表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
489/530

第449話 進化の方向性

 呪文を唱え終えたのと同時に現れた光が宙に長方形の枠を縁取り、その中心に集まった光が文字を形作る。


「これは……」


 現れた枠と文字の後ろで燃える炎が放つ光のせいで、空中に浮かんだ文字の視認性がとにかく悪い。


「読み辛いわね」


 気を利かせてくれたトリスティシアが枠の後ろに魔法の闇を生み出してくれたおかげで、宙に浮かび上がった文字が読めるようになる。


「『進化に求めるものを答えよ』、か……想像していた物と大分違うな……」


 前世の知識に引きずられて、てっきりゲームでよく見るステータス画面のような物が謎の透明の板に浮かび上がり、そこにコボルドの情報と進化先の選択肢が表示される物だと勝手に思っていた。


 ステータスと唱えたら現れて宙に浮かび、長方形で文字が浮かび上がる所までは合っていると言えば合っているが……まるで創作物の中に現れるステータス画面を知らない誰かが、想像だけで再現しようとしたような漠然とした不完全さが不安を煽る。


「進化に求めるものね……どうするの?」

「分からない……」


 仮に俺がこのコボルドの立場だったら、今日出会ったばかりの他人が勝手に自分の進化の方向性を決めるなんて恐怖でしかない。


 せめて本人と相談できれば……いや、願うだけ無駄か。起きた所で言葉が通じるわけでもない……。


「異世界人に分かりやすいように探究神が加護を調整したと言っていただろう? この……画面と呼べば良いのか分からないが、ステータス表示を設計したのは探究神なのか?」

「ええ。多分異界の神から聞いた話を元に作ったんじゃないかしら」


 なるほど……表示されている画面があの探究神に設計された物なのは不安だが、トリスティシアの言っていた通りなら進化先などの重要な要素は、推測になってしまうが神々が全幅の信頼を置く何かに定められている可能性が高い。


 その存在が全知全能である事が前提になってしまうが……この曖昧な問いからこのコボルドにとって最善の進化を導き出す方法はーー。


「ティシアちゃん……答え辛かったら答えてくれなくてもいいから一つ質問させてくれないか?」

「良いわよ」


 下手をすれば悪神であるトリスティシアの存在自体を否定しかねない質問だ……聞き方に注意しなければいけない。


「……この世界では幸せや不幸のような物に、普遍的な真理は存在するのか?」

「改まってどうしたのかと思ったらそう言う事ね……そこまで私に気を遣わなくても良いのよ? 幸せや不幸だけじゃなくて、善や悪にも普遍的な真理は存在しないわ」


 どう受け取られてしまうのかかなり心配だったが、あっけらかんとした様子のトリスティシアに呆気に取られる。


「ふふ、答えは出た?」

「ああ……ありがとう」


 言い間違えないように頭の中で改めて整理してから、ステータス画面に注目する。


「俺はこのコボルドの進化が、このコボルドにとっての幸せに繋がる事を求める」


 宙に浮かんだ文字が一瞬揺れた後霧散し、新たな文字が浮かび上がる。


「『進化先が決定しました』か……先程の尊大な文から急に畏まったな」

「あの問いかけの文章は多分リスコの趣味ね……とにかく、無事に進化先が決まったみたいで良かったわ」

「……本当にあれで良かったのだろうか」


 正直あの答え方には賭けの要素が多かった。


 経験値の量や進化の果て、この世の仕組みとも真理とも呼べる情報を定めている何かに対して、かなり大雑把な答え方をしてしまった……。


 絶対的な幸せの定義が存在しないのであれば、せめてコボルドの願う幸せが叶う進化をして欲しいと願ってあの答え方をしたものの、そもそも俺の想定が外れていたらーー。


「安心しても良いわよ」


 過干渉を恐れたのか何か言いたげな表情をしながらそれ以上は何も言わなかったが、トリスティシアがそう言うのであれば大丈夫だろう。


「トリスティシアが居てくれて色々と助かった……改めてありがとう」

「私の愛し子なんだから、困ってたら手を差し伸べるのは当然でしょ?」

「そうか……」


 出会った当初は、正直に言うと悪神の愛し子になってしまってどうなる事かと思っていた。逆に俺が色々と巻き込まれるせいで、困らせていないか心配する事になるとは思わなかったな……。


「私はリスコを締め……お仕置きしに行かないといけないからそろそろ帰るけど、大丈夫そう?」

「多分大丈夫だ。コボルドに変化が現れていないのが気掛かりだが……」

「時間が経てば変化が訪れるはずだから心配しないで。それじゃあまたね、デミトリ」


 闇に消えて行ったトリスティシアを見送り、姿が完全に消えたのを確認してからコボルドの方を見る。


「……巻き込んでしまってすまない……」


 眠っているコボルドに謝罪が届かないのを分かりながらも、自分の為に謝罪を呟き野営の準備を始める。


 色々とあったので少しはゆっくりとしたいがそう言うわけにも行かない。探究神の加護は一旦良しとして、コボルドを保護するのであれば明日以降どう行動するのかについて考えなければ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ