミトリが保護するって決めたなら……私も仲良くなれるように頑張るから。大人の余裕……」


 深呼吸をしながら小声で『大人の余裕』と繰り返しているヴァネッサが心配だが、一旦彼女の事はセレーナに任せてアイリスに声を掛ける。


「アイリス」

「うん?」


 無邪気に俺に返事したアイリスを見て言葉が詰まる。声を掛けたはいいものの……なんと言えば良いのか分からない。


 他人の好意を無下にするべきじゃないだとか、ヴァネッサと仲良くして欲しいと一方的に求めるのは簡単だが……アイリスは姉を失い急に進化したばかりだ。恐らく精神的にまだ安定していない。


 そんな状態で頭ごなしに行動を改めて欲しいと伝えるのは逆効果だろう。思えば、アイリスの心の準備が出来ていないのにヴァネッサ達を仲間だと受け入れて欲しいと求めていたこと自体が間違いかも知れない……。


「……アイリスはこれからどうしたい?」

「これから……?」


 首を傾げ、少し考えた後アイリスが眉を八の字に曲げながら天幕の方を見た。


「……おねえちゃん……」


 俺も自覚は無かったが相当気が動転していたらしい……アイリスにとって今一番大事なのは、俺の仲間と仲良くなる事ではなく亡くしてしまった姉の死を整理する事だ。


「当たり前の事なのに気づけなくてすまなかった」

「……」


 立ち上がったアイリスが、返事をしないまま天幕の奥へと姿を消して行く。


「……セレーナ。コボルドが仲間を失った時、どんな送別を行うか知っていたりは――」

「流石にそこまでは分からないよ……駆け出し冒険者の時ある程度アムール王国に生息する魔物と魔獣に着いてギルドの資料室で調べたけど、そういう情報はギルドにもなかったと思う」

「そうか……」


 進化する前、アイリスは姉の傍を離れようとしなかった。アイリスの心の準備が整うまで傍に居させてあげた方が良いだろう……そうなると当初の予定通り今日ボルデに帰還するのは叶わないな。


「ヴァネッサ、セレーナ、二人は俺に会いにこの森に来たのか?」

「そうだよ」

「ナタリアさんがエリック殿下に『これ以上軟禁するのは止めて欲しい』って抗議しに行った隙に二人で抜けたしたんだ」


 ヴァネッサ達の方も色々とごたついているみたいだな……。


「そうか……二人には色々と謝罪しなければいけない事があるのに、こんな事をお願いするのは本当に申し訳ないんだが……俺の頼みを聞いてくれないか?」

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