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第446話 損な性格

「リスコは神界に逃げ帰る前にこの子に加護を授けたわ」

「……まさか、あの実験のためにあのゴブリンに授けていた加護と同じ物じゃ無いだろうな」

「そのまさかよ」


 努めて冷静に状況を説明してくれているが、トリスティシアの目が笑っていない。ここまで怒るのも珍しいが……それほどあの探究神が好き勝手行動しているという事だろう。


 そもそも奴が観察したい「実験」とやらは、対象が転生者じゃなければ成り立たないんじゃないか? 何故たまたまこの場に居合わせたコボルドにーー。


「待ってくれ、このコボルドはーー」

「なんとなく何を想像してるのか想像出来るけど大丈夫よ。他人の魂を憑依させられたりしてる訳じゃないわ」


 良かった……。


「細かい説明は省くけど、異界の魂を転生させたり生きたまま転移させるためには色々な条件があるの」

「それにしては異世界人に出会い過ぎている気がするが……」

「全員異なる神にこの世界に導かれてるでしょう? デミトリの目には、神々が好き勝手に異世界人をこの世界に招いてるように見えてるかも知れないけど、並の神だと一人呼ぶだけでもかなり難しいわ」


 良く分からないが、探究神は『並』の神と言う事か。思い返すと今まで出会った異世界人のほとんどは、全員違う神から加護を授かってこの世界に導かれていた。


 唯一の例外は……俺だけでなくユーゴを含めて四人同時に異世界から招いた命神だけだ。命神は『並』の神では無いと言う事なのか……??


「色々と疑問が浮かんでると思うけど、ディアガーナの事は追々説明するわ」

「……そんなに分かり易く顔に出ていたのか?」

「そんな事ないわよ。ただデミトリの立場なら気になって当たり前だから……話を戻すわね」


 泣き疲れたのかワイバーンが討伐されて緊張の糸が切れたのか分からないが、仲間に寄り添ったまま眠ってしまったコボルドの頭を撫でながらトリスティシアが溜息を吐く。


「……デミトリが私たちと別れた後、あのお馬鹿さんが熱弁してた話を全部蒸し返しても意味がないから要点だけ教えるわね」

「頼む」

「リスコは異界の神から聞いた実験をどうしても続けたいけど、新しい転生者を用意するのには時間が掛かるから、妥協して取り敢えず魔物の進化の可能性さえ見れればそれで良いって言い出したの」


 それは最早完全に別物じゃないか……? 行き当たりばったりすぎる探究神の考えに理解が追いつかず頭痛がする。


「何がしたいのか全く理解出来ないな」

「私も同じ気持ちよ……一回頭を冷やすために帰りなさいって言ったのに、あそこまで食い下がられたのは驚いたわ。異界の神々から良くない影響を受けてそうね」

「その、異界と言うのは……??」

「デミトリが前世を過ごした世界とこの世界が別の次元に存在してるように、無数の世界が存在するの」

「……その世界の数だけ神が居るのか?」

「厳密に言うと違うけど、そう認識してもらった方が分かり易いかもしれないわ」


 少し待ってみたが、トリスティシアはそれ以上何も言わなかった。俺の前でこの情報を口走った探究神に対して怒っていたし、教えるのが禁忌に値する情報なのかもしれない。


「分かった」

「……説明するって言ったのに中途半端になっちゃって申し訳ないわ……」


 元はと言えば探究神があんな事を口走らなかったら説明する必要も無かったのに、心底申し訳なさそうにそう言われてしまうと困ってしまう。


「理由が有るんだろう? ティシアちゃんがそうした方が良いと判断したのなら俺はその判断を信じる」

「デミトリ……ありがとう」


 少し肩の力が抜けた様子のトリスティシアを見てほっとする。


 あの探究神が好き勝手した尻拭いをしながら、ここまで心を砕いてくれているトリスティシアが悪神……今更だが意味がわからないな……。


「リスコにはこの件と、デミトリを巻き込もうとしてる罰をちゃんと受けてもらうから安心して」

「罰はともかく、俺を巻き込もうとしていると言うのは……?」

「この子達を守るために単身ワイバーンに挑んだでしょ? デミトリが守ってくれるなら、実験途中で不意に死んじゃう心配がないって悪知恵を働かせたみたいよ」

「俺は別に……」


 そこまで面倒を見るつもりはないと否定しようとしたが……俺と関わったせいで妙な神に目を付けられ、仲間を失ったばかりのコボルドを見捨てられるのかと問われたら否と答えるしかない。


「クソ……! やり口が陰湿過ぎないか??」

「昔からそういう悪知恵だけは働く子だったから、私ももう少し警戒すれば良かったわ……」

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