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第447話 失言から紐解かれる事実

「ティシアちゃん」

「何かしら?」

「コボルドについて詳しかったりは……」

「テイムの方法が知りたいなら、残念ながら私の専門外ね……」

「そうか……」


 雛の時に出会ったシエルとは状況があまりにも違いすぎる。テイム出来なければボルデには連れて行けないし、仮にテイムする方法が分かったとしても……。


「『見捨てられない』と言うこちらの感情の都合で、望んでもいないのに無理矢理連れて行くようなことはしたくない。どうすれば……」

「私が干渉し過ぎるのも良くないけど……リスコのせいで理不尽な選択を迫られてるから特別よ?」


 トリスティシアがおもむろにコボルドの頭を撫でていた手を止めて、またあの謎の圧力を感じる。


「何をーー」

「ちょっとだけこの子の心の中を覗かせてもらったわ。魔獣だから思考が纏まってなくて簡単な感情しか読み取れなかったけど、少なくとも助けに来てくれたデミトリに悪感情は抱いてないみたいよ?」

「それは何よりだが……」


 肝心の森から連れ出される事に対してどう思っているのかは分からず終いか……。


「デミトリ、悩むのは分かるけどそろそろ野営の準備をしないといけないわよね? あの落とし穴の遺体の処理も必要でしょう?」

「そう、だな……日が完全に落ち切る前に済ませた方がよさそうだ」

「この子は私が見守っててあげるから、一つずつ出来ることから処理しましょう?」

「……分かった」


ーーーーーーーー


 落とし穴の処理にはそれ程時間が掛からなかった。


 冒険者達の遺体と装備を回収し、そのまま放置しておくのは危険なので穴を氷で埋め立てて適当に周囲の雪を掛けておいた。


 冬が明けた後も氷が持つのかは分からないが、応急処置としては十分なはずだ。


 作業が終わってから、そのままトリスティシア達の元に戻っていれば日が暮れる前に合流できていただろう。無駄に時間が掛かってしまったのは、その他に仕掛けられた罠の確認と解除だった。


 こんな大掛かりな罠を仕掛けたあのゴブリンが、何も保険を準備していないと思えず念の為落とし穴の周囲を確認すると、どこから手に入れたのか分からないが枯葉に隠されたトラバサミや、どうやって設置したのか分からないが常緑樹の枝に隠された糸仕掛けの落石罠等、大小様々な罠が至る所に仕掛けてあった。


 恐らく襲った冒険者達の道具を再利用していたのだろうが、一体何人被害に遭っていたんだ……。


 新たに発見した罠の解除が終わり、ワイバーンと戦った場所まで戻った頃にはすっかり暗くなっていた。ワイバーンがあばれたせいで木々が倒された広場に戻ると、倒木とワイバーンの死体越しにトリスティシアが起こした炎の揺らめく灯りが見えた。


 ワイバーンの死体も収納鞄に仕舞いトリスティシアの元に寄ると、相変わらず冷たい地面の上でしゃがみながらコボルドの頭を撫でている。


「……まだ寝ているのか」

「相当疲れてたみたいね」


 ……俺が検証に付き合わせていなかったら、ワイバーンと戦わずに逃げる体力が残ってーー止めよう。過ぎた事について悔やんでもどうしようも無い。


「見守ってくれて助かった、ありがとう」

「どういたしまして。随分と時間が掛かってたみたいだけど……?」

「想像以上に罠が仕掛けられていた。あのゴブリンは熱心に人を狩ろうとしていたらしい」


 幸いな事に落とし穴以外の罠には使用された形跡はなかったが……あのまま人を殺す事に一切躊躇のないあのゴブリンが進化していたらと思うと、早めに対処できて良かったのかも知れない。


「デミトリが作業をしてる間に色々と確認したけど、リスコの加護で進化するためでしょうね」

「確か、進化ポイントや経験値と言う単語を口走っていたが……」

「前世の知識を持ってるデミトリならどんな加護なのかピンとくると思うけど、異世界人が分かりやすいように加護の内容を調整してるみたいね。文字通り敵を倒して得た経験値が蓄積されて、一定量に達すると進化に必要な力に変わるみたいよ」


 ……なまじ前世の知識があるせいで分かるようで分からないな。


「色々と疑問があるんだが」

「私に答えられる事ならなんでも答えるわ」

「あのゴブリンは直接倒さずとも仲間が倒した場合でも経験値を得られるような事を言っていた」

「そういう内容の加護になってるわね」

「そもそもの話になってしまうが、自分で倒して経験値を得る場合も、仲間が倒して……恐らく分割された経験値を得た場合も、元の経験値は一定の量なのか……??」

「そうよ」


 前世のゲームならともかく、現実でそんな事が起きている事に酷い違和感がある。


「……得られる経験値の量は誰が決めているんだ?」

「誰かが決めてるわけではなくて、そう定められてると言った方が正確ね。別に加護を授けたリスコが決めてるわけじゃないわよ?」 


 だろうな……自分で経験値の量や進化に必要な『ポイント』まで決めていたら、進化の過程だけでなく終着点も分かっているはずだ。


 実際に加護を授けた相手がどんな選択をするのか観察したいだけならまだしも、あそこまで実験を実施することに固執しないだろう。


「……経験値の量だけでなく、加護を授けた結果行き着く進化の先も「定め」られているのか?」

「……ええ」

「「並」の神が経験値の量や加護の内容みたいな情報を完全に把握せずに、疑いもなく加護を授けているという事はもしかして異界が関係しているのか? それとも……この世界だけでなく異界でも同じ様に「定め」られているなら、神々よりも上位の存在がーー」

「デミトリ、その質問には……まだ答えられないわ」


 立ち上がったトリスティシアに口を優しく手で塞がれる。


「本当に、リスコは余計な事を言ってくれたわね……物凄く難しい事をお願いしてるのは分かってるけど、一旦『そう言う物』として飲み込んでくれると助かるわ」


 口を塞がれたままゆっくりと頷く。


 気にならないと言ったら嘘になってしまうが……。

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― 新着の感想 ―
あー、やっぱりティシア様マジ女神。
あけましておめでとうございます デミトリ「口の中が犬の毛まみれ」
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