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第453話 アイリス

「話せるのか……?」

「……たぶん?」


 煮え切らない答えだがちゃんと質問に対する答えになっている……進化の影響で言語を習得したとでも言うのか……? 


 探求神の加護がどれだけの力を持っているのかが気掛かりだ。そもそも別の存在に成れてしまう進化自体が規格外なのに、言語を含め新たな能力を次々と会得出来るとなると――。


「にげよ?」


 背中越しに聞こえて来たコボルドの声が思考を途切れさせる。


「逃げる……? 何から――あー、もしかして外の二人が怖いのか?」

「……こわくない」


 言葉と裏腹に俺にしがみ付く力が増しているが……不可抗力とは言え、完全に出会い方を間違えてしまったな。


「大丈夫だ。あの二人は仲間だ」

「……なかまは、おねえちゃんと、おさだけ」

「おさ?」


 姉は恐らくこの子を守ろうとして息絶えたコボルドの事だと思うが……。


「おさは、おさ」

「……俺の事か?」

「うん」


 コボルドは集団で生活するとセレーナが先程言っていたな……どういう経緯でそうなってしまったのかは分からないが、この子の中では俺が群れの長という事になっているらしい。


 疑問が尽きないが今は長考している場合じゃないな。


「今更だが自己紹介がまだだったな。俺の名前はデミトリだ」

「でみ、とり?」

「ああ。お前も名前を教えてくれないか?」

「なまえ……? ない」


 覚悟はしていたがコボルド達には名を付ける文化は無いのか……。


「おさ……でみとりが、つけて?」


 嘘だろう……。


 名は一生背負う物だ。


 シエルを名付けた時、シエルとヴァネッサから適当な名前を付けようとしていた事に猛反発された後かなり反省した。


 名前は適当に付けて良い物じゃないと分かっていても、そう都合よく相応しい名前が思いつきそうにない。


「なまえ、ほしい」


 ぎゅっと後ろから抱きしめられ焦りが増す。言葉が通じて落ち着きを取り戻し始めたばかりなのに、名づけを後回しにしてしまったら悪手なのは人付き合いに乏しい俺でも分かる。


 考えろ……まだ出会ったばかりだが、この子の事を全く知らない訳じゃない。


 逃げても良いと伝えたのに姉の傍を離れなかった仲間意識の強さ。


 進化した姿が人型になったのも……仲間と認識した俺と過ごしやすい姿をこの子が望んでいるのを見越して、俺が進化に求める物にこの子にとっての幸せを願ったため定めとやらが決めた可能性が高い。


 どういう経緯で群れを離れたのかは分からないが……群れを失い、姉を失った今も自暴自棄に陥らない心の強さ……希望を捨てず、より良い明日を信じる心……。


「……」

「……でみとり?」

「ぐっ……アイリス、はどうだ?」 

「あい、りす?」

「俺の……故郷で、『希望』と『信じる心』を表す花の名前だ」

「わたし、はなじゃないよ?」

「!?」


 前世の記憶を頼りに、恥を忍んで花言葉に縋って名付けたのが良くなかったのか!? 


「へへ、でもすき。あいりす……」

「! よかった……」


 良く分からない汗をかきながら胸を撫で下ろす。


 久々に記憶を無理やり掘り起こしたが……何故前世の俺はこんなに花言葉に詳しかったんだ……? 今の自分の性格的にそこまで興味を示さない気がするが……。


「……へへへ」


 ……アイリスが喜んでいるなら別に過去の事はどうでも良いか……むしろ、名前をちゃんと付ける事が出来た事を過去の自分に感謝しなければいけないな。


「アイリス、昨日から色々とあっただろう? その……自分の体の変化には気付いているか?」

「へんか?」


 やはり自覚していなかったのか……身体強化を発動しながら、俺にしがみついているアイリスごと半身を起こす。そのまま纏わりついたアイリスの腕と足を解いて、深呼吸をしてから振り向く。


「……」


 目に毒だな……。


 未だに服を着てないので当たり前だが相変わらず全裸のアイリスの恥部を見ないように意識して、改めて彼女の手を取り持ち上げながらアイリスの視線と合わせる。


「!? ……つるつる?」

「やはり気付いてなかったのか……落ち着いて聞いてくれ。大丈夫だ、何も心配する必要は無い」

「……おそろい?」

「そう、だな……? お揃いだから大丈夫だ」


 シャツの袖を捲って、アイリスが目を丸くしながら見つめている彼女の腕と俺の腕が同じなのを見せる。


「おそろい!」


 嬉しそうに目を輝かせているアイリスを見てほっとする。すんなりと受け入れ過ぎて肩透かしを食らった気分だが、取り乱さなかっただけで僥倖だ。


「くしゅん!」

「寒いだろう? つるつるだけじゃなくて、服もお揃いになろう。暖かいぞ」

「ふく?」


 捲った袖を指さしながら説明するとアイリスがこくこくと頷いた。


――――――――


「待たせてすまない」

「な……!? デミトリ、私の着替えを貸しても良かったんだよ?」

「尻尾を通すためにズボンに穴を空ける必要があった。許可なくヴァネッサの服を改造するのは気が引けて――」

「おそろいじゃない」

「……!!」


 アイリスに指差されたヴァネッサから強烈な魔力の揺らぎが発せられる。


「ヴァネッサ!?」

「ヴァネッサちゃん、大人の余裕!!」

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― 新着の感想 ―
ケモ耳に裸ワイシャツしかも、パ………つるつる!役満じゃないか
おそろいだけじゃなく彼シャツ要素もあるんや
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